プロローグ
いつも通りの日常から最終章になります。
「コーマ、DXチョコレートパフェまだぁ?」
畳の上で寝転がったルシルが俺にチョコレートパフェを要求してきた。
「待ってろ――どうせだから日本もどきの町で手に入れたバナナを使ってやろう」
バベルの塔で鈴子によって作られた日本の町。そこのスーパーマーケットで手に入れたバナナだ。
ラクラッド族の村で良質のカカオの入手ルートも手に入れたからな。
「アイスクリームは乗せるか?」
「もちろん! チョコレートとバニラの二種類ね♪」
「あいよ」
バニラとチョコレートか。それだけ乗せるとなると、器は大きくしないといけないな。
「はい、DXチョコレートパフェスペシャルお待ちどーさまっと」
テーブルの上にふたつのグラスを置く。
「コーマ、私ふたつも食べられないわよ」
「ひとつは俺の分だよ」
パフェ用の細長いスプーンをルシルに渡した。
ルシルは「ありがとう」と言ってパフェを食べはじめた。
「お前、本当にルシファーでもあるんだよな?」
「そうよ。だから、エントを倒した時の記憶もあるし、ベリアルやサタンと会話した記憶もあるわよ。まさかサタンがゴブカリの中にいるとはねぇ、思いもしなかったわ」
「それにしては、まんまルシルじゃないか?」
「それはそうよ。そもそも、ルチミナ・シフィルっていうのは記憶を多少改竄されたルシファーなんだから。性格や考え方、嗜好も変わらないわよ――コーマ、このサクランボちょうだい」
「そういうものか――って、サクランボ大切にとって置いたのに!」
ルシルは指でつまんだサクランボを口の中に入れて悪戯っぽく笑った。
「それに、長い間ルシルとして生活していたんだし、最近の記憶は全部ルシルなんだから、どっちかと言ったら、私の七割はルシルよ」
「じゃあ、お前のことは今まで通りルシルって呼べばいいのか?」
「ん、そういうこと」
「……横着して種を飲み込むなよ。さくらんぼの種って毒とかあったっけ? なんか日本にいたころ、そんな噂を聞いた気がするんだが。青酸カリが入っているとか」
「それが本当なら怖い気がするけど、眉唾じゃないの? でも、一応出して置くわね」
ルシルはグラスを持つと、そっとサクランボの種をそっと吐き出した。
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サクランボの種【素材】 レア:★
実桜の種子。植えると実桜が育つ。
育つとサクランボと呼ばれる食用果実が実る。
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毒があるかどうかは書かれていないなぁ。まぁ、特に注意事項もないから、毒とかはないんだろうな。
「で、ルシルはなんでルシファーの記憶をわざわざ封印したんだ?」
「んー、いろいろと理由はあったんだけどね。でも、これだけは信じて。私はコーマを裏切ったりしないって」
「知ってるよ。ルシルのことだ。ルシファーの記憶を取り戻しても俺たちに害をなすことがないと信じたんだろ。俺はその時のルシルの判断を信じるから、今のルシルも信じるよ。俺は今のコメットちゃんが大事だ。前のコメットちゃんもグーのことも大事に思っていたからな。お前の中にルシルがいる。それだけわかっていれば十分だ……って、まぁ一度ルシルの正体がルシファーだと知った時に散々悩んだから言えることなんだけどな」
と言って俺はスプーンを咥えた。
やっぱりバニラアイスは溶けかけが一番美味しいな。
「それで、ルシル。俺はベリアルを倒してもいいのか? 一応はお前の半身のようなものなんだし、聞いておこうかなって思ってさ」
「ベリアルの目的は新たなステージに踏み出すこと。そのためにこの世界を犠牲にしてもいいと思っているみたいだし」
とルシルが言った。
そうだよな――俺もそろそろ腹をくくってベリアルとの戦いの準備をしないといけない。
きっと、俺にとっては最後の戦いになるだろう。
「コーマ、次はケーキ作ってよ」
「わかったよ」
本当にこいつはいつも通りだな。




