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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode04 短編増殖

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出場の対価は黄金リンゴのパイ包みケーキ

評価300人突破しました。ありがとうございます。

評価ポイント16000突破しました。こちらもありがとうございます。

……………………………………………………

今回はパロディーネタを含みます。

そういうのが嫌いな方はごめんなさい。

でも、書きたかった。後悔はしてない。


~前回のあらすじ~

綿飴が空の覇者となった。

「ルシル様、あちらに豚の丸焼きを売ってる店がございます」

「タラは本当にお肉が好きね」


 タラに付き合ってたら、お肉ばかりにお金を使ってしまいそうになる。

 まぁ、コーマが悪徳商売で稼いだお金はまだまだあるし、無くなったらコーマからまた貰えばいいだけだから、別にいいんだけど。


 でも、どうせ食べるなら、やっぱり甘いものを食べたいわよね。

 コーマから貰ったカ○リーメイトをきっかけに甘いものを食べることの素晴らしさを知った私としては、ぜひともこの町の甘味は全種類コンプリートしたいわ。

 コーマがよく言う「コレクター魂」はきっとこのことを言うのね。

 でも、一品、すでに売り切れで食べ損ねてるのよね。黄金リンゴのパイ包みケーキ。

 明日、朝一番に並んで食べないといけないわね。

 まぁ、売り切れたものは仕方がないわ。とりあえず、あそこで「プリン」の売ってる場所に行きましょ。

 前にコーマが作ってくれたパフェというデザートにも乗っていたもので、とてもおいしかったのを覚えてるから。


「タラが豚の丸焼きを買うなら、私はその横にある店でプリンを……どうしたの?」


 タラが立ち止り、脇道をじっと見つめていた。

 そして、頭に被っていた獣の頭蓋骨を外し、犬耳をぴくぴくとさせる。

 私は何も聞こえないけど、コボルトの聴覚は私よりも優れているから、何か聞こえているのかしら?


「あちらの方向で女性が複数の男性……おそらく三人に追いかけられているようです」

「へぇ、放っておいてもいいかしら?」


 別に助ける必要性も感じられないし。

 追いかけられているのが私の部下だったら話は別だけど、人間同士の争いに首を突っ込むのは野暮ってものよね。

 これがあの女勇者なら、迷いもせずに助けに入るだろうし、コーマも、なんだかんだ理由をつけて助けに行くだろうけど。


「ただ、同じ方向に、先ほどルシル様が買い損ねた黄金リンゴのパイ包みケーキの香りが」

「え? 本当に?」

「はい、店の残り香と一致します。おそらく、逃げている女性が持っているものかと」


 コボルトの嗅覚は私の比ではないから、タラが言ってるなら本当だと思う。

 そうね、困ってる人がいたら助けてあげないと。


 仮に女性のほうに非があるのなら、追いかけている男の代わりに捕まえてもいいし。


 どちらにせよ、お礼に黄金リンゴのパイ包みケーキを貰うけど。


「タラ、案内しなさい! 私を負ぶって!」

「かしこまりました!」


 タラは私を背に乗せると、全速力で走って行った。

 屋根の上を。


 えっと、ゴーリキの時も屋根の上に隠れてたのよね、タラは。

 高いところが好きなのかしら?


 なんて思っていたら、紫色の髪の20歳くらいの人間の女性が、タラの言う通り二人の人間の男と一人の獣人の男に追いかけられていた。

 そして、女性の手には紙袋が握られている。

 きっと、あれが黄金リンゴのパイ包みケーキに違いない。


「タラ! GOよ、GO!」

「かしこまりました」


 タラは跳躍し、私とともに男達と女性の間に割って入った。


「待ちなさい! 男三人がかりで女性を追い掛け回して、どういうつもり!」

「は? お前たち、よそ者だな。関係ないやつはすっこんでろ!」

「関係なくないわよ。走り回ったら、彼女の持ってる黄金リンゴのパイ包みケーキが型崩れするじゃない!」


 私のその宣言に、


「「「「え?」」」」


 男達じゃなく、後ろの女性からも疑問の声があがった。


「ねぇ、その袋の中、黄金リンゴのパイ包みケーキよね」

「え? あ、はい。そうです。おいしそうだったんで、さっき買ったんです」

「じゃあ、もしもあの男達を追い払ったら、そのケーキ、私に分けてくれない?」

「え? でも……」

「よし、交渉成立! ということで、とっとと去りなさい、モブたち!」


「「「誰がモブだ!」」」


 男達が揃って声を上げた。

 うん、同時に同じツッコミを入れるなんて、やっぱりモブキャラね。

 モーブ、ブーモ、モブモと名付けようかしら。


「勝手に名前を付けるな! 俺はシメー島料理大会実行委員のモリスだ!」

「同じくシメー島料理大会実行委員のモリスだ!」

「そして、最後に俺は、料理大会実行委員のモーリスだ!」


 二人名前が一緒ってことはわかったけど。

 最後の獣人もモリスにしたらいいのに。


「で、実行委員のモブズがどうして女の子を追いかけているの!」

「「「モリスだ!」」……じゃねぇ、モーリスだ!」


 なんか疲れてきたんだけど。

 本当に典型的なツッコミキャラなのよね、モブって。

 三人を代表して、モーリスが説明を始めた。


「その女は料理大会の参加者だった。参加者には特典が与えられ、大会期間中の飲食費及び宿代は全て無料になる」


 へぇ、それはお得よね。私はお金はあるから別に欲しい特典じゃないけど。


「そして、そいつはさっきまで無料だからと高価なものばかり飲み食いした挙句、大会には出たくないと言いだして逃げようとした。だから追いかけたんだ」

「……話を聞く限り、あなたのほうが悪そうね」


 私は女性に向き直り、そう言った。


「私は聞いてなかったんです。大会があんな、あんなものだなんて! ちゃんと話してくれていれば最初から断ってました!」

「うるさい! 大会に出たくないというのなら、今までの飲食費と宿泊費、耳をそろえて払ってもらおうか。金貨3枚!」

「……そんなに使ったの?」

「だ……だって、フォアグラとか食べたことなかったんだもん……」


 これは話を聞く限り、本当にこの女性の自業自得のような気がしてきたわ。

 でも、どうしよ。ここでこの女性を捕まえて、捕まえた報酬に黄金リンゴのパイ包みケーキを貰うという手も、ここまで三人の悪口を言っちゃったからには通用しそうにないなぁ。

 ならば、この女性のほうが悪いと知っていても、助けてケーキを貰おうかしら。


「そうだ、私の代わりにこの女の子が大会に出たらいいんですよ」

「え? ちょっと、なんでそうなるのよ!」


 思わぬ飛び火に私は文句を言おうとしたが、


「ほら、黄金リンゴのパイ包みケーキを上げますから」

「む、それなら……出てもいいかもしれないわね」


 私も料理は好きだし。コーマには少し怒られそうな気がするけど、頼まれて料理を作りたいし。


「二人で話をまとめるな! 料理大会に出るには――」

「まぁ待て。その女の姿、さっき綿飴屋から情報の入った女の子じゃないか?」

「え? あぁ、そう言われたら」


 三人はこそこそと話し合い(全部聞こえているけど)、私に向き直り、


「お嬢ちゃん達、君が大会参加者に相応しいかチェックさせてもらう。まずはそっちの男の子からだ」


 そういい、モリスAが眼鏡を取り出した。

 その眼鏡でタラを見る。


「ちっ、料理能力……たったの5か……」


 モリスAは小さな声で「ゴミめ」と吐き捨てた。

 私達には聞こえないだろうと思っていたのだろうが、はっきりと聞こえている。

 思い出した、そういえばコーマが、この島に入るときに料理能力を測定する眼鏡で見られたって言ってたわ。

 そっか、それでタラの能力を見たのね。

 タラは肉を生で食べるようだし、料理能力が低いのは頷けるけど、ゴミはないわよね、ゴミは。


「まぁ、本番はあの女の子だろ?」

「そうだな……」


 モリスBに言われ、モリスAは測定を開始した。

 しばらくすると、モリスAの様子がおかしい。

 みるみる顔が青ざめて行き――


【ボンッ】


 小さな爆発音を上げて、眼鏡が割れた。

 ガラスの破片が目に入らなかったのは幸いだけど、男はまるで悪魔でも見たかのように顔を真っ青に……ううん、青を通り越して白くさせている。


「おい、どうした?」

「故障だとは思うが、彼女の料理能力の数値がマ……マイナス22000を超えたあたりで」

「マ……マイナス22000だと? そりゃホントに故障だぜ。お前の料理能力測定眼鏡は旧型だからな。オレので正しい数値を調べてやる」


 モリスBはそう言って、自分の眼鏡で私を見てきた。

 なんかバカにされている感じで嫌になってきたんだけど。


「そ……そんなバカな……俺の新型も故障か? マ……マイナス24000まで下がってやがる」

「マイナス24000!? そ……そんなの記録にもないぞ」

「ま……まさか……!? 確か歴代最低能力でもマイナス1800がやっとだったはずだ」


 二人は私を見て狼狽えていた。

 すると、モーリスがやってきて、


「話は聞いていたんだろ。綿飴が空を飛んだ。綿飴はザラメを遠心分離機にかけて糸状にしたお菓子、比重でいえば空気より重い。なのに空を飛ぶ。彼女の料理は我々の想像の及ばないところにいるのだよ」


 なんか急に偉そうに言ってきた。


「お嬢さん、彼女の代わりにこの町の料理大会に出てはいただけないでしょうか? あなたが出てくれるのなら、可能な限りあなたをもてなすと約束する」

「え?」

「黄金リンゴのパイ包み焼きケーキも、そんな冷めたものではなく、焼き立てをすぐに用意させよう」

「……この町にある甘いもの、全種類用意できるかしら?」

「ああ。この町の者はこの大会に全てを捧げているといっても過言ではない。もちろん用意できるとも」

「交渉成立よ! ぜひ大会に参加させてもらうわ!」


 どんな大会かは知らないけど、頼まれて料理をするんだから、コーマも文句は言わないわよね。

 私とモーリスはがっちりと手を握りあった。


「あの……じゃあ私は帰っていいですか?」


 私の後ろで追いかけられていた女性がそう尋ね、


「……厄介なことになった。主に知らせねば……」


 タラが心配そうに呟いた。

 厄介なことってなによ、厄介なことって。


~前々回、コーマが裏で作っていたスライム~


 青リンゴ×スライムの核

……………………………………………………

グリーンアップルスライム【魔法生物】 レア:★★


甘酸っぱい青リンゴの香りのスライム。

植物を育てるのが趣味。いつも青春。

……………………………………………………

青春かぁ。甘酸っぱいなー。

ちなみに、食べられません。


~確認~

シメイズマって町を知ってる?

知らない?

ならいいんだ。

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