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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode15 英雄の証

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コーマはフリーパス

 その日は、俺、クリス、ルシルは一度魔王城に転移陣で戻ることにした。夜も遅いからな。

 エリエールとイシズ、ハイロックの三人も誘ったのだが、イシズはリーリエをひとりにできないという理由でブックメーカーの部屋に残り、エリエールとハイロックは既にイシズに用意してくれている部屋に戻ることにした。

 エリエールが嫁入り前の女性が男性の部屋に泊まるなんて、とか言っていたが、ハイロックと同じ部屋で寝るのは許容の範囲内なのだろうか?

 そして、翌朝。

 俺たちは目的の場所までは、開拓村から歩いていくことになった。

 開拓村で俺たちがかつて住んでいた家には別荘として使う事を考え、転移陣を用意していたから。

 ラクラッド族の村に置いた持ち運び転移陣は、ルシルが転移した後にラクラッド族によって処分してもらったらしく、そちらには転移できなかった。

 元ブックメーカーであるハイロックは薬で治療したとはいえ病み上がりということもあり、リーリウム王国で待機。イシズもリーリエがいない現状において不在が続くといけないということでハイロックとともに王城に戻った。

 現在、移動しているのは俺、ルシル、クリス、エリエール、リーリエの五人だ。リーリエは自分の意志で歩こうとはしないので、クリスが背負って歩いている。

 改めてリーリエがおかしくなったと実感させられるのは、彼女がクリスに背負われても何も反応しないことだった。

 普段のリーリエならば悶絶ものの歓喜が押し寄せるだけでなく、クリスの背中の感触を味わったあとでバランスを崩したとみせかけて思いっきり胸を掴んでいることだろう。あの巨大な胸を鷲掴みにして揉みしだいているだろう。

 だが、リーリエはクリスの肩に手を置き、先程までと同じようにただただ笑顔を浮かべている。その笑顔に下心など微塵も感じさせない。

「やっぱりこんなのリーリエちゃんじゃないです。お城にお泊りに来たとき、護衛もつれずに夜這いに来るくらいじゃないとリーリエちゃんとは呼べません」

「……リーリエ、そんなことをしていたのか」

「そうだね。リーリエがクリスティーナちゃんに夜這いを仕掛けた回数は通算十七回。残念ながらその全てが失敗に終わっているよ」

 ブックメーカーとなったリーリエが自分自身の悪事を暴露した。

「って、ブックメーカーの情報には対価がいるんじゃなかったのか? 俺が聞いても問題ないのか?」

「ブックメーカーの情報は、知っている人がいる場合は対価を必要としませんわ」

「へぇ、そうなのか。じゃあクリスの最近の悩みは何だ?」

「コーマさん、なんで私を実験台に使うんですか!?」

「クリスティーナちゃんの悩みは胸が最近さらに大きくなってコーマくんに作ってもらった鎧がきつくなってきたことだね。鎧の調整をコーマくんに頼みたいけれど恥ずかしくて頼めず、少し苦しいようだよ」

「リーリエちゃん、言わないでくださいっ!」

「クリス、サイズがきついのなら言えばいいのに。流石に俺もそのくらいの調整はしてやるぞ?」

「だ、大丈夫ですっ! それに大きい鎧を着たら胸がさらに大きくなってしまいそうで」

「正しいサイズの鎧にしないと将来垂れるぞ?」

「うっ……じゃ、じゃあ後でお願いします」

 巨乳属性の持ち主の不安はやっぱり将来胸が垂れるのではないかということらしい。

 そんなバカな会話をしながら、俺たちはラクラッド族の村の近くに辿り着く。

 そして、以前と同様、そいつらは現れた。

「コーマ、アマイモノ、ツクレ!」

「アマイモノ、クワセロ!」

 二本足で立つリスのような、体調二十センチくらいの生物が七人くらい近付いてきた。。

 ラクラッド族だ。

 ここを通るたびに甘い物を作らないといけないのか?

 せめて試練って言葉を使えよ。

 そう思ったら、七人のラクラッド族はルシルを見つけると急に木の影に隠れ、

「ルシル、リョウリツクルナ!」

「オマエ、リョウリ、マズイ!」

「ゼッタイツクルナ!」

 と命令をした。

 さては、こいつらルシルの料理を食べたのか?

 目撃者であるはずのクリスを見たら、彼女は苦笑して説明した。

「結構危なかったんですよ。私が解毒ポーションを飲ませたので全員一命をとりとめました。どうやらラクラッド族のみなさんは体が小さいせいで致死量も少なかったんだと思います」

「……ほぉ」

 俺は横にいるルシルを見た。

 ルシルは怒りながら、

「別に無理して食べて欲しくないわよ。私の料理はコーマが全部食べてくれるんだから!」

 と叫んでいる。

 いや、さすがに全部とか言われても食べないからな。通常時なら週に一度程度が限度だろ。

 そう思っていたら、ラクラッド族が俺に対し同情的な表情で、

「コーマ、アレ、タベルノカ?」

「コーマ、ムラ、ハイッテイイ」

「ユックリヤスメ」

 と慰めてくれた。

 ……何だろう、俺、なんだか泣きたくなってきた。

 俺ってそんなに不幸だったのかと再認識させられる。

 ルシルも泣きそうな顔をしていた。

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