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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode15 英雄の証

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ルシルがルシルであるのなら

「パーカ迷宮が滅びるってどういうことですか!? 原因は」

「現在、多くの迷宮がひとつに纏まりつつあります。ベリアルが迷宮の多くを吸収しているからです。そして強大になった迷宮は何もしなくても周りの迷宮からエネルギーを吸いとっていきます」

「じゃあ、俺の迷宮も危ないんじゃ――」

「いいえ。選運の迷宮は貴方が思っている程小さくありませんし、ギルドマスターの魔王派閥にも入っていますからね」

 あぁ、レメリカさん、ユーリが(正確にはルルが)魔王だっていうことは当然知っているわけね。

 俺は特別何かをしているつもりはないけれども、ユーリが派閥を作っていたのはそういうわけなのか。

「あれ? じゃあブックメーカーもユーリの派閥に入れば全部解決ってことじゃないんですか?」

「そういうわけにはいきません。というのもブックメーカーはどこの派閥にも入ることができないのです」

「どういうことです?」

「派閥に入るには、魔王の意志が必要です。ですが、ブックメーカーには本人の意思というものがありません」

 あぁ、確かにそうだよな。

 ブックメーカーは全知の力を持つ代わりにその記憶を維持することができない。

「唯一ブックメーカーを救う手段は、他の魔王がブックメーカーに力を与えることでした。ただし、そのような器用なことをできる魔王はまず、ベリアルしかいません」

「もしかして、リーリウム王国とエリエールが俺の迷宮に攻めてきたのは――」

「ベリアルに取引を持ち掛けられたからでしょう。彼は約束を守ったようですが、それでも僅か数カ月猶予ができただけですね」

「……そうですか……あの、何か方法はないんですか?」

「方法はふたつあります」

「ふたつ?」

「ええ。ひとつ目はベリアルを殺し、その後ギルドマスターが派閥を解体すればいいのです

「……もうひとつは?」

「ブックメーカーの体から生命の書を取り出せばいいのですが――その方法は私にも知りません」

 生命の書……か。

 俺はその鑑定結果を思い出す。

……………………………………………………

生命の書【魔道具】 レア:72財宝


この書を守れ。この書を受け入れろ。

全てはそこから始まり、そこに終わる。

……………………………………………………

 これを見た時、何かあったような気がする。

 ……そう、エリエールはこう言ったのだ。


『わたくしはブックメーカーにはなれませんでした。ですが、先代から渡された本に、わたくしがするべき使命が書かれていました。ある人をここに連れてくるようにと』


 それが俺だった。何故俺があそこに行く必要があったのか?

 あの時はエントを倒す手段が得られるからだと思っていたが、そうじゃないかもしれない。

 先代のブックメーカーはエリエールに伝えたのではないか?

 俺ならば、現在のブックメーカーが抱えている問題を解決できると。

 でも、俺ひとりで解決できるとは思えない。

「……ルシルの力があればもしかしたら」

 魔法の天才である彼女なら、ブックメーカーの体から生命の書の中身を取り出す方法がわかるかもしれない。

 あの時、エリエールがブックメーカーの元に案内したのは俺だけではない。珍しくルシルも一緒だった。

「レメリカさん、俺、行ってきます!」

「話はもうよろしいのですか?」

「帰ってからもう一度聞かせてください。時間があまりないんでしょ?」

「……そうですね」

 とレメリカさんは言うと、何やら呪文を唱えた。

 すると、転移陣がふたつ現れた。

「短距離転移陣ですが、あなたの持つ転移石があればあなたの行くべき場所に行けるでしょう」

「レメリカさん、ありがとうございます」

 俺は礼を言って転移陣の中に入っていった。


   ※※※


 魔王城に戻ると、いつもと変わらない様子でコメットちゃんがいた。

 彼女は笑顔を浮かべ、

「コーマ様、お帰りなさいませ。昼食になさいますか?」

 と尋ねた。

「ううん、昼飯は後でいい。ルシルは戻ってるか?」

「はい、ルシル様でしたら先ほど食堂の方でカリーヌとクリス様といらっしゃいましたよ」

「食堂か――ありがとうね」

 俺は歩いた。

 まずはルシルに全てを話そう。

 ルシルの正体がルシファーであることを。

 俺の中にあるのはルシファーではなく、神の力であることを。

 全てを話そうと、俺は食堂の扉を開けた。

「あ、コーマ、お帰り。出稼ぎは終わったの?」

 とルシルは笑顔で俺に尋ねた。

 彼女の笑顔を見て俺は思った。

 例えルシルの正体がルシファーであろうと、俺を神の器として利用するために召喚したんだとしても、それでも俺は彼女を愛していると。

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