話し合いで解決した試し無し
はち切れそうな白いドレスを着ているリアヌスを見る。直視できない。
あれを俺はどう見たらいいんだろうか。
「……ウソみたいよね、あれでも体は女の子なのよ」
「そうなんだよな。あのはち切れそうなドレス――その下を見たらいけないのはわかっているんだが、でもそれを意識していると、それはさっきルシルが言っていた薔薇族の人間になるんじゃないかって!」
「何をごちゃごちゃ言ってやがる! こっちは戦いたくてうずうずしているんだからよ」
「……そうか、俺はできれば戦いたくないな。お前に聞きたいことは山ほどあるんだが――」
「ん? 俺様に聞きたいことがあるのか? そうかそうか、教えてやるぜ?」
……お? これはもしかして、話し合いだけで解決する感じか?
そうだよな、こいつはブックメーカーなんだし、知識の魔王なんだよな。
「じゃあ、最初に――って、うおぃっ!」
リアヌスが放った正拳突きにより生まれた衝撃波を咄嗟に躱した。竜化していなかったら、いや、第二段階じゃなかったら顔面直撃していたぞ。
「何しやがるっ!」
「お前、名前は?」
「……なんで俺が質問されてるんだよ……言ってなかったか? 火神光磨だよ」
「コーマか。じゃあ、コーマ。こういう言葉は知ってるか?」
とリアヌスはファイティングポーズを取り、
「聞きたいことがあるのなら、力付くで聞いてみやがれ」
「あぁ、やっぱそのパターンか……ルシルは下がっていろよ」
俺はルシルを下がらせながらもアイコンタクトを送る。
いざとなったら第三段階で戦う――そう伝えていた。
ベリアルの影との戦い――あの時も十分第三段階を使いこなせていたからな。
「コーマ、お前はあのルシファーが認めた男なんだよな?」
どうやら、エグリザに聞いたようだ。
「……あぁ、それがどうした?」
「ルシファーとは前にやりあったことがあるが、勝てなかったからよ。お前を殺せばルシファーが現れるのかと思ってな」
そう言われ、俺は肩越しにルシルを一瞥する。
俺が死ねば、俺の中の神の力を封印する必要が無くなり、ルシルはかつての力を取り戻す。それこそ、ルシファーと呼ばれていた頃と同等の力を。
「お前、ルシファーと何をしたいんだ?」
「決まってるだろ。あいつを殺し、俺様が最強になるんだよ」
「なるほどな……ふっ」
と俺は鼻で笑った。
「どうした?」
「いや、俺の知り合いもやけに最強だとか強者の戦いだとかこだわっている奴がいてな」
「ほぉ、それは是非とも知り合いたい相手だな。お前を殺して、そいつがどこにいるか聞こうとするか」
と言うや、リアヌスが攻撃してくる。
(速いっ!)
その速度は獣化したベリアルにも匹敵する――が。
(躱せないことはないっ!)
俺は左に避けようとした――その時。リアヌスの蹴りが俺の逃げようとした方向から飛んでくる。
「ぐふぁっ!」
左腕でガードするが、防御しきれない。関節があらぬ方向に曲がり、痛みが後から伝わってくる。
右手で関節を元に戻し、俺は大きく右の奥歯を噛んだ。
右の奥歯に仕込んだエリクシールを一滴入れたままの袋が割れた。
痛みが引く。
「お前、いったい何をした――」
「何をした……だと?」
「お前の動き、まるで最初から俺が左に避けることがわかっていたみたいだったぞ」
「……ん、何言ってるんだ? お前が避けたのは左じゃなくて右だっただろ?」
「俺から見て左って言っているんだよっ!」
俺が言うと、リアヌスは目を閉じて顎に手を当てて何か考え、
「わからん。が、お前がなんとなく右に避ける気がした。それに――」
とリアヌスは拳を引く。そして、拳を突き出すと衝撃波が俺の足に落ちた。
今、隙を見てリアヌスに攻撃しようとしたのに、今の攻撃で完全に出鼻を挫かれた。
「なんだろうな、いろいろと少し先が見えてくる。これが武神の域って奴じゃねぇか?」
リアヌスは勝手にそう解釈していた。だが、そんなわけない。
武人だろうが、武神だろうが、俺が何をしようとしたかなんてわかるわけがない。
「……コーマ、気付いているんでしょ」
「あぁ、気付いている……なんてことだ……こんなに厄介な相手とどうやって戦えって言うんだよ。漫画やアニメだと定番の能力なんだけどな」
リアヌスは――ブックメーカーの力、過去、現在、未来を知る力のほんの一部を使っている。つまり、リアヌスは現在を見ると同時に、僅か先の未来をその目で見ているのだと。




