大根サラダは剣よりも強い
~前回のあらすじ~
殺人料理大会がはじまった。
大会は進んでいく。
大会が進むにつれ、犠牲者……犠牲サンライオンが量産されていく。
本当に大会はまだ前半、文字通り前菜の段階なのに、すでに五頭のサンライオンが重体、一頭が死亡という状態だ。
そのサンライオンを殺したという料理ですら、食事の達人Sは普通に咀嚼して、「少し塩を入れ過ぎですね」と調味料に対してダメ出しを行っていた。
問題は絶対にそこではないと思うんだが。高血圧でサンライオンが死んだとは思えないんだが……サンライオンなのに顔が真っ青になってるし。
そして、いよいよ三組目。ルシルの出番になった。
「おぉ、来たな、今大会の期待の新人が」
「あぁ、噂によるとモリス三兄弟絶賛の新人らしいぞ」
「いやぁ、成り手が少ない殺人料理人に新人が出てくるのはありがたいですな」
後ろの三人もルシルの登場に興奮しているようだ。
「あ、ちなみに、モリス三兄弟といっても血は繋がってないからな。似たような名前のくせに三人つるんで行動してるからそう呼ばれてるだけだ」
とバンダナの男が聞いてもいないのに説明してくれた。
なら、あんたたち三人は、ガヤ三兄弟だな。
ルシルは材料の中から、大根を一本選んだ。
『期待の新人、ルシル選手! 手に取ったのは大根一本だけ!? 器用にかつら剥きをし、千切りに! これは大根サラダか!?』
本当にルシルは器用に料理をしていた。
そういえば、彼女がまともに料理をしているのは初めて見た気がする。
「……手際いいな」
「……包丁に慣れてる」
「……これは期待外れですかな」
後ろの三人は落胆した様子でルシルの料理を見ていた。
期待外れ? ……期待通りなんていくわけないだろ。
なぜなら、一本の大根から大量につくられた千切り大根は合体していき、
『なんだ、大根サラダが集まって合体した!? これは……これはまさか……ハリネズミ? それともハリモグラか!』
違う! あれはヤマアラシだ!
「ちょっと、どこにいくのよ、まだドレッシングをかけて――」
『ルシル選手、ドレッシングをかけるまえに大根サラダに逃げられた! 私、この実況を16年していますが、大根サラダに逃げられるというセリフを言う日が来るとは思っていませんでした』
そりゃ思わないだろうよ。
『大根サラダはサンライオンの檻に近付いていった! 自ら食べられに行くというのか!? だが、トゲトゲしたものをサンライオンが食べるとは……え?』
音が……音が消えた。
会場中からの全ての音が消えた。
そりゃ消えるだろう。
ヤマアラシが巨大化したんだから。
そして……檻ごとサンライオンを食べてしまった。
食べられたんじゃなく、食べてしまった。
無音の会場の中、「ガリ、ガリ、ボリ、ボリ、ゴクン」という音が聞こえてきた。
こんな光景みたら会場は当然大パニックに、
『おぉぉ、これは凄い! ルシル選手の大根サラダがサンライオンを食べつくしてしまった! 審査員、得点をどうぞ!』
【ダメージ:限界突破 状態異常:昇天 即効性:電光石火】
それは得点じゃない!
ていうか、なんであの光景を見て落ち着いて審査なんてできるんだよっ!
会場も大盛り上がりだが、誰一人逃げようとはしていない。
なんなんだ、こいつら!
『これは文句なし! ルシル選手二回戦進出! おぉっと、大根サラダ、今度は自ら食事の達人Sの元へ!』
ヤマアラシは今度は仮面の少女の元へと向かった。
「やばい、助けないと!」
俺は会場へ飛び出そうとしたら、後ろから「待った」の声がかかった。
「助けに行く必要はない」
「なぜ、食事の達人Sが僅か齢16歳でありながら、食事の達人の名を冠しているのか?」
「いや、なぜ食事の達人でありながら、武器を何一つ持っていないのか! 思い知らせてやれ!」
なんだ? この自信は。
ていうか、これも危ないセリフな気がするんだが。
その時だ。
仮面の少女は、フォークを持ったまま、
『風の刃!』
そう叫んだ。確か……風の魔法。
彼女がそう叫ぶと、無数の風の刃があらわれ、巨大化したヤマアラシを切り刻んでいく。
切り刻まれたヤマアラシは、その風に乗って、彼女の持っていた空の皿へと落ちて行った。
あれが……食事の達人の実力……いや、もはや狩りだろ!
一狩り行こうぜ! のレベルだろ!
『流石は食事の達人S! 千の風を生み出し、千切り大根をさらに千切りに! そして、千の風に乗って料理が皿の上に戻った』
彼女はその千切り大根を食べる。
……いや、サンライオンや檻を食べたのは横に置いても、一度土の上に落ちてるんだから洗ってから食べろよ。
とか思ったが、彼女は気にせずに……
『大根ですね』
と呟いた。
あぁ、大根だよ。大根切っただけだもん!
『少し異物が入っています』
それ、サンライオンと檻!
そして、仮面の少女は、
『ルシル選手……あなたの料理には何か迷いを感じます。そんな状態だとおいしい料理を作るなんて不可能ですよ』
そう言った。
ルシルが料理に迷ってる?
彼女の料理が迷走しているのはいつものことだが。
その後、大会はルシルの料理への余韻を残したまま進んでいった。
大会の途中でルシルが作りかけていたドレッシングが巨大スライムになって舞台の上を埋め尽くしてしまった。
そのスライムも、仮面の少女によって退治されたが、清掃作業のため、一時間の休憩時間となった。
また、その惨事のせいで他の三人の参加者が棄権、第三グループはルシルのみが二回戦に進むことになった。
これを書いていると、私はもうダメなんじゃないかと思ってくる。
いろんな意味で。
~ルシルはかつてこんなスライムを作っていた~
カカオ豆×塩×胡椒
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ハンバーグ【料理】 レア度:★★
ひき肉、野菜、パン粉等を捏ね合わせて焼いたもの。
肉と胡椒のいい香りが食欲をそそる、子供が大好きな定番料理。
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正式名称
コーマのためのスライムハンバーグ、ゴーレム風味! 爆発魔法を込めて
第一話参照。
この頃から比べると、料理も幾分かマシに……なってないな。




