封印解除第三段階
「面白いじゃねぇか。面白いじゃねぇかぁぁぁぁっ!」
ベリアルが俺に殴り掛かる。今の俺はそれを避けるとか、受け流すとか、そんなまどろっこしい真似はしない。
それを顔で受けながら、正面から受け止めながら、俺もベリアルの顏に拳を振るう。
頬骨に罅が入っていく気がする。折れているかもしれない。だが、俺の今の肉体はそれを再生する力がある。
その再生速度はベリアルをも上回る。
今度は俺からベリアルに拳を振るった。蹴りを放った。同じくらいベリアルからも反撃を喰らうが、手数が同じなら、殴られた回数が、蹴られた回数が同じなら、一撃の威力と再生能力が上回る俺の方が上だ。
そして、殴ったほうが――壊しているという感触が伝わってくる。
十分くらい続いた殴り合いは突如として終わった。
ベリアルからの反撃が無くなったのだ。その目はすでに白目になっていて、気を失っている。
無防備となったベリアルの首を目掛けて、俺は手を広げ、指を纏めて振り下ろす。
完全に息の根を止めるために。
「コーマさんっ!」
その声が、俺の手の軌道を変えた。突如として、握りこぶしへと姿を変えた手が、俺の右頬にヒットした。その衝撃が、一瞬だけ俺を――
「ルシルぅぅぅっ!」
俺を正気に戻した。
そして、彼女の名を呼んだところで、俺の姿が元に戻る。
『コーマ、おかえりなさい』
「ただいま――ルシル。結構やばかったよ」
そして、元の姿に戻った俺は自分の服を見た。
アイテムクリエイトで作った特殊な服なのに、今の戦いでボロボロになっていた。
「サンキューな、クリス。お前の声がなかったら危なかったよ」
「いえ、コーマさんがあのまま暴走しっぱなしだったら、私も危なかったですよね」
そう言うと、クリスからサランが出た。
クリスの姿が元に戻る。あいつ、結局変身しただけで全く戦わなかったな。
なんのために変身したんだよ。せめてピンチのときに変身して俺を助けてくれ。
クリスは息を漏らした。
「やっぱり変身って疲れるのか?」
俺はアルティメットポーションを飲んで、体に残った負担を少しでも減らす。竜化した後に残る疲労は、どういうわけかアルティメットポーションでも治らないのだが、受けた傷のうち、完全に回復していない部分を治療した。
「クリスも飲むか?」
そう言って、俺は真っ新のアルティメットポーション(瓶はリサイクル品だけど)を差し出す。
「いえ、私は疲れていますけど、たぶん私も薬で治る類のものではないと思いますので」
「そうか……」
俺は差し出したアルティメットを前に出したまま――のびているベリアルの口にぶっかけた。
「コーマさん、何してるんですかっ!」
「安心しろ。こいつとは何度も会っているからな。治療して、いきなり襲ってきたりしないよ」
そして、俺の予想は当たって、そして外れたのだった。
短くてすみません。
ちょっと締め切り間近なもので。




