転移陣を使って極東大陸へ
前回、東大陸に行くと言っていましたが、東大陸はラビスシティーなどのある大陸のことだったので、極東大陸に置き換えました。
極東大陸には定期船もなければ、ろくな航路さえも存在しない。
開拓民を乗せた船が不定期で東へと移るが、無事に極東大陸に着岸するのは八割程度だという。つまり二割は無事には着かない。しかも順調に進んでも片道二カ月の道のりだそうで、そんな船に乗りたくないと思っていたのだが、クリスは笑って言った。
「その心配はいりません。サイモンさんに聞いていたんですよ」
と、俺たちはリーリウム王国南、大森林に隠された遺跡へとやってきたわけだ。
なんでも、この遺跡には様々な場所への転移陣があるらしく、それを使ったら一瞬にして極東大陸に行ける、と言ったのだ。
「で、それはどこにあるんだ?」
「あっちが西大陸への転移陣らしいですから、こっちですよっ!」
とクリスが自信満々に言うので、彼女についていった結果、
「こっちです」
「あ、たぶんこっちですね」
「……こっちかな」
「…………こっちですよね?」
「……………………どっち?」
俺たちは迷った。
そもそも、この遺跡は広すぎる。迷宮並みに広い。それだけでなく、人を迷わせるように造られている。
「どうしましょう、コーマさん、ルシルちゃん。帰る道もわかりません」
涙と鼻水を流すクリスを見て、俺は頭を抱えた。
帰り道はわからなくても最悪持ち運び転移陣を使えばいいだけだ。でも、帰ったところで極東大陸に行く手段がない。
「ルシル、なんとなるか?」
「……はぁ、仕方ないわね」
ルシルは諦めるようにそう言うと、俺のアイテムバッグに手を突っ込んだ。
そして――小さな砂時計を取り出した。
青い砂の入っている砂時計で、完全に砂が落ちるのに一分かかる。
「時間でも計るのか? それなら、砂時計より懐中時計のほうがいいと思うけど」
「いいのよ、これで」
「そうか? でもその砂、綺麗だろ。細工スキルの具合を見る時に試しに作ってみたんだ。アウイナイトっていう宝石―ーといっても形の悪い奴だけどな」
それでも砂時計一本分ともなると金貨30枚は必要だった。
アウイナイトはラピスラズリの中でも特に貴重な宝石で、ラピスラズリの中でももっとも美しい宝石だと言われている。その希少性はダイヤモンドよりもはるかに高い。
「それを砂状になるまで砕いて入れたんだ。アイテムクリエイトだと普通の砂時計しかできないが、それはまさしく一品もので、実はペンダントにしてルシルにプレゼントしようと思って――」
ルシルはその砂時計をそのままフルスイングして壁に叩きつけた。
「ってルシル! 何をするんだよっ!」
「中のラピスラズリの砂が欲しかったのよ」
そうか、それなら仕方ない――ってならないよ。
砂時計の部分は三時間くらいかかったんだぞ。細かい細工も施していたのに。
「でもさすがはコーマね。こんなに形の整ったラピスラズリの砂を見るのははじめてよ」
「……まぁ、砂時計に使うからには大きさは整えないとな」
俺も相当単純なもので、ちょっとルシルに褒められて普通にまぁいいかと思ってしまった。
それで、ルシルは落ちた砂に何か魔法をかける。
すると、アウイナイトは宙を浮かび、流れるように進んでいった。
「この先に転移陣があるみたいね。いくわよ、コーマ、クリス」
そうして、俺たちはアウイナイトの砂に導かれて東大陸へと続く転移陣を見つけたのだった。
※※※
極東大陸が発見されたのは、今から約二十年前らしい。
これまで、大陸は西大陸と東大陸、そして雪と氷に閉ざされた北大陸だけだと言われていた。
東大陸よりさらに東に行っても永遠に広がる海しかないとも言われていた。
空が永遠に続くように、海は永遠に続くと思われているのだ。
もちろん、世界球体説も存在するらしいが、それはメジャーではないという。
「実際に見たらわかると思うんですけどね」
ルシルが映像送信器を宇宙空間に飛ばし、それによって映し出されたこの世界の姿を見たクリスは、偉そうに言っていた。こいつも世界が球体だと言われた時は笑っていたそうなのに。
それはともかく、極東大陸が発見されて二十年。
冒険者ギルドはこの極東大陸に住む原住民の人々とも交流を図ったり、村を開拓するための準備をしてきたという。
「もしかしたら、その原住民とやらは、この転移陣を使って移動したのかもな。遥か昔に」
「そうかもしれませんね」
クリスは目線を前に向けたまま同意した。
「でも、これってかなり厄介じゃないか?」
「コーマ、どうするの? 全員殺す?」
「いや、今回は侵入者は俺のようだし、さすがに殺すわけにはいかないだろ……こいつらは殺す気満々だけど」
と、俺たちは周囲を見回す。
極東大陸、現在時刻はとりあえず夜。
場所は謎の遺跡。
現在、俺たちは謎の遺跡の転移陣で、原住民らしき赤い髪の男たち三十人に囲まれていた。




