大魔王の娘の力を取り戻すは流水の魔法書
~前回のあらすじ~
シメー島に入りました。
持ち運び転移陣を設置する場所の確保をするために宿屋を探した俺だったが、どこもかしこも満室だったため、俺は皮肉にも不動産屋から貸し工房を借りることにした。
宿代に比べたらかなりの割高な上に、ベッドもない場所なので寝るには向かないのだが、まぁ睡眠は魔王城ですればいいということで問題はないだろう。
町外れの工房……最近まで別の誰かが借りていたのか、それとも不動産屋の手入れがいいのか、埃がほとんどない部屋だった。
その奥の一室、玄関とは別の鍵を掛けられる、倉庫のような一番頑丈な部屋に俺は持ち運び転移陣を設置し、魔王城へと転移した。
刹那――そこは天国だった。
つまり、着替えを行っているルシルがそこにいた。
ルシルはスカートを半分下ろしていた。
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魔蜘蛛絹の下着【雑貨】 レア:★★★
魔蜘蛛の糸から作った布素材の下着。
ただの布きれと思うなかれ。履き心地がとてもいい。
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つまり、久しぶりの御対面というわけだ。
あれから俺もいろいろと勉強した。
例えば蜘蛛の糸というのは、中には十分な手入れをしたら金色に輝き、絹以上に滑らかな素材になるものもあるそうだ。
中でも魔蜘蛛の糸は色こそ白色だが、とても柔らかく伸縮性のある糸であり、鉄よりも頑丈でありながら軽くて履き心地がいい。
ただし、魔蜘蛛の糸で下着分の量を確保しようとしたら、1匹の魔蜘蛛が吐く糸を50年分、つまり100匹飼っても魔蜘蛛が吐く糸を半年も集めないといけないとか。
まぁ、アイテムクリエイトを使えば、少量の糸からこの魔蜘蛛糸の下着を作ることができるんだが。
そう考えて見ると、この魔蜘蛛糸の下着というのはやはり職人の血と汗と涙の結晶というわけなのだろうな。
ある種の芸術品だということだ。
美術館に飾っていてもおかしくないそれは、だが、ここでしか見ることのできない。
アイテムマスターを自称する俺はしっかりと目に焼き付けないといけない。
それは義務であり、責務であり、この感動を後生に伝えないといけない使命なのだ。
縫い目には金色の糸が使われているのか。おそらく、あれこそが先ほどいった黄金蜘蛛の糸。
魔蜘蛛糸から作られた布の縫い合わせに黄金蜘蛛の糸を使うのはどうかと思ったが、でもこうしてみると、組み合わせとしてはいい。
シンプルすぎるデザインの中に、気品を漂わせる。
さて、俺は思うわけだ。
ここまでじっくり芸術作品を堪能させてもらったからには、そろそろ代金を払わないといけない。
代金ともツケともいうべきそれは、もう俺の眼前まで迫っていた。
「いつまで見てるのよっ!」
ルシルのビンタが俺の頬を捉えた。
※※※
「というわけで、美食の町に行くぞ」
「何がというわけよ! 早く出て行きなさいよ!」
「な、まだ着替え終わってなかったのか!」
おかしい、《※※※》を挟んだから場面が変わったんじゃないのか?
「コーマが居るところで着替えられるわけないでしょ!」
仕方なく、俺は転移陣で貸し工房に戻る。
仕方なく待つこと10分。
通信イヤリングでルシルから許可が下りたので、俺は再び魔王城に戻った。
「……あれ? ルシル、着替えたんだよな?」
「ええ、着替えたわよ」
「……服、変わってなくないか?」
「服を全部脱いで、浄化魔法で綺麗にしただけよ。私、この服しか持ってないから。服を着たままだと浄化のイメージが付きにくいのよ」
いっぱい持っていた服は前の魔王城と一緒になくなったから。
とルシルが付け加えた。
「……服を全部脱いで?」
それは下着を含むということか?
そうか……そうなのか。
「コーマ、なんで血の涙を流してるのよ!」
「いや、なんでもない」
あと3分、いや1分でも遅く魔王城に入っていたらと思うとな。
血の涙くらい誰でも出るだろ。
裸を見ようと思えば、スケル眼鏡を使えば簡単に見ることができるんだけど、さすがにそれは犯罪だ。
俺が望むのは、さっきのようなラッキースケベだからな。
コメットちゃんとタラが、少し用事で出かけているそうなので、待っている間にアイテムを作ることにした。
「ああ、そうだ。魔王城に戻ったら作ろうと思ってたものがあったんだった」
俺はそう言い、ミズハスミレと白紙スクロールを取り出す。
そして、それは簡単にできた。
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流水の巻物【巻物】 レア:★★★★
水の魔法書。使用することで水魔法を複数覚える。
修得魔法【水弾】【水障壁】【流水剣】
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それを読む。あんまり強そうな魔法じゃないよな。
ルシルの使っていた氷魔法のほうが強そうなので、そっちを覚えたかった。
【水魔法スキルを覚えました】
【【水弾】【水障壁】【流水剣】を覚えました】
【水耐性値が上昇しました】
【×××のレベル効果により、水魔法スキルレベルが3に上がりました】
【最大MPが15上がりました】
そして、流水の巻物は白紙スクロールに変わったので、再度ミズハスミレと合成して、ルシルに渡した。
「ルシルも水魔法は覚えてないんだよな」
「そうね、私が覚えてる基本魔法は、「氷・転移・回復・封印」だけよ」
転移と封印の魔法はレア中のレア魔法らしいので、「だけ」と言われても困るんだが。
ちなみに、ルシルのスキルはこんな感じだ。
【天賦の魔法才能レベル10・氷魔法レベル10・転移魔法レベル10・回復魔法レベル10・封印魔法レベル10・氷封魔法レベル10】
となっている。最高の魔法使いなのだが、
【HP358/358・MP23/23】
と、MPが残念すぎて魔法が何も使えない。
だが、俺が竜化第一段階になったときは、
【HP452/452・MP9413/9413】
となり、そこそこ強い魔法を使えるようになるそうだ。
もともとのMPがいくらだったのかは想像もつかないが、一角鯨のHPを超えるMPがあったのかもしれない。
ちなみに、HPが増えるのは肉体的に成長するからだそうだ。
そういうわけで、ルシルに水魔法を覚えてもらったところ、スキルが二つ追加された。
水魔法レベル10、雪魔法レベル10の二つだ。
いきなりレベルが10になっているのは、天賦の魔法才能のせいだろうな。
水と氷で雪を覚えるのか……俺もいつか氷魔法を覚えてみたいなと思う。
あと、最大MPが100増えていた。
水耐性も増えているだろう。
【HP358/358・MP23/123】
これでルシルもある程度魔法が使えるようになるのでは? と思ったら、
「え?」
みるみるうちに最大MPが下がっていき、
【HP358/358・MP23/24】
1増えただけになってしまった。
「……なんで、最大MPが1しか増えてないんだよ」
「コーマに使ってる封印魔法がそれだけ強力なのよ」
そして、ルシルが笑顔で言う。
さっき下着姿を見られた時のことなど忘れたような、本当にうれしそうな笑顔で。
「でも、ありがとう、少し力が戻った気がするわ」
力が戻った?
最大MPが1しか増えていないのに?
こんなの焼け石に水じゃないか。
「それに、使える魔法が増えたのはいいわね。細雪とかいつか使ってみたいわ」
「そうだな、俺がいつか使えるようにしてみせるよ」
そのためにも、いろんなアイテムを作れるようにならないといけない。
力の神薬や反応の神薬のような薬、魔法関係の神薬を作れるようにならないと。
材料はまだわからないが、できるだけ早く。
そんな決意をしながら、俺はとりあえずスーとシーのための武器を作成。
あと、スライム作成を楽しみ……
【スライム創造者スキルを覚えました】
【最大HPが3上がった】
【最大MPが3上がった】
なんて出た。
スキル鑑定で調べてみたところ、
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スライム創造者レベル1
取得条件:鑑定レベルが足りません。
レベルアップ条件:鑑定レベルが足りません。
効果説明:鑑定レベルが足りません。
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やっぱりスキル鑑定スキルはレベル1だと役に立たないな。
メイベルも、鑑定レベルが低いとアイテムの名前しか見られないって言ってたからそれと同じか。いや、そもそもスキル把握によってスキルの名前は既に見えているのだから、実質何も鑑定できていないのと同じだ。
ま、スライムを作って覚えたのは間違いないし、悪いスキルじゃないだろう。
さらにスライムを作っていたら、コメットちゃんとタラが帰ってきたので、俺たちはシメー島に転移した。
順調に強くなっているコーマ。
強くなることのできないルシル。
それが辛い。
~コーマがスライム創造者を覚えたときに作ったスライム~
トゲ×スライムの核
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トンガリスライム【魔法生物】 レア:★★
頭の部分が尖っているスライム。
頭が尖ってるが、顔はいつも笑ってる。
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コーマ「……まずい、このスライムは絶対にイラストにしたらまずい」




