予知能力者との戦い方
未来を見ることができる相手。唯一の救いはリアヌスがそれを無自覚だということだと思うが、逆に無自覚で力を使いこなすことができるのが凄いとは思う。
「コーマ、何か対策はあるの?」
「ルシルこそ漫画とか読むから、こういう時どうしたらいいかわからないのか?」
「そうね……未来を読む相手を一番簡単に倒す方法は、圧倒的な力で倒すことよ」
その通りだ。それは俺も考えた。例えば俺がこれから右から攻撃をするとして、それを相手が知っていても避ける前に倒すことができれば俺の勝ちだ。
だが、リアヌスと俺の間にそこまでの実力差はない。
となれば、今の案は当然保留となる。
リアヌスは自分の体の違和感を感じたのか、腕をくるくると回している。
今のうちに作戦を考えたい。
「あとは読み合いね。未来を見ると言っても、その未来はいつも変わるものでしょ? たとえば右の道と左の道、罠は一カ所のみにあると言われて、右の通路に罠があると予知されて、左の道に行ったのを見てから左の道に罠を仕掛け直したら予言は外れるでしょ?」
「……でも、それだとどうしてもこっちの攻撃が後手になってしまう……いや、その方法があったか」
と俺はアイテムバッグの中に手を入れた。
そして、一本の剣を取り出す。
草薙の剣を。
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草薙の剣【魔剣】 レア:72財宝
普段は冷気を纏うが、魔力を帯びれば紅蓮の炎を生み出す。
一振りすれば、一面の草を炎で焼き尽くすと言われる魔剣。
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「お前の動きを鈍らせるには冷やすほうがいいな」
だから、魔力を帯びさせない。冷たい剣でリアヌスの動きを鈍らせる。
「あぁ、コーマ、ちょっと待ってろ」
とリアヌスは言うと、岩へと歩いていきその拳を放った。岩が砕け散る。拳に見えないメリケンサックでも仕込んでいるんじゃないだろうか?
でも、なんで岩を砕いたんだ? 自分の力を確かめるためか?
そう思っていたら、リアヌスは尖っている石を見つけ、それを握った。
石を武器として使うつもりだろうか?
俺も剣を武器にすることにしたわけだし、文句を言うつもりはないが、どうもリアヌスらしくない。
そう思っていたら、リアヌスはその石を使って――
「………………っ!」
信じられない。な……なんてことをしやがる。
「……リーリエになんて言えばいいんだ」
「コーマ……なんとかならないの?」
「エリクシールでもあれは治せないよ」
俺とルシルが震える声で言った。
すると、リアヌスは不思議そうな顔で、
「どうした?」
と尋ねた。
「どうしたって――お前、なんで髪を切りやがった」
「あぁ? だって、戦いずれぇだろ? いつの間にこんなに髪が伸びたんだ? それにこの服も――」
とリアヌスはドレスをビリビリに切り裂き、髪と一緒にドレスの切れ端を捨てた。
……俺、リアヌスを倒してもリーリエに殺されるんじゃないだろうか。
「行くぞ、コーマっ!」
「来い、リアヌスっ!」
俺は剣を抜き、リアヌスに斬りかかる――と見せかけて地面の砂を蹴りあげて目を潰そうとした。が、リアヌスが咄嗟に目を守ろうとし、俺は砂を蹴りあげるのを中断してフェイントではなくそのままリアヌスに斬りかかった。
「やるねぇ」
「お前こそ」
剣が寸でのところでリアヌスに掴まれる。リアヌスの手から血が出るが、こんなもの致命傷でもなんでもない。俺の奇襲は失敗した――が、リアヌスが咄嗟に剣を離した。と同時に剣の刃が燃え上がる。
「……なんだろうな、少し先の姿が見えるには見えるが、どうも先が見辛くなってきやがった。どんなトリックを使ってやがる?」
「教えるわけないだろ――というか、戦いは十分楽しめただろ? そろそろ話し合いで解決しないか?」
「おいおい、お前は極上の分厚いステーキを一口食べたら満足するのか? 俺様は全部食べないと気が済まない。中途半端は嫌いなんだよ」
「九十七ある部族を倒してひとつにしたみたいに……か?」
「あぁ、あれは面白かったな。はじめたら最後までしないと我慢できないタチでよ」
「……悪い。そうだよな。中途半端は嫌だよな」
忘れていた。こいつは俺とは違うが、コレクター気質の性格を持っている。しかも中途半端は嫌うタイプだ。最後まで集めないと納得できない。最後まで戦わないと満足できない。
「ルシル、竜化第三段階だ」
「え? でも、コーマ。第二段階で十分戦えて――」
「本気には本気で答える」
と俺は宣言すると、リアヌスは笑った。
「そうこなくちゃいけねぇな。俺様も久しぶりに本気で戦ってやるぜ」




