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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode13 迷宮事変

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閑話「ルシルへのプレゼント(前編)」

ちょっと締め切り前でバタバタしているので、今日と明日は、前に作った閑話になります。

ご了承ください。本編は明後日からになります。

   閑話「ルシルへのプレゼント」


……………………………………………………………………

【ルシルの生態調査、報告書】


 個体名:ルチミナ・シフィル

 学名:クッキングモンスター

 年齢:二七〇一歳?

 血液型:不明

 誕生日:不明

 身長:可変

 体重:可変

 3サイズ:可変


 座右の銘:料理は愛情。


 タタミの上で転がるのが好き。

 寝転がっているのは、とにかく動くのが面倒。

 甘い物を食べるのが好き。

 ただし、食事は必須ではない。

 トイレなどの排泄作業はしない。

 寝る必要はないのに、たまに涎を垂らして寝ている。

 料理をするのが好き。

 料理が魔物化する。

……………………………………………………………………


「……うーん」


 自作のルシル生態調査の報告書を見て、俺は嘆息を漏らす。

 ルシルにプレゼントを贈りたいと思っていた。

 だが、何を送ったらいいか? 喜ぶのはパフェだろう。俺が作ったパフェを、ルシルは絶対に喜んでくれる。特に料理スキルを駆使すれば、ルシルが泣いて喜ぶ極上スイーツが完成するだろう。

 だが、どうせなら形に残るものを送りたい。

 でも、ルシルって装飾品とかあんまり着けないんだよな。通信イヤリングは義務として着けている感じがあるし。正直、彼女の銀色の髪の毛は天女の羽衣よりも美しく、真紅の瞳が世界中のどんな宝石よりも美しいと思うし……て自分で言っていて恥ずかしくなるな。

 俺、なんだかんだ言ってルシルのことが好き過ぎるだろ。


「コーマ様。何を悩んでいらっしゃるんですか?」


 悩んで歩いていると、洗濯物を取り入れたコメットちゃんが通りがかった。


「ん? コメットちゃんか。えっと、女の子ってどんなものを貰ったら嬉しいのかな? って思ってさ」

「え!? プレゼントですか!?」


 コメットちゃんの耳がピクピク動く。


「うん。アクセサリとか装飾品はないなって思って、かといって食べ物みたいな形に残らないものよりは、形に残るものがいいかなって」

「そうですね、洋服とか……」

「洋服か……」


 そう言えば、ルシルは着たきり雀みたいなところがあるからな。

 それはいいかもしれない。


 裁縫スキルを持っているし、俺ならばルシルに合う服を作れるんじゃないか?

 よし、そうと決まれば素材集めからだ。


 ルシルの服や下着は、魔蜘蛛糸を使った高級な服だが、実はその上位の素材である魔蜘蛛虹糸という糸がある。

 まずはそれを取りに行こう。


 幸い、魔蜘蛛が大量に出現する迷宮が去年発見されたそうだし、ちょうどいい。行ってみるか。


   ※※※


「ということでクリス。今日は魔蜘蛛退治だ!」

「……はぁ……この迷宮、蜘蛛の巣だらけで嫌なんですよねぇ」

 クリスは乗り気じゃないようだ。

「あれ? クリス、この迷宮に来たことがあるのか?」

 クリスと一緒に冒険するようになってから、ほとんど一緒にいたけれど、俺はここに来るのははじめてだ。

「え? あぁ、はい。前に一度、友達と来た事があるんですよ」

「えっ!? クリスって友達いたのか!?」

「なんでそっちのほうが驚くんですか。普通にいますよ!」

「そうか。あのひとりぼっちだったクリスがなぁ」

「元ぼっちじゃないです!」

「ひとりで武器屋の親父さんに土下座していたクリスがなぁ」

「その節はお世話になりました……そして、そのことは忘れてください」

 クリスがとても嫌そうに言った。

 あんな面白いこと、そう簡単に忘れるわけないだろうに。

「でも、コーマさん。魔蜘蛛の虹糸玉はそう簡単には見つかりませんよ。私の友達もかなり苦労していたみたいですし」

 そりゃそうだろう。そう簡単に見つかる素材なら、高価な素材として扱われない。

「普通に採取する分にはな。でも、俺は別に魔物ドロップに頼らなくてもいいだろ」

「……え? どういうことですか?」

「魔蜘蛛の虹糸を吐くという魔物――アラクネを見つけ出し、糸を吐き出させ、それを使って服を作ればいいんだよ!」

 

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