世界の創造
気が付けば、俺とルシルは何もない空間にいた。
何もない闇の中、光もない空間で、俺と大人姿のルシルの姿だけが浮かび上がっている。
「なんだ、これは――失敗したのか?」
まさか、世界は全て滅んでしまった?
これは死後の世界?
「いいえ、そうじゃないわ――世界の始まる前の世界。完全なる無の世界。私は今から世界を創造するの」
「ここから世界を創造するのか」
世界を創るって漠然と聞いていたけど、こんな何もない空間から作るのか。
「あれ? でも陣は世界中に描いたと言っても、ひとつの星の中にしか描いていないだろ? これって他の星が生まれないんじゃないのか? 太陽がなかったら人類は死んじまうぞ」
「それは大丈夫よ。世界中に陣を描いたことで、全ての星を観測することが可能になったから。まぁ、大きな星の向こうに隠れている小さな衛星とかは複製できないかもしれないけど、そのくらいだとこの世界のコピーには影響出ないともうわよ」
「てことは、本当に宇宙から創るわけか。まるで神だな」
「神は私じゃないわよ――神はコーマ……あなたよ」
「あぁ、そういえばそうだったんだな。でも神って何ができるんだ?」
「なんでもできるわ。そうね、例えば嫌いな人を新しい世界に複製しなかったり、世界から戦争を無くしたり――」
「ルルを大人にしたり、クリスを貧乳にしたり、マユを目立つようにしたりもできるわけか」
本当にやりたい放題にできるというわけか。
「その通りよ。もっとも、それができるのは世界創造の時くらいね……例えば……」
とルシルは一度瞳を閉じて、恥ずかしそうに言った。
「……私と結婚だってできるわよ」
「いや、それはいい」
俺は間髪入れずに言った。
「なんでよっ! コーマ、私と結婚したい結婚したいって言ってたじゃない」
「いや、ルシルのことは好きだけど、神の力で俺と結婚したいようにさせても、それは俺の好きなルシルじゃなくなるかもしれないだろ? それに、既に俺とルシルは婚約しているわけだから、いまさら焦ることはないし。大丈夫、何年経っても俺はルシルのことが好きなままだから、何年でも待っていられるぞ」
「コーマ、こんな時に何回私のことを好きっていうのよ……本当に、神になってもコーマは変わらないのね」
「お前がルシファーになっても変わらないでくれたのと一緒だ。いや、ルシファーからルシルになっても変わらなかったのかもしれないな」
俺がそう言った時だった。
「……そういうことは全てが終わってから言ってください」
神となった俺に恐怖の感情が宿った瞬間だった。
レメリカさんがそこにいた。少しイライラした様子でいる。
「全く、これで私たちは元の世界に戻ることができなくなったわけですね。リエルはそれでいいのですか?」
「私は神より仰せつかった自分の仕事をするだけです。私たちも世界の創造を助けます」
「カリーヌはコーマお兄ちゃんと一緒にいたいから」
といつの間にかリエルと、そして聞かれてもいないのにいつの間にかいたカリーヌがそこにいた。
「魔王様、僕も邪魔をしてすみません」
ゴブカリが申し訳なさそうに頭を下げた。
「ゴブカリ、お前もか……」
「ゴブカリはサタンの力を持っていたからここにいるのかしら」
ルシルがそう言った。
って、おいおい、ゴブカリがここにいるってことは、つまりはそういうことじゃないか?
俺がそう思った時、
その気配が急激に大きくなる。
「ルシル、世界創造はお前に任せてもいいのか?」
「え? どうしたの?」
「最後の最後に招かれざる客という奴だ」
そいつは現れた。
大きな牛のような姿の化け物。その角にはリアードが刺さっている。
「ベリアル――随分美味そうな姿に変わっちまったじゃないか。お前の肉でステーキを焼いて、引っ越し祝いにさせてもらっていいか?」
「僕はこれからルシファーの力を取り込む。そして、最後に君の――神の力を取り込み、僕は世界の神となる! 邪魔をするなっ!」
「生憎、お前にルシファーを渡すわけにはいかない。ちょっと痛いかもしれないが覚悟しろよっ! ベリアルっ!」
俺は拳を握りしめ、後ろで作業を続けるルシルに言った。
「ちょっと俺は戦ってるから、ルシル、世界創造するときに神の力を使ってたったひとつだけしてほしいことがある。お前ならそれが何か、わかるよなっ!」
俺は笑うと、ベリアルに向かって突撃していった。
コーマ「いよいよ次回、異世界でアイテムコレクター最終回!」
ルシル「コーマはあと一話で友達100人できるのかしら?」
コーマ「それはいい加減に忘れろ」
ルシル「まぁ、あとがき劇場は今回が最終回だから、本当にコーマに友達が100人できるかどうか確認できないのが残念よね」
コーマ「そうか、次回がいよいよ最終回か……」
ルシル「ええ、長かったわね」
コーマ「本当だよな。最初に俺とルシルに出会ったのが、本編時間でほぼ二年前だからな」
ルシル「私もコーマもほとんど成長していないような気もするけどね。赤ん坊でも二年あれば立って喋れるわよ」
コーマ「それを言うなよ。一応成長してるだろ?」
ルシル「そうかしら……私の場合、2700歳でも2702歳でも誤差の範囲でしかないけどね」
コーマ「そういや、お前、2700歳とかって設定だったけど、それはルシルとしての年齢で、ルシファーとしての年齢ならもっと年なんじゃないのか?」
ルシル「……………………」
コーマ「悪い、黙らないでくれ。聞いてはいけないことだったみたいだな」
ルシル「……そりゃ、私だって最初は永遠の十七歳とかって設定で行こうかと思ったわよ。でも仕方ないじゃない。見た目ロリっ子で年齢も若ければ、いろいろと青少年的な配慮にかけるとか言われるんだし。でもね、私だって女の子なんだから、後期高齢者だとかおばあちゃんだとかそんなこと言われたくないのよ」
コーマ「言ってないだろっ! 俺はそんなこと言ってないだろっ!」
ルシル「そもそも不老不死なんだから年齢だってそのまんまでいいじゃない。なんで律儀に数えているのよ。バッカじゃないの?」
コーマ「お前、最後の最後でキャラ崩れているぞっ!」
ルシル「はっ、コーマのことだから誕生日ケーキに蝋燭を2700本刺して私にプレゼントするつもりなんでしょ?」
コーマ「そんなバカな真似しねぇよっ! そもそも巨大ケーキにはちょっとしたトラウマがあるんだし!」
ルシル「でも残念だったわね。私は自分の誕生日を覚えていないんだから。なにせ2700年以上昔のことなんだもん!」
コーマ「ルシル、気をしっかり保て! 最後の最後にキャラ崩壊するなっ! せめて最終回ではきっちりしてろよっ! あぁ、最後までぐだぐだで悪いが、あとがき劇場はこれで終わりだ。次回はいよいよ最終回なのでよろしくなっ」
ルシル「そもそも年齢なんて制度を作ったのがいけないのよ。そうだ、コーマの神の力を使って年齢制度を無くしてもらおうかしら? 今なら間に合うわよね」
2700歳にプラス何千歳となってもあんまり変わらないとかいったらルシルに怒られる。
ということで、いよいよ明日、異世界でアイテムコレクター最終回
20時更新です!
ちょっと長めで最終回をお迎えします!




