エリエールの心の刃
イシズもそうだけど、こいつもこいつで無茶をしやがる。
でも、こっちはトリックを見抜けたからといって、それで解決するというわけではない。いや、トリックがわかったからこそ、俺の悩みはさらに増す。
体の半分まで食い込んだ剣を抜くも、今回はエリエールの体に傷は残らない。
最初から彼女にダメージを与える攻撃ではなかったから。
「エリエール、お前、体の中になんてもん仕込んでやがる! 絶対使い方を間違っているだろ!」
「こうでもしないとコーマ様を止めることなんてできませんもの」
「…………それが壊れたら、お前は確実に死ぬぞ」
「それはもとより承知していますわ」
俺は自分の剣を見る。
銅の剣を作る時、水の代わりにアルティメットポーションを使えばできる剣。
鍛冶レベル10の俺だからこそ作れた剣を見る剣。
その剣を見る。
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癒しの剣【魔法剣】 レア:★×5
斬った相手の傷を癒す魔法の剣。
斬れば斬るほど回復していきます。
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斬れば斬るほど回復する剣。これを使ったため、俺の今の攻撃はエリエールを傷つけることはなかった。
そして、エリエールも同じトリックを使っている。
「お前、癒しの剣の刃を自分の体の中に埋め込んでるのか!」
「……さすがですわね、その通りですわ」
その通りですって、おいおい。思いついてもそんなことしないだろ。
剣を飲み込んだのか?
手品師みたいに?
さすがに柄は入らないだろうから、刃の部分だけ埋め込んでいるんだろう。
癒しの剣は肉体は傷つけられないが、非生命体は斬れる。
俺の癒しの剣でエリエールの体の中の癒しの剣だけを折ることは可能だ。
でも、そうすれば癒しの剣の癒しの機能が失われ、エリエールの体の中の剣がそのまま彼女の体を蝕む。
剣を取り出してから薬を使って治療しても間に合わないだろう。
それなら、無理やりエリエールの口の中に手をつっこんで剣を抜けば――って、剣がどこまで体内に入り込んでいるのかわからない。さっき斬った感覚だと、胸の当たりまで剣が入り込んでいるから、口の中では無理か。
それこそ、俺が竜化し、かつてクリスにそうしてしまった時のように、爪で直接彼女の腹を突き刺し、そして直接剣をえぐり取ったほうが彼女の生存率は上がる。
「…………くっ」
自分が情けない。人間をやめるなんて言いながら、俺はエリエールを殺さないで倒す方法を考えている。
さっきもそうだ。エリエールに致命傷を負わせないように戦っていた。彼女を殺そうと思って戦っていたら、最初から――
そう、最初からエリエールを殺す気で戦っていたら、こんな時間を
「もう考えるのはヤメだ!」
そして、俺は魔法を唱える。
「雷剣!」
かつて、蒼の迷宮で覚えたこの魔法を。
俺の癒しの剣に雷が帯びる。そして、俺はその剣の留め具を外し、刃を抜いた。
手で直接刃を握り、そして――
「行くぞ、エリエール!」
俺は竜化し、一気にエリエールの腹に突き刺した。
「…………っ! いやぁぁぁぁぁっ!」
今までにない激しい激痛がエリエールを襲っただろう。
当たり前だ。俺の雷属性の癒しの剣はエリエールにはダメージを与えず、彼女の体内の癒しの剣にのみダメージを与え、そして剣を折った。
癒しの剣は彼女の体内を傷つけるが、俺の癒しの剣がそれを癒し続ける。
そして、癒しの剣にほどこした雷が彼女の体を自由に動けなくする。
俺はそのままエリエールを部屋の外に蹴飛ばした。
「う……こ……」
意識はまだあるようだ。だが――
「体内の剣を除去するまで、剣は抜くなよ。抜いたら死ぬからな。体の痺れは数分で抜けると思う」
「こ……コーマ様、お願いです、それより先には――」
彼女はそう呟くと、そのまま雷の痺れに耐え兼ね、気を失った。
ボス扉が開く。
そして、俺はゆっくりと扉の先に向かった。
大切なものを失わないために。
それ以外の全てを失うことになっても俺は前に進む。
昨日言っていたお知らせですが、
「お魚から人外転生の出世魚物語 ブラックバスからいつかブラックドラゴンへ!」
が書籍化決定しました。アイテムコレクターのスピンオフ作品です。
詳しくは活動報告で。




