リアヌスの時間感覚
「2Pカラーのコーマ……コーアとでも呼ぼうかしら?」
「呼びにくいだろ、それ。コーラでいいんじゃないか?」
「それだと炭酸飲料みたいね」
「呼びやすいだろ?」
と俺とルシルがバカなことを言っていると、
「コーマさん、そんなことより、あれを放っておいてもいいんですか!?」
クリスが叫ぶ。
現在、神の力ことコーラとリアヌスが絶賛バトル中。
若干、リアヌスのほうが押している雰囲気がある。
「コーマさん、これ、コーアさんが負けたらどうするんですか?」
「……いや、それは俺も考えてなかった――って、ルシル、どうなるんだ?」
「そうねぇ、コーマはアイテムクリエイトとか鑑定の力を失って、竜化もできなくなる。私は封印の必要はなくなるからこのままね」
「それって万事OKなんじゃないか?」
「駄目ですよっ! そんなことをしたらリーリエちゃんがブックメーカーに戻ってしまいます! なんのためにここに来たんですかっ!」
クリスが腕を振り下ろして叫んだ。
その問題が残っていたか。
まぁ、今後ベリアルと戦うことを想定すると、確かに神の力は残っていたほうがいいんだが、ベリアルはどうも神の力を利用して何かをしようと企んでいる節がある。神の力を失うことは、あいつの計画を潰すことに繋がる可能性が高い。
「理想は共倒れだな」
と頷いた。
コーラとリアヌスの戦いは、まるで竜化した俺とベリアルの影の戦いのようだった。
力と力のぶつかり合い。コーラが技巧を凝らしてリアヌスの隙をついて戦うようだが、圧倒的なリアヌスの力にコーラはその隙をついた攻撃すら通用していないようだ。
「ガハハハっ、こんなに強い相手と戦うのは、クロード・ブラウン以来だ」
「クロードっ!? クロードを知っているのか!?」
「あぁ、つい三日ほど前に戦ったぞ。あいつも強かったが、性格はダメだな。とんだ臆病者だ――っと、やるなぁ」
コーラの拳がリアヌスの頬を掠めた。赤い切り傷が現れた。
それより三日前……だと?
もしかして――
「コーマさん、クロード・ブラウンって、確か――」
「あぁ、ベリアルの影そっくりの男だ」
「ベリアルの影がここに来たんですか?」
「いや、あいつは自分の事をクロードだなんて名乗らないよ……」
ということは、考えられる複数の予測の中で、一番可能性が高いのは、
「あいつの中で、クロードと戦ったのは三日前なんだ。時間の感覚がひどく歪んでいる。もしかしたら、あいつは――」
俺の中である予測が立った。
「おい、リアヌスっ! お前はどれだけの間ここにいるんだ?」
「ん? あぁ、ベリアルの奴は一週間ここにいたら強い奴と戦えるって言ってたな。しかもここにいたら腹は減らねぇし、本当に最高だな」
「ベリアルがっ!」
クリスが驚くが、それと同じくらい驚くことがある。一週間か。
こいつ、もしかして気付いていないのか? 現在がいつなのかも、自分が今どういう状態なのかも。
とするのなら、俺は大きな過ちを犯しているのではないか?
そう思った時――
「コーマ……あれ」
ルシルがかすれる声で言った。
彼女が驚くのも無理はない。なぜなら――竜化しているコーラの姿が変わったから。
角が伸び、背中の翼を大きく広げた。
「……竜化第二段階……」
このまま成長するのだとしたら、リアヌスに勝ち目はない。つまり、ブックメーカーの力を消滅させるという当初の目的を達成できるのだが――
「ルシル、もう一度さっきみたいにコーラの動きを封じることができるかっ!?」
「……無理よ。この氷壁ですら最後の力なんだから」
「俺のアルティメットポーションを飲めば――」
「コーマは忘れているかもしれないけど、ここは魂の世界なのよ。魔力は肉体から送られているの。だから、あっちの私に飲ませないと意味がないわ」
「ならば一度撤退するっ! クリス、リーリエ、ルシル! 元の体に戻れ。ルシルは地上に戻ったらすぐにアルティメットポーションを飲んでMPを回復させてから俺の力を封印――」
「リーリエちゃんの体はどうするんですかっ! このままだと何も解決――」
「わかってるっ! 主人公がなすすべなく逃亡するなんてカッコ悪いよな。でも――逃げれば次がある」
というと、俺はルシルを抱え上げ、クリスはリーリエを背負って走り出した。
氷の壁が消え、それとともにコーラが追いかけてくるが、その腕をリアヌスが掴んだ。
「どこに行くんだ、逃がさないぞっ!」
リアヌスがそう言うと同時に、俺たちの意識は暗転し――




