蘇る剣
近くの山をツルハシで掘り進めることにした。
ドリルを使わずに掘るのはやっぱり苦労するけれど、幸い、うちには優秀なダウジングマシーンがいるからな。
ルシルが地質調査を行った結果、ここを掘り進めたら貴重な鉱石が眠っているという結果が出た。
「村の裏山が鉱山になる……か。それが本当ならそれほど嬉しいことはないけれどね。元々、我々開拓団の最初の目的は新たな資源の確保だからね」
周辺地域の調査をしていた開拓村の若い――といっても俺よりは年上の二十歳くらいの男がそんなことを言った。
新たな資源か。確かにそれは俺も望むべきだ。
「コーマの馬鹿力なら、あっという間に掘れるだろ?」
「馬鹿力って言うな。まぁ、やってみるけどな」
むしろ、本気で力を入れたらツルハシのほうが壊れてしまうからな。手加減しないといけない。
これはただの鉄のツルハシだからな。
暫く掘り進め、掘った屑石を外に出す作業を繰り返す。アイテムバッグも極力使わない。
掘った穴が崩れないか確認しながら、さらに掘り進める。
「ただの石だけだな。本当にこんなところにレアメタルがあるのかな」
男が文句を言いながら、俺が掘った屑石を運ぶ。
「明かり!」
光魔法を使って光の球を生み出した。これで薄暗い穴の中でも効率的に仕事ができる。
そして――
「あぁ……鉱石ってこれか」
と、俺は掘り当てた鉱石の塊を男に見せた。
「おぉ、本当にあったのか。で、これ、なんて鉱石なんだ?」
男はニヤニヤと笑いながら、鉱石を受け取る。
「これはな……」
俺はこの鉱石について説明した。
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銀鉱石【素材】 レア:★★★
不純物を多く含んだ銀の鉱石。
銀に加工すれば価値があるため、高値で取引される。
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と、鑑定の結果通りに。
もちろん、俺は既に鑑定済みのアイテムなので図鑑に埋まることもない。
「貴重な金属って言うから、もっと珍しい金属が出るかと思ったんだが……ないもんかな、隕鉄とか……ん? どうした?」
何か落ちた音がしたと思ったら、男が銀鉱石を落として固まっていた。かと思えば、慌てて銀鉱石を拾い上げ、俺に対して怒鳴りつけた。
「おまっ、バカっ! 純銀って言えば貴金属だろうが! 銀貨の素材にもなるんだぞ!」
「……あぁ、そうかそうか。でも、掘った先を見てみると、かなりの銀鉱石が掘れるみたいだぞ」
「本当か!?」
そう言えば銀は貴重だよな、うん。
すっかり忘れていた。
とりあえず、俺たちは穴を出た。そして、入口の前で待機しているルシルと顔を合わせた。
「ルシル、銀鉱石が出たぞ。お前の手柄だな」
「銀鉱石? 何それ、屑鉱石じゃない」
……俺と同じことを言いやがった。
そして、俺と一緒に穴を掘っていた男は、
「コーマさん、ルシルさん、俺、村のみんなに銀鉱石の鉱脈が見つかったことを伝えてきますね」
と言って、銀鉱石を大事そうに抱えて村まで走っていった。
今回もルシルの手柄だな。そう思ったら、
「ねぇ、コーマ。本当に銀鉱石しかなかったの?」
「ん? あぁ、銀鉱石だったぞ」
「変ね……銀鉱石よりももっとすごい石の反応があったのに」
ルシルが思案顔で考える。
「え? もっとすごいって?」
……もしかして、もっとすごい何かがこの先に?
ルシルが間違うわけない。
俺はドリルを取り出し、銀鉱石を砕いてさらに掘り進めていく。
そして、それを見つけた。
「ルシルが言っていた反応はこれだったのか」
俺は掘り当てたその石を見た。
そう言えば、ブンドから貰った七十二財宝の武器を作るために必要な希少な鉱物の一覧のひとつが極東大陸にあるって書いてあった。あの事件のせいですっかり抜け落ちていたが。
「これで、あの剣が作れる」
俺は石を鑑定し、呟くようにいった。
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竜殺石【素材】 レア:★×8
かつて竜を封印するために作られたという石。
これを使って作られた武器は竜に対して強い特性を持つ。
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「アイテムクリエイト!」
俺が魔法を唱えると、手の中に剣が現れた。
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竜殺しの剣グラム【剣】 レア:72財宝
財宝を守る魔王竜を殺すために作られた剣。
ミスリルをも軽く切り裂く最強の剣。
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ミスリルをも軽く切り裂く最強の剣。
それがようやくこの手に戻ってきた。




