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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode14 贖罪の村

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ルシルの悲しい顔

 朝が来た。開拓村に来て何日目かはもう数えていない。

 目の前で、ルシルがパンケーキを一口サイズに切り分けて、野イチゴのジャムをつけて食べていた。その姿は俺が知るいつものルシルだ。

「ルシル、本当に朝はパンケーキだけでいいのか? サラダもあるけど」

「サラダ? 要らないわよ。コーマだって私が甘い物しか食べないことはしってるでしょ?」

「あぁ……うん、そうだったな。あぁ、そうだ。大地の魔法書が完成したんだ、使ってみろよ」

「本当? わかった、使ってみるわ」

 俺が手渡した魔法書を受け取ったルシルは、魔法書を読む。

 すると、直ぐにその効果が現れた。

 普通なら一種類しか覚えないはずなのに、ルシルの奴、今回も三種類の魔法を覚え、MPが一気に300も増えるが、俺を封印している効果のせいでみるみる最大MPが下がっていき、結果10増えただけだった。

 いや、前に光魔法を覚えた時はMPが2しか増えなかったんだから、着実に増加率も上がっている。

【天賦の魔法才能レベル10・氷魔法レベル10・転移魔法レベル10・回復魔法レベル10・封印魔法レベル10・氷封魔法レベル10・水魔法レベル10・雪魔法レベル10・光魔法レベル10・祝福魔法レベル10・土魔法レベル10・重力魔法レベル10・重封魔法レベル10】

【MP582/582】

 んー、なんかすごい魔法を覚えたな。

「ルシル、重封魔法ってなんだ?」

「重封魔法はブラックホールを作り出して重力の檻を作る魔法ね。基本的に不死身の化け物を永久封印するための魔法かしら?」

「なんだよ、ブラックホールって。超新星爆発クラスの魔法だな」

「MPが足りないから使えないけどね」

 あっけらかんとした口調でルシルが言った。

 このあたりもルシルらしい。

 スキルもルシルのものだし、MPもルシルのMPだ。

 何度も確認したが、ルシルが偽物ということはない。

 でも、ルシルが何かを隠しているのは事実だ。

「どうしたの? コーマ、じっとこっちを見て」

「いや、ルシルは今日も可愛いなって思ってな」

「はいはい、コーマはいつもそうよね。私は結構普通に聞いたんだけど」

「そうか? 別に、何もないよ。ルシルは今日は何をするんだ? 通信イヤリングの改良作業か?」

「んー、そうしたいんだけど、ちょっと水質調査を頼まれているのよ」

「水質調査?」

「ほら、鉱山ができたでしょ? だからその鉱山の近くに井戸があったほうが便利だってことで、井戸を掘る場所を見に行くことになったのよ。通信イヤリングの整備もしないといけないなって思ってたんだけどね」

「……そっか。じゃあ、俺は今日は休ませてもらうかな。最近働いてばかりだったし」

「そうね。それがいいと思うわ。コーマはちょっと働き過ぎなのよ」

 働きすぎか……それは俺じゃなくてお前だろ、ルシル。

 つい最近まで魔王城でダラダラしていた奴が、最近働き過ぎだぞ。

 いったい、何を考えているんだ?


   ※※※


 開拓村から離れた場所の木のてっぺんで、俺は双眼鏡を片手に鉱山の入り口を見ていた。

 ルシルがおかしな行動をしている。でも俺と一緒だったらルシルは隙を見せない。だから、離れた場所からルシルを監視することにした。近くから監視していたら勘のいいルシルのことだ、きっと俺に気付くだろうから。

 でも、ルシルはやはりおかしな素振りを見せない。

 鉱山付近に行くというので、俺が渡したヘルメットを被り、村の人と話していた。

 ツインテールが邪魔なのか、ヘルメットがたまにずれたりするけれど、それが可愛らしい。

(って何、にやけてるんだよ、俺)

 これじゃまるでストーカーだ。

 ルシルは魔法を使い、地下水脈の様子を探っている。怪しいところがまるでない。

 強いて怪しいところを上げるとすれば、ルシルが働きすぎているのが怪しいくらいか。

 俺の杞憂だったのか?

 いや、でも昨日の通信イヤリングを後ろ手にしまった時のルシルの様子は、絶対に何かを隠している。

 こうなったら――こっちも奥の手を使うしかないかな。

 そう思いながら、俺は双眼鏡を下ろそうとし――

(もう少し眺めているか)

 とルシルの様子を見ることにした。

 こんな働き者のルシルは激レア映像だからな。


   ※※※


 その日の夜。ルシルはパンケーキ、俺は鳥の丸焼きを食べることにした。鳥はダッタスから貰ったものだが、既に羽はむしられていたため、一見、何の鳥かはまるでわからない。

 ただしそれは鑑定スキルがなかったらの話だ。

 ……まぁ、俺の世界でも牛乳が出なくなった老牛だって廃牛になって食べられるしな。

 そのあたりは気にしても仕方がないだろう。

「ねぇ、コーマ。このパンケーキなんだけどさ、二枚作って餡子を間に挟んだら美味しいんじゃない?」

「ルシル、お前知ってていってるだろ。それを人はどら焼きと呼ぶんだ」

 微妙には違うけれども。

「どら焼き!? 見たことあるわ。ド○えもんが好きなお菓子よね? アニメの中以外にもあったの?」

 ……全盛期の頃魔力を使って日本の様子を見ていたルシルの知識は相変わらず偏り過ぎているようだ。

「コーマ、作れる?」

「あぁ、作れると思うが、もう夜も遅いからな。明日でいいか?」

「え、今すぐ食べた……ううん、やっぱり明日でいいわ。楽しみにしてる」

「ん? いいのか。偉いな、我慢ができるようになったのか」

 俺は笑って言った。

 そして――

「なぁ、ルシル。なんでこんなことをしたんだ?」

 俺は険しい顔を作り、ルシルに問い詰めた。

「こんなことって、なんのこと?」

「……全部クリスから聞いたぞ」

 と、俺は通信イヤリングを取り出した。その時のルシルの顔は――とても辛そうで、そして悲しそうだった。

 なんでそんな顔をするんだよ、ルシル。

 理由を聞かせてくれ。

 俺はルシルにそんな顔をさせたくないから、今日まで頑張ってきたんだぞ。

私事で恐縮ですが、明日富士見ファンタジア文庫様より

「ガチャにゆだねる異世界廃人生活」が発売します。


欄外でも報告していますが、そちらの宣伝もあと一週間くらいしたら消しますのでご了承ください。

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