攻撃が通じない相手
強いな――イシズ。
というか、力の神薬を飲み続けたわけでもなければ、特別な武器を持っているわけでもない。純粋な力でこれほどまでか、カリアナのサクヤやシグレ、いや、忍頭のグンジイ以上だ。
縦横無尽に斬りかかってくるイシズさんを、俺は時には蹴飛ばし、時には剣を奪って投げ返し、時には魔法を放つのだが――
(ちっ、これも分身か)
いくら攻撃しても手ごたえがまるで感じられない。
煙のように分身が消えても、次々と分身が生まれてくる。
他に偽物を見つける方法はないか?
診察スキルも通じる。
【HP578/578 MP62/64】
MPが少し減っているのは、おそらく分身の術による消費だろうが、これだけ戦ってMPが2しか減っていないのか。
MPの回復手段がある可能性もあるので、MP切れを待つことなんてできない。
何かいい方法は――そうだ! 忍者には忍術だ。
俺はアイテムバッグに手を入れ、それを取り出した。
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鉄菱【投擲】 レア:★
鉄製の撒菱マキビシ。追手から逃げるために道にばら撒く。
持ち運び難いアイテムとしても有名。
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手に突き刺さるのもいとわずに、鉄菱を放り投げる。
いや、それだけだと数が足りない。攻撃を避けながら、俺はさらに鉄のインゴットを取り出し、アイテムクリエイトでさらに鉄菱を作り出してばらまいていく。
分身ならば、これを踏んでも怪我をしない。それを避けて動くとしたらそれが本物。
仮に全員が避けるように動くのなら、そんなゆっくり動くのなら、全員倒せる。それこそ、新たな分身が生まれる前に。
だが――イシズの分身は全員その鉄菱を普通に踏んでいる。血も出ていない。
――全員偽物!?
と思ったが、イシズの放った仕込みが刀を受け止めるが、その刀の重さは確かに本物。
全員偽物で、全員本物?
それとも、イシズが十六人に本当に煙のように分裂していて、すっかすかだから鉄菱に刺さっても平気……みたいなこと……じゃないよな。
分裂してすっかすかになるならイシズの操るカタナも軽くなるはずだ。
このカタナの重さは十六分の一の重さではないだろ。
「その程度ですか、魔王の力は」
イシズが挑発するように言ってきた。
「それはこっちの台詞だ。イシズ、お前、俺を本気で殺そうとしているのか? ただ時間を稼いでいるようにしか見えないぞ」
「ええ。私が頼まれたのは時間稼ぎだけですから」
言い切りやがった。それなら――と、俺は鉄菱を避けるように飛び、ボス扉の奥に向かった――が――
「開かない!?」
何故だ。ボス部屋が何故開かない!?
ボス部屋は魔物がない状態だと簡単に扉が開くように設定していたはずなのに。
扉に跳ね返され、俺はそのまま扉の前に着地する。
「いってぇぇぇっ!」
鉄菱が足に刺さった。
どうしてだ? なんで開かない?
「エリエール様が扉に手を加えました。この扉は私を倒すまで、こちら側からは開きません」
「まじか、そんなことされてるのか。全然知らなかった」
もしかして、通信イヤリングを封じているのもエリエールなんじゃないか?
いや、それより今はイシズを倒すことが先決だ。
でも、攻撃が通じない相手にどうしろと――
なんなんだ、これは。
こちらからの攻撃は通じないのに、相手からの攻撃は通じるなんて。
いや、少し待て。
もしかして――
と俺はあることを思いつき、それを試す。
……なるほど、そういうことか。
そりゃ剣の重さは本物だわ。
そんなトリック、俺じゃなきゃ見抜けないだろ。
「覚悟しろ、イシズ!」




