アフロ
ルシルが補助魔法を覚えたことにより、最大MPが3も増えた。
「ルシファーとしての記憶の封印がないから、前よりも最大MPが増えているのよね。コーマの封印もそろそろ弱めていいかしら?」
「俺の封印を?」
んー、第一段階の封印解除でも結構破壊衝動が来るんだよな。
「ええ。コーマって、今、自力で第一段階まで解除できるのよね? そして、私が第一段階まで封印を解除してもコーマは抑え込めるんでしょ? なら、コーマの封印を第一段階とまではいかなくても、その半分ほど封印を弱めたらどうかしら?」
第一段階の半分か。それならなんとかなるかもしれない。
「それでどんな利益があるんだ?」
なんとかなるとしても、リスクしかないのなら御免だ。
「そうね――私が今の十倍くらい魔法を使えるようになるわね。あと、コーマの基礎能力が向上するから、力の神薬を使ってさらにパワーアップできるんじゃないかしら?」
「そうか。そう言えば確かに封印解除状態で力の神薬は飲んだことがなかったが、それは可能かもしれない――がちょっと不安だな」
「大丈夫よ。私の予想だと、第一段階の半分だと皮膚が多少硬くなる程度で姿も変わらないし。ちょっと爪や髪が伸びるのが早くなるくらいよ」
「え? 爪と髪が伸びる!? 俺、この世界に来てから爪も髪も一切伸びていないんだけど。魔王は不老だから髪や爪って伸びないんじゃないのか?」
「コーマの爪と髪が伸びないのは、私が神の力を完全に封印しているからよ。髪と爪が伸びるのは加齢による成長じゃなくて新陳代謝だから、封印を緩めたら伸びるわ。コーマが望むならアフロヘアになることも可能よ」
「いや、アフロになる予定は今のところ百年先までないけれどな」
「爪を伸ばして脱走の時に髭を剃ったり凶器として使う事も可能よ」
「なんちゃら三世じゃないんだからそんな使い道はないよ。爪切りは面倒だなぁ――髪は、まぁ気分転換に髪型を変えるくらいはいいかもしれないが」
と俺はルシルを見た。
彼女はいつもと同じツインテールだ。
「ルシルは髪型を変えたりしないのか?」
「え? あぁ、そうね。私はこの髪型は気に入っているし――でも畳で寝ると痛んだりするし、横になって寝にくいし――ショートヘアにしてみるのも」
「それはダメだっ!」
いや、俺もツインテール好きというわけではないのだが、ルシルがさらにルシルでなくなるのはなんか嫌だ。
「まぁ、髪型を変えるとイラストレーターさんが大変だものね」
「そんなメタな理由じゃないよ。髪を切ったらすぐには伸びないだろ? でも、気分転換にちょっと髪型を変えて見るというのはありな気がするなとは思ったが」
「じゃあ、切らずにアフロにでもしてみようかしら――今のままだと少し長すぎるから注意しないといけないけど」
とルシルが考え出した。
「ルシル、お前ってネタじゃなくて本気でアフロ好きだったのか?」
「もちろん本気で好きよ」
ルシルが真顔で言った。
意外な趣味だった。
「コーマがアフロにしてくれたら抱かれてもいいくらいに」
「やめてくれっ! 本気で悩むぞ、その誘惑。と言っても今の髪の長さじゃアフロにしようもないけどな」
「コーマ、それは誤解よ。アフロにしようと思ったらコーマの今の髪の長さでも十分なのっ! というより、それ以上長くなれば重くなって大変よ」
「なんでそこまでアフロが好きなんだ?」
「そうねぇ。ルシファーって地球ではアフロディーテと似ているところが多いって言うでしょ? だから好みの髪型も似てるのかしら」
「ルシファーとアフロディーテの類似点について俺はお前ほど詳しくないけれど、これだけは言える。アフロディーテの髪型はアフロじゃない。それにもうアフロの話題はいい。俺の封印を第一段階の半分解いてみるって話だっただろ? まずはそれを頼む」
このままアフロの話題が続けば、俺かルシル、もしくはその両方がアフロになるまで終わらないかもしれない。
「わかったわ――はい、終わったわよ」
「え? もう終わったのか? 何も変わっていない気がするが」
いつもみたいに神からのメッセージも来ない。
だが、ルシルを見ると彼女のMPがさっきまでの十倍に増えている。
「こんなことなら、もっと早くに封印を半段階解除しておけばよかった……がっ」
不意をついて突然俺に破壊衝動が襲い掛かった。
ルシルを殺せと内からの衝動が声になって襲い掛かる。
安心したらこれだ。
「コーマ、大丈夫!?」
「あぁ、大丈夫だ。気を張っている間は何も起きないが、この状態のままずっといるのは疲れそうだ」
と言って、俺はアイテムバッグから力の神薬を取り出して服用した。
力が上がったかどうかはわからないが。
「慣れればきっと大丈夫だと思う。暫くこのままでいさせてもらうよ」
「わかったわ……あれ?」
とルシルは自分のアイテムバッグから小さな石を取り出した。いや、石ではない。
石に偽造した映像送信器だ。
かつて謎の遺跡で拾ったのだが、誰が仕掛けたのかわからないままだった。
「どうした?」
「この映像送信器からの映像を受信する映像受信器が動いたみたいなのよ――」
「本当かっ!? どこからだ?」
「それが――」
とルシルは自分の足元を見た。
「この迷宮の地下からなのよ」
ラノベの主人公とヒロインが最終章でアフロになったら歴史に残るかもしれない




