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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode14 贖罪の村

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ルシルの返事

 竜殺石を使ってできる72財宝はグラムだけだったけれど、他にも竜殺し武器シリーズがいくつかできた。

 まぁ、竜殺しの槍なんてできても、俺は槍を使うことができないし、かといってこれをフリーマーケットで売るにしても、この槍は高性能過ぎる武器なのでできれば市場に流通させたくない。

 暫くはアイテムバッグの肥やしだな。

 グラムはクリスに使わせるか。初期設定ではなんとなく語感が似ているってだけでグラムをクリスに使わせる予定だったんだし。

「ねぇ、コーマ、初期設定って何?」

「ただのメタ発言だ。あまり地の文を読むな」

 銀鉱石が掘れることが村に知れ渡り、本格的に鉱山作りがはじまった。ルシルに調べて貰ったところ、俺が掘り当てた竜殺石の他にはレアな鉱石は存在しないらしいが、銀鉱石は、最低でも200年は枯渇しない埋蔵量を誇るという。

 俺も手伝おうかと思ったが、俺の穴掘りは自己流かつ邪道なんで、そのあたりは村人たちに任せることにした。

 人員を増やす手続きもしているようだ。近くの町に手紙を送ったらしい。ちなみに、手紙は伝書鳩を使っているらしい。

 数年先には立派な鉱山町ができるんじゃないだろうか?

 十羽放ったので、五羽ほどは目的の町に着くだろう。


   ※※※


「やっと俺たちの家ができたな」

 開拓村生活七日目。

 ついに村人全員分の家を作り終えた俺は、自分の家を完成させた。

 ルシルは氷室に保管するための氷を作ったり、回復魔法で怪我をした人や家畜の治療をする役目を担っているし、俺は畑を耕したりしている。

 本当に牧歌的な、それでいて平和な毎日だ。

 例えば昨日は、果物が豊富なのと、とても甘い樹液が出る木があるので、樹液からメープルシロップを作ることにした。ちなみに、樹液の採取方法は、夜明け前に森に入り、樹液が出る木に穴を開ける。その穴にパイプを突き刺し、そのパイプの先端の下にバケツを置く。昼になると木は水を吸い上げ、それに伴いパイプから樹液が溢れ、バケツにたまっていく。

 昼前にはバケツ一杯になったので、ルシルに頼んで回復魔法で木の穴を塞いでもらい、俺はバケツを持って帰宅。

 それを煮詰めることでメイプルシロップが完成するというわけだ。ただし、量は数十分の一――それこそバケツ一杯が小瓶一本分のメイプルシロップにしかならないのには俺も驚いた。

 村で取れた小麦粉と牛乳を使ってホットケーキを作り、果物を乗せてメープルシロップをかけて食べるととても美味しい。村人たちにおすそ分けをしたら、かなりの好評だった。

 とまぁ、本当に甘い物を食べるくらいしか娯楽はないんだけど、幸い、俺のアイテムバッグの中にはまだ読んでいない本が大量にあるから、退屈はしなかった。


 今日も自分の家の厨房でホットケーキを焼くことに。

 ちなみに、魔力コンロではなく、かまどを使っている。この大陸では魔石はかなり貴重らしく、魔石を使う魔道具はほとんどない。

 んー、アイテムクリエイトを使わずに牛乳から生クリームを作れないかな。確か、遠心分離機がないと作れないはずなんだけど、アイテムクリエイトを使わずに遠心分離機を作ることは俺にはできない。

 自分たちで使う分くらいはアイテムクリエイトを使ってもいいかな。

 そんなくだらないと自分でも思ってしまう葛藤をしていると

「ルシル、クリスや他のみんなたちから連絡は来ないのか?」

「来てないわよ」

「そうか。一応、こっちから連絡を入れておきたいんだが、通信イヤリングを借りてもいいか?」

「ごめん、ちょっと調整に手間取っていているからできれば使ってほしくないのよね。また今度でいいかしら?」

「ん……そうか。まぁ、別に用事ってわけじゃないからいいか」

 ルシルも昼間は村の仕事を手伝ってくれているから、通信イヤリングの調整の時間が作れないのかもしれないな。

 クリスの奴が連絡をしてこないのも別に珍しいことではないし、フーカも一緒だから問題ないだろう。

「ルシル、今日の分のホットケーキできたぞ」

「ありがとう」

 食事の必要のないルシルも、甘い物は別腹(意味は違うけど)。喜んで食べてくれる。

 ナイフとフォークを使って一口サイズに切り分け、ルシルは自分の口にメイプルシロップがたっぷりとかかったホットケーキを運ぶ。

「うん、美味しい。アイテムクリエイトを使わずに手作りで作ったお菓子のほうが絶対に美味しいわね」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

「コーマって、本当に私のことが好きなのね」

 ニヤニヤとした顔でルシルが言った。

 ……自分で好きだって言う分には構わないけど、ルシルに言われると照れるな。

「悪いかよ」

「別に悪くないけど、ねぇ、コーマ。私のどこが好きなの?」

「……言わないとダメか?」

 俺が尋ねると、ルシルは黙って頷いた。

 これ、一体なんの罰ゲームなんだ?

 私のどこが好き? って聞いてくる彼女がいるというのは噂のレベルで知っていたけれど、俺とルシルは付き合ってもいないんだが。

「……俺のために泣いてくれただろ?」

 俺の中のルシファーを封印したとき、ルシルは泣いた。

 そのせいで自分もその力の大半を失い、さらには住んでいた家までも無くなったというのに、俺を元に戻すことができなくなった、俺を日本に戻すという約束が守れなくなったとルシルは泣いた。

 あの時、俺はルシルのために生きると決めた。ルシルのために死ぬと誓った。

「それだけ?」

「いろいろと理由はあるし、好きという感情に理由付けをすること自体ナンセンスだと思うけれど、理由をあげるとしたらそれが一番だ」

 そう言って、ホットケーキを口に入れる。

 せっかく上手くできたホットケーキなのに、味をほとんど感じない。

「ふぅん」

 ルシルはそう言ってホットケーキを食べ、とても自然に言った。

「じゃあ、結婚しましょうか」

「ああ、できるならしたいよ」

 と呟き、ルシルのその言葉を聞いて俺はホットケーキを碌に噛まずに飲み込んでしまった。それが器官に入ってしまい、一次呼吸困難に陥る。

「げほっ、げほっ、ごほっ」

「ちょ、コーマ。大丈夫?」

「大丈夫だ。ルシル、今、なんて言った?」

「コーマが結婚したいって言うなら、いいわよ? 結婚しても」

 どうやら、俺は現在異世界に迷い込んでしまったようだ。

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