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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode14 贖罪の村

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俺たちの物語はこれからだ

 開拓村生活二日目。

 さすがに全員、天国から帰宅したようで、ほとんどの村人は農作業や狩りに出かけたり、女性たちは裁縫などをしているらしい。クリスとフーカも狩りに向かったようだ。

 俺はそこまで熱心ではないので、早朝の散歩をさせてもらうことにした。

 すると、昨日俺たちと最初に出会ったおっさんに、今朝も最初に出会った。彼はこの開拓村のリーダー的存在でもあるらしい。

「おや、コーマさん。昨日はとても美味しい物をありがとうございました。あの味――思い出しただけでも――ふあぁぁぁぁ――そこにいるのは、先日死んだおふくろ――」

「はいはい、帰ってきてくれ」

「おっと、失礼。あれから魂が抜けやすくなっていましてな」

「俺の料理にそこまでの副作用はない……はずだ」

 すぐ近くに、魔竜を石化させるような料理を作る者がいるから、自信を持って言えない。

 少なくとも、彼女の料理遺伝子の半分は、俺の体の中に封印されているルシファーのものなのだろうから。

「あれから、村の者がコーマさんの仰った方法で料理を行ったところ、いやはや、あそこまで美味しい食材とはおもってもいませんでした。勿論、コーマさんの料理には遠く及びませんが」

「俺の場合は料理スキルによる効果もあるからな。あと、美味しいからって言って狩りすぎるんじゃないぞ。生態系が崩れるからな。いくら魔物とはいえ」

「あ、いえ。あのワニは魔物ではありませんよ」

「魔物じゃない? あぁ、そういえば倒しても肉は残っていたもんな」

 魔物は倒せば消滅し、ドロップアイテムを落とす。

「極東大陸は、東大陸や西大陸よりもはるかに魔物の数が少ないのです。私自身、この大陸に来てから遭遇していません。おかげで我々も狩りが楽で助かります」

「魔物がいないのか? そんな場所があったのか」

「……不思議なことじゃないでしょ?」

 そう言って現れたのは、ルシルだった。

 ルシルは睡眠の必要がないので、今朝から辺りを散歩していた。

「おじさん、これありがとう。面白かったわ」

 彼女はそう言って、男に渡したのはこのあたりの地図だった。

「いえいえ。ルシルさんにはうちの村人全員が感謝しています。怪我人も家畜たちも全員治療してもらいましたから」

 彼はそう言って頭を下げると、

「それでは私は仕事があるので失礼します。何か困ったことがあったら仰ってください――と、実際に困ったことを申して助けていただいているのは私でしたな」

 と笑って、畑のある方角に向かった。

 ふたりきりになった俺は、ルシルに早速質問をぶつける。

「それで、ルシル。なんでこの極東大陸には魔物はいないんだ?」

「この極東大陸には迷宮がないからよ。迷宮の瘴気は集まる。だから迷宮に魔物が発生する。でも、迷宮はラビスシティー以外の場所にもあって、そっちにも瘴気が集まってしまう。その結果、瘴気の坩堝のような場所がいくつも発生するの。ベリアルが各国のリーダーたちに、ラビスシティー以外の迷宮を潰させている表向きの理由はそうなっていたわよね」

「そう言えばそうだったな。あれ? でも西大陸にも迷宮はなかっただろ?」

「大きな迷宮があったじゃない」

 大きな迷宮?

 そんなものあっただろか?

 地下の迷宮といえば、アークラーンの王宮からの脱出路と、ウィンドポーンからアクアチャイルドに続いていた地下水道くらいしか思い浮かばない。

 地下に続く迷宮は――

「そうか、バベルの塔か」

「バベルの塔は人造迷宮だけど、あれも立派な迷宮よ。あのグラッドストーンって教皇、闇の神子がバベルの塔を建設するよりも遥か以前に迷宮としての機能を利用して何かしようとしていたんじゃないかしら?」

「……あぁ、その可能性はあるな」

 いや、きっとそうなのだろう。

 でも、何をしようとしていたのかはわからない。

 世の中、わからないことだらけだ。

「……ルシル、わからないことをわかるにはどうしたらいいんだ?」

「そうね、クリスを見習えばいいんじゃないかしら?」

「どういうことだ? クリス(バカ)クリス(バカ)なりに学ぼうとしているってことか?」

「そうじゃないわよ」

 ルシルがそう言うと、村の入り口から獲物を捕まえたクリスとフーカが帰ってきた。

 今度は大きな虎を持っていて、笑顔で大きく手を振っていた。

「何も知らなくても楽しく過ごせるってことよ。それでいいんじゃないかしら。少なくともここなら」

「……それでいいのか」

「伏線回収なんて全部しようと思わなくてもいいのよ。伏線は半分以上残っているほうが物語に余韻が生まれるんだから」

「……それでいいのか?」

「いっそのこと、コーマも言ってみたら? 俺たちの物語はこれからだ! って」

「それは打ち切りのパターンだろ……はぁ、でも本当にそう思えたらきっと楽なんだろうな」


 俺はラビスシティーから遠く離れた村でそのことに気付いた。

 ここには何もないけれど、いろいろなことを知ることができた。

 結局、七十二財宝は全部集まっていないし、ベリアルと直接対決もできていないし、名もなき天使に関する謎はほとんど解決していないけれど。きっと俺はここからいろいろと解決していくんだろうな。そして、解決していくたびに新たな謎が生まれるのだろう。


 俺たちの物語はこれからか……そうだよな。


「俺たちの物語はこれからだ!」


 俺がそう叫んだ時――何かが変わった気がした。

 しかし、変化は必ずしもいい方向に進むとは限らない。

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