一角鯨を封印せよっ!
なんで一角鯨が――倒したはずだろっ!
って、ここは過去の世界だったっ! そういえば、一度封印されたって言ってたっ!
そうか、封印される前の世界か――もしかして、ベリアルの影もここにいるのかっ!
なんていろいろと考えている暇はない。
一角鯨の奴、俺に気付いたようだ。
俺を見上げている。
「ええい、これでもくらえっ! 石化の光っ!」
俺はそう言って、メディーナを前に突き出す。
「メディーナ、あの鯨を石にしろっ!」
「えぇぇっ! そんなのできませんよっ!」
「ダメ元でやれっ! やるしかないんだっ!」
「わ、わかりましたっ!」
メディーナが目に力を込める。
だが、一角鯨が石になる様子はない。
「やっぱり無理ですっ! もう少し弱くなって貰わないと」
「弱くしたらいいんだなっ! なら一角鯨、これでもくらいやがれっ!」
俺はそう言うと、アイテムバッグからランチボックスを取り出して一角鯨の口の中に投げた。
そして――
「よし、いまだ、メディーナっ!」
俺がそう言うと、一瞬にして一角鯨が石になった。
俺はその石になった一角鯨の上に着地する。
「ふぅ、うまくいったな」
「コーマさん、何をしたんですかっ!?」
「何って、普通にルシル料理が入ってるランチボックスを投げただけだぞ? あまりの不味さに弱ってメディーナの石化の力が――」
「い、いえ。私、何もしていません。目が合う前にこの鯨は石になってました」
「……え? そうなの?」
まさか、ルシル料理の不味さに石になったのか。
そういえば、俺が記憶を失っている時、魔竜がルシル料理を食べて石になったことがあったな。
……俺が一角鯨と戦った時、ルシル料理を最初から使っていたらもっと楽に倒せたし、フリードも死なずに済んだんじゃないだろうか?
そう思うと、全てが虚しくなる。
実は、エントもベリアルの影もベリアルも、全員ルシル料理を食べさせたら倒せたんじゃないだろうか?
そんなことを思っていたら、足元が揺れた。
「コーマさん、一角鯨が動き出しそうですっ!」
「マジかっ! そうだ、これを使うんだっ!」
俺はアイテムバッグからそのアイテムを取り出した。
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封印巨石【素材】 レア:★×8
巨悪を封じる力を持つ石。
魔竜の群れすらもこの石の前では力を失うだろう。
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かつて一角鯨を封印したというアイテム。
これをふたつ合わせれば、精霊を封印することができる封霊石というアイテムができるため結構作ったんだった。
俺は一角鯨の背中にその大きな石を乗せ、魔力を込めた。
すると、石となっていた一角鯨がその石の中に一気に封印された。
そして俺は海面に落ちそうになるので、一瞬でアイテムバッグから水蜘蛛改を取り出し、足に嵌めて水面の上に立った。
「コーマ、やったわねっ!」
空からゆっくりとルシルが落ちてくる。飛行石でも持っているんじゃないかというくらいゆっくりと。
メディーナの生首をルシルへと投げると、ルシルはそれをキャッチし、俺の腕の中に降りてきた。
「ルシル、転移する場所くらい考えてくれっ!」
「いいじゃない、一角鯨を封印できたんだし」
「これ、本当に俺が封印してよかった……んだよな?」
一角鯨が封印された封印巨石は海へと沈んでいった。
誰が封印したかと思っていたが、封印したのは俺だったのか。
あれ? ということは歴史って俺が過去に戻ることありきだったのか?
うーん、これ以上考えるとタイムパラドックスとかいろいろと考えないといけなくなるんだよな。
にしても、なんで俺、こんな場所で一角鯨と再戦してるんだよ。
『あの、どなたか知りませんが一角鯨を倒してくださりありがとうございます』
突如として頭に直接声が届いた。
ん? この声、どこかで聞いたような。
そう思っていたら、海面からその顔が現れた。
『はじめまして、地上から来た皆様――』
海面に顔を出したその女性を見て、俺は思い出した。
そうだった、すっかり忘れていた。
『私はマユ――この海に住む人魚です』
白い髪の可愛らしい女の子――マユを見て俺は手紙の存在を思い出した。
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