11 「ソシャゲがやめられない」
シュルツ「え、妹さんなの?」
ふみや「妹っていうか、俺の姉ちゃんの娘さんなんで、ワカメちゃんとタラちゃんの関係みたいなもんですね」
シュルツ「はあ……、あのヒナさんにも、幼少期があったのか……。え、やばいやつだった?」
ふみや「いやあ、どうだったかな。別にそういうわけでもなかったような」
シュルツ「マジか。あれがまともだった時期があんのか。子どもの頃は普通のお子さまだったのか」
ふみや「そうですね、せいぜい小学一年生のときに、駅前で女神みたいに崇められていたり。あとメゾン・ド・ヒナの管理人になったり。なんか怪しい爺さんと稽古していたと思ったら、ひと夏でダンプカーを素手で破壊できるぐらい強くなっていたり。懐かしいなあ」
シュルツ「おいヒナさんこの兄ちゃんもあんまり普通じゃないぞおい」
ふみや「まあ慣れです。ヒナに細かいことを突っ込んでもきりがないので」
シュルツ「悟りの境地なの!? くっ、そうか、悟りの境地か……。ボクはまだそこまで到達できない……」
ふみや「まあ、あっちはあっちで仲良くやっているみたいですし」
ミミニ「平素お世話になっております。フミヤさんとお付き合いさせていただいております、ミミニと申します」
ヒナさん「あっ、こ、これはご丁寧にどうもありがとうございます。ミミニさん、ミミニさんって言うんですね……、み、耳かわいいですね!」
ミミニ「はあ、ありがとうございます。感情とともにぴこぴこ動くんですよ? ぴょん、ぴょん」
ヒナさん「あっ、かわいい! かわ、かわいい! はぁ、はぁ……、み、ミミニちゃん……! ミミニちゃんかわいいですね! もらっていってもいいですか!? うちで一緒に住みません!?」
ミミニ「い、いえ、すみません。本日はご挨拶に来ただけですので……。また今度改めて……」
ヒナさん「それじゃあきょう、またお会いする日にちを決めましょう! いつなら空いてます? 来週の土曜日はどうです? 日曜日は? あ、午前や午後だけでも大丈夫ですよ?」
シュルツ「キミの恋人、妹さんに口説かれているんだけど」
ふみや「なんとなくそうなるような気がしてました。まあヒナが首突っ込んでくるのはいつものことなので、俺の中では別に浮気扱いにはならないんで、大丈夫です。天災みたいなもんです」
シュルツ「ヒナさんちやっぱりおかしいぞ!?」
美卯「えー、それでは次のグループは紅組の『ネトゲ廃人の極み女子』です。VTRをどうぞー」
シュルツ「ずっといたんだ!?」
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Q:あなたは誰のためにこの曲を作りましたか?
ルルシィ『誰のためっていうか……、ギャラもらえるって言うし……。そうしたらもっともっと課金できるしね……ふふふ……』
Q:曲作りは難しかったですか?
ルルシィ『大丈夫、最近ソシャゲーでもリズムゲー増えてきたから! できるできるやればできる! わたしにまかせろー!』
Q:その廃人っぷり、感動しました。ありがとうございました。
ルルシィ『わかった! スタミナが溢れそうだからまた今度ね!』
** **
マイクの前に並んで立つ女性がふたり。
彼女たちはそれぞれ、ギターとベースを首から下げていた。
どちらも緊張した面持ちだ。彼女らは腿を叩いてリズムを取る。
すぅーと息を吸う音がやけにホールに響く。
シュルツ「それでは歌っていただきましょう。『ネトゲ廃人の極み女子』で、『ソシャゲがやめられない』。どうぞー」
『ソシャゲがやめられない』:ネトゲ廃人の極み女子
作詞:ルルシィール
作曲:ルビア
朝起きて スマフォを覗く
最初の最初は スタミナ消費
ログインボーナス だとか
イベント しょっちゅうあって
なんかもう全然 やめられない
待ち時間につい 開いちゃう
はー 巧妙だなー もー!
仕組みがなー! すごいよー!
別に楽しいから いいんだけど
問題は はいここから
そうあれです
ガチャですよ
SR確率アップ 期間限定
イベント特効 今だけです
くっはー! そんなのずるくない!?
回しちゃわない!? だめじゃない!?
はー 人間心理 恐ろしい
MMOは時間だけだったけど
ソシャゲは時間と お金だね
それでもまだまだ やるけどね!
これからもずっと やるだろうね!
人生って 楽しい!
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シュルツ「『ネトゲ廃人の極み女子』さん、ありがとうございました。内容はソシャゲじゃねえか!」
シュルツ「しかしこの歌、今までの歌の中でも随一のダメさを誇る気がする……」
シュルツ「あとでお話をお聞きするとして」
シュルツ「それではTRN歌謡祭も、これでようやく8組が登場ですね。残り10組です。引き続きお楽しみくださいませ!」
ルルシィより一言:やり切ったわ。これで10連ガチャがまた回せるわ。
ルビアより一言:ああ、先輩のダメさが世界中に発信されてしまいましたぁ……。