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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode15 英雄の証

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魂なき体

 魂を抜き取って別の場所に送るって、つまりは死ぬってことなのか?

 そんな危険なことは嫌なんだけど。

「んー、コーマがわかりやすいように言うのなら、幽体離脱みたいなものかしら? 肉体を仮死状態にすることで生命活動を低下させて、特別な呪法で肉体の劣化を防いでいるのね。理にかなっているわ」

 とルシルが感心するように言った。

 ルシルが感心するなんて、かなりのレベルなんだな。

「というか、これ、考えてみれば私が編み出してラクラッド族に伝えた呪法じゃない」

「…………は?」

 今、俺の愛する人はなんて言った?

「二千年くらい前にお父様が連れてきたラクラッド族に教えたのよ。すっかり忘れていたわ」

 ルシルが今更そんなことを言ってきた。

 二千年くらい前って、二千七百年生きているのは伊達じゃないな。

「ルシルサマ、オシエテクレタ。オレタチ、コノマホウ、タイセツ」

「ルシルサマ、ワレワレノキュウセイシュ」

「ネムリタイヒト、アマイモノクレル。オレタチハッピー」

 あぁ、ルシルがラクラッド族に女王様扱いされていたのは、それが原因だったのか。

 ルシル以外はしっかりと伝承にでも残っていたのか、気付いていたのだろう。当の本人は忘れていたようだが。

 でも、ルシファーはなんのためにそんな呪法をラクラッド族に伝えさせたんだろうか?

 極東大陸はこれまで現地の人しかいなかったから呪法を希望する人は少なかっただろうが、これから開拓が進めばこの大陸にも人が増え、恐らくラクラッド族の呪法を望む人は増えてくるだろう。

「ルシル、この魔法はお前にも使えるのか?」

「今の私は無理ね。コーマの封印解除第二段階までしたらいけるかしら? 全盛期なら魂を戻すのもできるけど」

「……かなり魔力を使う魔法なんだな」

 ラクラッド族のMPを見たが、それほど高くないんだよな。

 本当に可能なのか?

「ラクラッド族はね、仲間同士の魔力を共有することで高度な魔法を使う事ができるのよ」

「複数のパソコンを使って演算処理をするようなものか?」

「んー、そんな感じかしら。どちらかと言えば、電池の直列のほうがわかりやすいと思うけど、累乗的にパワーアップするからMP5万くらい消費する魔法でも使えるようになるはずよ」

 あぁ、そういう感じなんだな、と思った。後ろでクリスが「全然わかりません」と言っていたが、それは無視する。

「じゃあ、俺が呼びに行くしかないな」

「え? コーマさん、私が呼びに行きますよ」

「フーカが帰ってきていない以上、なんらかの問題があっちであるのかもしれない。クリスが行っても二次遭難になるのがオチな気がする」

 それに、ルシルに行かせるのは論外だ。

 ルシルが心配だとかそういう問題ではなく、ルシルが仮死状態になったとき、俺の封印がどうなるかわからない。危険な賭けは避けるべきだろう。

「ラクラッド族の皆、俺の魂をジューンのところに送ってくれ」

「ワカッタ。コーマ、ネロ」

「ネテ、メ、ツムレ」

 そう言われて、俺はジューンとフーカの間にある石の台座の上に横になる。

 俺を取り囲むように三十人のラクラッド族の皆が輪を作った。

 そして、ラクラッド族は口笛を吹き始める。目を閉じ、ふしぎなその音色に耳を傾けると、次第と俺の意識は遠のいていった。


   ※※※


「コーマさん、眠っちゃいましたね」

 コーマさんが眠ったことで、ラクラッド族の皆さんは役目が終わったと思ったのでしょう、解散して部屋を出ていきました。んー、コーマさんがどれだけ時間がかかるかわかりませんから、私たちも帰りましょうか。

「ルシルちゃん、私たちはどうしましょう? ……って、ルシルちゃん、どうしたんですか? その姿」

 私の後ろにいたはずのルシルちゃんは、いつの間にか体が大人になっていました。

 この姿は一度見たことがあります。ルシルちゃんがベリアルの影に殺されかけたとき、この姿になっていました。

 とても美しい女性です。

「……コーマの魂が解き放たれて、死んだという認識になって、私の封印が解除されたのかしら。でも、まだ封印しているという感覚はあるのよね。どういうことかしら」

「今のルシルちゃんって、いわゆる全盛期のルシルちゃんなんですよね。それなら、ジューンさんとフーカちゃんを呼ぶこともできるんじゃないんですか?」

「できると思うけど、それはコーマに任せましょ――それに、何か嫌な予感がするのよね」

 とルシルちゃんがコーマさんを見た時です。

 急にコーマさんが起き上がりました。

「コーマさん、もう終わったんですか?」

 私が尋ねると、コーマさんは頭を抱え、そして指の隙間から私の顔をみました。

 そして、私の顔を凝視し、

「……もしかして、クリスティーナか?」

「え? そうですけど、コーマさん、何を言ってるんですか?」

 もしかしなくても私はクリスティーナです。

 コーマさん、私をからかっているのでしょうか?

「……クリス、これ、コーマじゃない。別の誰かが乗り移っているわ」

 別の人が乗り移っている?

 それって、コーマさんの体が乗っ取られたってことですか!?

 コーマさんは力の神薬を飲んでいてその力は脅威です。悪用されるようなことがあればとんでもないことになります。

 私が警戒し、いつでも剣を抜ける体勢を取りましたが、コーマさん(?)はルシルちゃんを見て尋ねます。

「……ルチミナ・シフィルか」

「私の事も知っているようね。一体何者なのかは知らないけど、その体は私にとってもこのクリスにとっても大切な人なの。だから出ていってくれない? じゃないと強制的に追い出すことになるわよ」

「悪いが説明している暇はない。ルチミナ・シフィル、急いで料理を作るんだ」

「え?」

「いいから急いで。そして、コーマの前に供えろ。できるだけ多く。そうしないと大変なことになる」

 コーマさん(?)はそう言うと、もう一度私を見ました。そして――そのまま目を閉じて倒れるように眠りました。

「……体の拒絶反応ね。本人と違う魂が体に入ったから魂がダメージを受けたのよ」

「一体、何者だったのでしょうか?」

「さぁ……でも、言うことは聞いておいたほうがいいかもしれないわね……もしも何も起きなかったらコーマに責任をとって食べてもらいましょ」

 というと、ルシルちゃんはコーマさんのアイテムバッグに手を入れ、勝手に食材や調理器具を取り出しまして、料理をはじめました。

 その時、頬を涙が一筋伝いました。

 あれ? 私、今泣いていたのでしょうか?

 そう思ったら、隣でルシルちゃん涙を流しながら玉ねぎをみじん切りにしていました。どうやら全盛期のルシルちゃんでも玉ねぎの汁が目に入ると痛いようです。

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