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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode15 英雄の証

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2Pカラー

 ロリまで若返っていたはずのルシルは小学生バージョンにまでその肉体を取り戻していた。

 思ったよりも余裕そうで、俺も少し拍子抜けしそうになる。

「コーマ、あれは何?」

 ルシルに問われ、俺は後ろを向いた。

「あれがブックメーカーで、初代リーリウム王国の国王らしい」

「あれをどうするのよっ! コーマが逃げるってことは、それだけの相手なんでしょっ! 一度戻るのっ!?」

「お前が現在進行形で封印しているそれと戦わせて時間を稼ぎ、考える」

「考えるって……でも、ふたりがかりで襲って来られたら流石に私も防げないわよっ!」

「大丈夫だ。似非神のほうは無理かもしれんが、ブックメーカーは戦闘狂バトルジャンキーだ! ああいう奴は強い奴がいたら放っておけない。失敗したら逃げるよ」

「……わかったわ。みんな、私の後ろに下がってっ!」

 ルシルの声に従い、俺とクリスとリーリエは彼女の後ろに隠れた。

 そして、封印が解除され、彼女が封じていた力の塊――巨大な闇が解放される。

 解放された闇は、もうそれが何の形をしているかもわからない。何もない――何もない白い空間の中に、何もない闇が広がる。同じ虚空にして対極の存在のようだ。

 と同時に、ルシルの姿が成長し、大人バージョンになる。

「あの方が、ルシファーのご息女、ルチミナ・シフィルなのですね」

 リーリエがそう呟いた。

 どうしてリーリエがそのことを知っているのか? それは尋ねない。

 リーリエは、いや、リーリウム王国の歴代国王は常にブックメーカーとともに国を築いてきた。その中で、ルシファーの情報やルチミナ・シフィル――ルシルの情報を得ていてもおかしくない。

 だが、ルシルが実はルシファーであることはやはり知らないようだ。

 そういえば、ルシファーがルシルになったのは、果たしていつのことなのだろうか?

 少なくともメディーナが封印された時はルシファーとして活動していたはずなのだが。

 そんな考えをしている暇もなさそうだ。

幾枚もの氷壁オーバーラップ・アイスウォールっ!』

 とルシルが叫ぶと同時に、氷の壁が現れた。

 そこに闇の塊がつっこんでくる。

 ガラスが割れるような音が聞こえるとともに、ルシルが作った氷壁に蜂の巣状の罅が入った。

「ルシルちゃん、大丈夫なんですかっ!」

「大丈夫よっ! わざと外側の何枚かの氷を薄くして割れやすくしてるのっ! そうすることで衝撃を緩和しているわっ!」

 ルシルが言った通り、氷の壁は確かに幾枚もあるようで、罅が多重に見えるし、手前の氷は傷ついていない。

 そして、氷も直ぐに元通りになった――が、闇の塊は、今度は銃弾のような形の小さな闇の塊をとばしてきた。

 闇の塊の先端が、氷の壁を貫いた状態で突き刺さる。

「――っ!」

 ルシルが力を込めた。

 氷のヒビが再度塞がり、闇の塊を押し出す。

 だが、このままでは氷の壁を破られるのは時間の問題――そう思った時、

「げんこつパンチっ!」

 雑なネーミングのパンチを、初代リーリウム王国国王が放ち、それが闇の塊――神の力に激突した。

「がはははっ、ここがどこかはわからぬが、幾人もの猛者たちと戦えるとは! ()()の言っていたことは事実だったようだなっ! リーリウム王国国王、リアヌス、いざ尋常に参らんっ!」

 ブックメーカー――リアヌスの筋肉が膨れ上がり、

「もう一度いくぞっ、げんこつパンチ」

 とリアヌスがシンプルな、それでいて強力なストレートパンチを放った、その時だった。

 ただの闇の塊だった神の力から手が生え、その拳を受け止めた。

「むっ」

 とリアヌスが拳を引く。

 その間に神の力は形を変えた――その姿は――

「……竜化した……コーマ?」

 ルシルが呟くように言った。

 そう、そこにいたのは真っ黒い俺だった。

「……この色違い感はまるで2Pカラーね」

 頼むからこんな時に緊張感を削ぐような発言は慎んでくれ。

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