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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode15 英雄の証

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ラクラッド族の試練

「コーマ様、顔がまだ青いですけれども大丈夫ですか?」

 コメットちゃんが心配そうに尋ねるが、大丈夫。顏が青くなったのは健康になりつつある証拠だ。緑よりはマシ。

 さて、これはどういうことだ?

 なんで迷宮に戻った途端、ルシル料理が復活した?

「コーマ……大丈夫?」

 ルシルが罰の悪そうな顔をするが、

「いや、なんかルシル料理を久しぶりに食べたって気になってな。気分は最悪だけど、でも気になる事が増えた」

 と俺は考えを纏めにかかった。

 ルシルの料理が魔物化しなかった条件はなんだ?

 迷宮の中だと魔物化するってことなのか?

 いや、迷宮以外でもルシルは料理を作っている。例えばシメー島の殺人料理コンテストで。それなら、逆に極東大陸でだけ魔物化しないのではないのか?

「もしかして――」

 俺はある仮説を打ち立てる。

 極東大陸とそれ以外の相違点。それは、瘴気の有無だ。

 極東大陸には瘴気がほとんどないから魔物が現れないという。

 魔物が生み出されるという現象、そしてルシルの料理が魔物になるという現象。

 それは共通しているじゃないか。

 なんでいままで気付かなかったんだ?

「ルシル、実験だ! 今から極東大陸に行くから、もう一度ほうれん草のおひたしを作ってくれ!」

「わ、わかったわ。あと、おひたしじゃなくて胡麻和えね」

「どっちでもいい! 早く頼む!」

 俺は転移陣を使って極東大陸に移動する。

「コーマさん、待ってください!」

「私も行きます!」

 クリスとコメットちゃんもついてきた。

 転移陣を潜って、森の中に舞い戻る。

 そして、俺は近くの岩の上に魔力コンロを置き、その上に鍋を置く。

 さらにすり鉢とすり棒や包丁、まな板、胡麻、ほうれん草、調味料類も用意した。

「じゃあ、頼むぞ」

「わかったわ」

 と、ルシルが料理を作り始めた。

 ほうれん草についた汚れは浄化魔法で落とし、水を鍋へ水魔法で入れて沸かす。その間にほうれん草を一口サイズより少し大きめに切り、すり鉢で胡麻をする。沸騰したお湯に塩を入れてほうれん草を投入。さらに胡麻をすり、ほうれん草を取り出し、冷水で冷やして胡麻と砂糖醤油で和えた。

「できたわよ」

 小皿に盛りつけられたそれは、見た目は百点の料理。

 未だに半信半疑のふたりの横で俺はマイ箸を使ってほうれん草の胡麻和えを食べた。

「うん……不味い」

 味の感想を述べ、顔色ひとつ変わらない俺を見たコメットちゃんとクリスは、まるでこの世の奇跡を見たような顔になった。

 そして、ふたりもまたそのほうれん草の胡麻和えを食べる。

「凄い……本当においしくないです!」

「ルシルちゃんがまともにマズイ料理をつくっています!」

「コメットにクリス……私、本当にそろそろ泣いていいの?」

「いやいや、これは凄いことだぞ。とにかく、この大陸でルシルの料理が魔物化しないことがわかった。これだけでも大きな一歩じゃないか!」

 俺の予測が正しければ、つまり厨房に瘴気を入れない方法を思いつけば、ルシルの料理は魔物化しないってことだ。

 そう思ったのだが――あれ?

「……クリス? コメットちゃん?」

 見ると、ふたりの顔色が凄いことになっていた。

 緑色だ。

「ふたりとも、しっかりしろ!」

 俺はアルティメットポーションをふたりに飲ませる。

 ふぅ、顔色が青くなったな。これで大丈夫だ。

「コーマ、これはどういうことなの?」

「あぁ、そう言えば、極東大陸でも僅かにだが魔物はいるらしいから、瘴気がまるでないわけじゃない。ということで、少し毒になっていたということなんだろう。もしかしたら、俺たちが魔王城に帰ったとき、服とかにも染みついていたのかもしれない」

「じゃあ、コーマが平気なのは?」

「ずばり、慣れだな。お前の料理を食べ過ぎて耐性ができているんだと思う。逆に言えば、瘴気が全くない場所だと、味も改善される可能性があるってことだ」

「本当に!?」

「あぁ、これも憶測だがな」

「憶測でもいいわよ。私の料理をコーマが美味しい美味しいって食べてくれる姿が目に浮かぶわ」

 ルシルが笑顔を浮かべ、星空を見上げた。

 そんな未来が来れば俺も幸せだろうなと、俺は無言で全員分のほうれん草の胡麻和えを食べるのだった。



 翌朝。俺とクリス、ルシルはラクラッド族の村へと向かった。コメットちゃんはお留守番だ。

 森の中、クリスの案内で俺は進んだ。

 目的地についたのは昼を少し過ぎたあたりで、昼食はまだ食べていない。ラクラッド族に歓迎されることがあれば、そのまま昼食会になるかもしれないからな。

「コーマさん、この先です」

 クリスが言う。あぁ、なんとなく気配は感じている。小さな気配だ。

 そして、クリスの言う通り、そいつらはいた。

「マタキタナ、ニンゲン」

「シレンウケナイト、トオサナイゾ」

 そう言う二人の見た目は人間には程遠い種族だった。

 ニ十センチくらいの、二本足で立っている茶色いリスみたいな生物だ。

 子供のような声で俺たちに語り掛ける。

 こいつらがラクラッド族か。

「試練か。どんな内容なんだ?」

 いったい、どんな無理難題をふっかけられるんだ?

 クリスが泣いて俺に助けを求めるくらいなんだからきっと凄い内容なんだろうな。

 クリスはあまり詳しく語らなかったが、はてさて。

「アマイモノタベサセロ!」

「オイシカッタラトオシテヤル!」

「オカネイラナイ! アマイモノダゾ!」

 ……甘いもの?

「……それって普通に通行料寄越せってことか」

「ツウコウリョウ、オカネッテコトダロ? オレワアマイモノガホシイ! アマイモノ、シレンダ!」

 俺はクリスをジト目で睨み付けた。

 お前、こんなバカな試練のために俺を呼び出したのかよ。


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