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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode04 短編増殖

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オチはトマトジュース

~ルシル、殺人料理大会勝ち抜き中~

 最終対決。

 残ったのは選手はたったの3人。

 13人の選手が脱落し、31体のサンライオンが病院送り(いや、後で普通に処理ころされるそうだけど)になり、52体のサンライオンがこの世を去った。

 多くの(サンライオンの)犠牲のもと、いよいよ今宵(まだ夕方にもなっていないけど)、料理の殺戮王が決まる。


 ちなみに、残った選手は以下の通り。


 状態異常の専門家スペシャリストサニー。

 可愛い名前だが、39歳のおっさん。

 彼の作った料理を食べたサンライオンは、時には石化、時には猫化、時には人化した後、この世を去った。

 サンライオンが人化した後死んだ時は、さすがに布で覆い隠された。グロテスクなことこの上ない。


 匂いの魔術師ココ・リコ。

 サニーと打って変わって、12歳の少女。参加資格が12歳以上ということなので、当然初出場。

 とてもかわいらしい女の子なんだが、彼女が料理を作るとき、風下から人がいなくなるという。

 突然上昇気流が舞った時、空に飛んでいた渡り鳥の群れが落下してきたときに得点が大きく加算された。


 そして、最後。

 魔物量産料理人ルシル。

 料理を魔物に変えるという異能でここまで勝ち上がった。ルシルの作った料理は、全てサンライオンを完食。

 そのサンライオンを完食した料理を仮面の少女が完食しているというのだから驚きだ。


 ちなみに、ここまでの得点は、


【サニー:213点 ココ・リコ:193点 ルシル:10081点】


 どこのクイズ大会の最終問題で正解したんだよ、という得点差になっていた。

 ていうか、誰がどう見ても優勝はルシルに間違いない。

 ていうか、限界突破だからって、点数まで限界突破して採点するとかひどすぎる。


 料理が行われている横で、サンライオンは檻の中で怯えきってた。

 そりゃそうだろ、大会の最中、仲間の断末魔の雄叫びをずっと聞かされてきたんだから。


「いやぁ、今年の殺人料理大会は盛り上がりましたな」

「ええ、彼女ルシルさんにはぜひ4年後も出場してほしいものです」

「とはいえ、食事の達人(イーティングマスター)Sが四年後も来て下さったら、の話ですが」


 ガヤ3兄弟が笑いながら今年の感想を述べていた。

 ふん、好き勝手言ってろ。


『さて、デザートとドリンク作りも終盤。ルシル選手、いままではシンプルな料理ばかりでしたが、ここに来てケーキ作り! 生クリームを作っています! なんとも鮮やかな手つきです!』


 生クリームを泡立てる手つきはまさに菓子職人パティシエールだ。

 ルシルはできあがった料理を魔物化させる異能は持つが、料理の技術だけは一級品だからな。

 なにせ、カカオと塩と胡椒から、ハンバーグの香りをするスライムゴーレムを作る腕前だ。


 ……やっぱりそんな一級品は嫌だ。


 とはいえ、本当に見事な手際で、スポンジも綺麗に焼きあがった。

 今の状態なら食べてもいいんじゃないかと思ってくる。


 ココ・リコはミルク寒天、サニーはフルーツジュースと果物の乗ったプリンを作っているが、多くの人はルシルの料理の変化を見守っていた。


『おおっと、ルシル選手、生クリームを混ぜながら、何かを投入! リキュールでしょうか!? 私、お酒の入ったケーキには目がないんです!』


 実況はそう言い、『まぁ、今からできるケーキを食べたいとは思いませんが』と付け加えた。すると、会場から嘲り笑う声が聞こえてくる。

 好きに笑ってろ、あれが今回の隠し玉だ。


 ……ん? 仮面の少女が動いた。

 紙とペンを持ち、何かを書いている。

 そして、拡声石を置き、大会本部に行ってその紙を渡した。


 もしかして、解毒ポーションを使ったことへの抗議か?

 大会では食材の持ち込みも自由だったはずだ、文句を言われるようなことじゃないが。


 彼女は自分の席に戻り、拡声石を手に取った。


 そうこうしているうちに、ルシルはスポンジにクリームを塗り終え、最後にイチゴをトッピングした……その時だった。

 一段しかなかったはずのケーキが三段になり巨大化、スポンジの手足が生えてケーキ魔人になった。

 もはや観客は誰も驚かず、実況も、


『待ってましたぁぁっ! ルシル選手の十八番、魔物化! 今回はケーキ魔人だ! さぁ、ケーキ魔人、どのようにサンライオンを食べるの……おや?』


 ケーキ魔人はサンライオンに見向きもせずに、仮面の少女に向かって歩いていく。


「……食べてもらうわよ、食事の達人(イーティングマスター)S! 私の渾身の力作!」


 ルシルはそう言って、仮面の少女を挑発した。

 少女も立ち上がり、


『受けて立ちましょう……とはいえ、このままでは食べにくいので』


 フォークを天高く構え、


風の刃(ウインドカッター)!』


 空から三本の風の刃がケーキ魔人を捉えた。

 見事に八等分に切り分けられた。

 いや、八等分にしても一個がかなり大きいんだけど。


 と思ったら――


 なんと、ケーキがくっつき、元通りになった。


『自己再生能力ですか、やっかいな!』

『おおっと、これは凄い! ルシル選手のケーキ魔人、今回は一筋縄ではいかないようです!』


 自己再生能力……そういえば、ルシルの作った薬草ドラゴンも似たような能力を持っていたな。


食事の達人(イーティングマスター)S! ここは決め技の神の息吹(ゴッドブレス)でとどめを!』

『ダメです、あの魔法を使えば、ケーキがぐちゃぐちゃになってしまいます』


 確かに、空気の塊とはいえ、鉄球をケーキの上に落とされるようなものだ。

 ならばどうすればいいのか?


 そんなのは決まっている。


『ならば、動いたまま食べるしかありませんね』


 仮面の少女はそう言うと、ナイフとフォークを手に取り、ケーキと交差した。

 ケーキの上の段が……見事に消えている。

 あの一瞬で、一番小さいとはいえ上段を全て食べただと!?

 彼女――いままで実力を全て出し切っていなかったと言うのか!?


 そして、仮面の少女に食べてもらえたことに満足したケーキ魔人は、動かぬケーキへと姿を変えた。


『流石は食事の達人(イーティングマスター)S……お? おっと、どうした、食事の達人(イーティングマスター)Sの顔がみるみる』


 会場の全員がその光景を目にした。

 仮面の少女……仮面の下のその白い肌がみるみる青くなっていった。

 そして――


『私の負けです……ルシルさ……ん……』


『『『『イーティングマスタァァァァァァッ!』』』』


 会場中が彼女の称号を叫んだという。

 そして、暫くして、


『ええ、皆様、食事の達人(イーティングマスター)Sは無事です。警備員の一人が持っていた解毒剤を飲んで意識を取り戻しました』


 警備員の一人の薬、タラが持っていたアルティメットポーションのことだろう。

 それにしても、なんでだ。解毒ポーションを仕込んでいたはずなのに、なんで毒が彼女に回ったのか。


『実はこうなることを予想していた食事の達人(イーティングマスター)Sから手紙を預かっております』


 そして、実況はその手紙を読み上げた。


『【前略、この手紙が読まれているということは、私は無事ではないでしょう。どうしてこうなったかと言うと、彼女は料理の中に解毒ポーションを仕込んでいました】』


 やっぱり、見破られていたのか。


『【解毒ポーションのおかげで、調理途中の彼女の料理の毒の多くは消えたでしょう。ですが、その代わり、解毒ポーションでも解毒できない僅かな毒が生き残ってしまいました】』


 ……え? それってもしかして……そういうことなのか?


『【他の毒がいないため、天敵のいない魔物のように繁殖し、数を増やし、いつしか私の毒舌スキルを以ってしても解毒できない状態になったのでしょう】』


 ……薬が……まさか毒になった?

 風邪の時に抗生物質を飲んだため、常在菌まで殺してしまい身体を弱くしてしまった、みたいなものだというのか。


 失敗した。全てが裏目に出てしまった。

 アイテムマスター失格だ。


『【食事の達人(イーティングマスター)Sの名において宣言します。この手紙が読まれたとき、ここに、ルシル選手を優勝とします!】』


 会場に溢れんばかりの歓声が起こり、殺人料理大会は幕を閉じた。




   ※※※



 賞金とトロフィーを受け取り、俺とルシルは工房にいた。

 スーとシーと食事の約束の時間まで少しある。


「ルシル、悪かったな」

「……ううん、コーマは悪くないわよ」


 コメットちゃんとタラは姉弟水入らずで食事に出かけている。

 タラに薬代の臨時収入が支払われたため、その金での食事らしい。


 俺達も食事に行くか。

 そう思った時だった。


「失礼します」


 そう言って入ってきたのは、仮面の少女、食事の達人(イーティングマスター)Sだった。

 どうして彼女がここに?


「復讐? あれはあんたが勝手に食べただけよ。私は食べてほしいなんて一言も――言ってたけど、あんなことになるとは思ってなかったのよ」

「いえ、復讐などではありませんよ。私はただ、あなたに言っておきたかったんです」


 仮面の少女はおそらく満面の笑みでこう言った。


「気持ちが篭っていて、とても美味しかったですよ。ごちそう様」

「…………え?」


 本当にそれを、ただそれだけを言い残して、仮面の少女は工房を去って行った。


「……コーマ、聞いた?」

「ああ……聞いた」

「私の料理、美味しかったって……美味しかったって言われた」

「だな。俺も驚いた……よくもまぁ、砂糖と重曹を間違えた猛毒ケーキをうまいと言えたもんだ……俺なんて10回は死にかけたのに」


 俺が信じられないという口調でつぶやくと、その言葉にルシルははっとなった。


「え? コーマ、もしかして私のケーキを……」

「食ったよ。食べ物は無駄にしたらいけないからな」 


 アルティメットポーションと一緒に食べたよ。

 三途の川を何度も渡りかけて、10回目に行ったときは「またあんたか。今度はゆっくりしていけるんだろ?」と鬼に声をかけてもらったほどだ。


「コーマ、私、もっと頑張るわね! 料理!」

「頼むから月に一度程度にしてくれ。俺の身体が持たない」

「いいわよ。コーマが食べてくれないなら、いつもみたいに空き巣に食べてもらうから」

「あぁ、空き巣相手ならいいぞ。どんどん作ってやれ」


 そして、俺はスーとシーと食事に。

 コメットちゃんとタラ、ルシルは魔王城に戻っていく。


 何度も死にかけたが、いい休暇だったと思ったよ。


 さて、しばらくシメー島に、トマトジュースばかりを飲む吸血鬼が現れたという噂が広がった。

 まぁ、俺達とは関係ないだろう。


 ルシルがフルコースの最後のメニュー、「デザート」と「ドリンク」の「ドリンク」がトマトジュースだったらしいが、関係ないだろう。


 関係ない……よな?


以上、ルシルのフルコースでした。


あと、今日からタイトルがかなりシンプルになっています。

最初は新規の読者を増やすためにわかりやすいタイトルにしていましたが、話もだいぶ進んできたので、そろそろ原案に戻していいかな、という感じで。


~コーマはこの後こんなスライムを作りました~

 吸血蝙蝠の牙×スライムの核

……………………………………………………

吸血スライム【魔法生物】 レア:★★★★


血を好むスライム。ヒルスライムとも呼ばれる。

下手したら、血を全て吸い尽くされてミイラになってしまうかも。

……………………………………………………

でも、トマトジュースばかり飲んでいます。

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