強制融合薬
この生命強化薬は、人工的に「神薬」を作るためのプロジェクトと書いてある。神薬とは「力の神薬」「反応の神薬」「技の神薬」「魔力の神薬」という俺の知っている神薬に加え、「長寿の神薬」「知の神薬」の二種類を加えた六種類の神薬のことだ。
力の神薬は、俺がこの世界に来た次の日には作っていたアイテムである。聞いた話によると、遥か昔には神薬を含め、霊薬、超薬を作ることができる錬金術師がいたそうだが、現在は誰も作ることができないと言われている。
そのため、神薬の十分の一程度の効果しかない超薬ですら金貨八十枚相当の値がついている。
そして、実際に使った俺に言わせれば、神薬は大量にあればあるほど、その効果が高まる。
それを大量に作ることができれば、最強の軍団を作ることも容易だ。
「でも、いろいろとおかしい――」
原材料として使われているアイテムは、俺が神薬を作るのに使ったことがないアイテムばかりだ。
「やっぱり、これがリッチを産み出す薬なのか」
プロジェクトの内容によると、作った薬を生徒たちの食事に少量混ぜ、その肉体の変化を調べるとある。そして、それを主導していたのは、グリューエルとあった。
やはり、このプロジェクトで間違いないだろう。
となれば、薬を作るにはここに書かれている素材を揃えないといけない。
それさえ集まれば、きっとアイテムクリエイトで作れるはずだ。
「久しぶりに俺に相応しいミッションじゃないか。みんなで手分けして素材を探すぞ。必要なアイテムは――」
緋の血晶石。
死霊王の心臓。
魔物進化薬。
強制融合薬。
そして、強制融合薬という薬を作るのにはいくつか薬剤が必要か。
「コーマ様、薬剤庫なら見ましたよ」
「本当か? コメットちゃん、悪いがその薬剤庫まで案内してくれ。クリスとタラは緋の血晶石と死霊王の心臓を探してくれ。それに関する資料でもいい」
結局のところ、また探さないといけないわけか。
時間があればこれほど楽しいことはないのに、時間がない今はやきもきして仕方がない。
※※※
薬剤庫に俺とコメットちゃんが入った。薬剤庫の前には、当然のように残骸になった守護機械が。俺が倒したのではない。ここに来たときはすでにこうなっていた。
「コメットちゃんも……強くなったね」
「はい。力の神薬を何本も飲みましたから」
笑顔でガッツポーズをするコメットちゃん。
力の神薬を与えたのは俺だし、コメットちゃんの自衛のためにも彼女が強くなったのは嬉しいんだけど。
「どうかしました?」
「ううん、なんでもないよ」
俺は自然な笑顔を意識して(意識した時点で自然ではないんだけど)、コメットちゃんに言った。
そして、薬剤庫に入る。
「これは凄いな……思っていたのと違うけど」
薬剤庫にあったのは、薬というよりかは薬品だった。
硫酸や水酸化ナトリウムといった、化学の実験室でよく見る薬品。硫黄の結晶やアンモニア水などが置かれている。
こういう薬は逆に手に入らない。とりあえず手あたり次第にアイテムバッグに入れながらも、目的の薬を探すことにした。
「属性中和剤……これか」
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属性中和剤【薬品】 レア:★×6
相反する属性の素材を融合し、新たな属性を生み出すための薬。
使い方を誤れば大変危険な結果を生み出すことになる。
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なんかやばそうな薬だな。
水と氷を組み合わせて雪属性の魔法を覚えたり、火と雷で雷炎の魔法を覚えたりはできるのだが――相反する属性って、つまりは氷と火、光と闇の属性を融合させて新しい属性を作るってことか。
これにいくつかの薬を組み合わせて、強制融合薬を作り出した。
それを見て俺は、魔物化薬の根源を見た気がした。
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強制融合薬【薬品】 レア:★×8
複数の生命を融合させてひとつの生命へと生まれ変わらせるための薬。
片方の生命から魂を抜き取り、別の生命と融合させる。
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これって……と俺はコメットちゃんを横目で見た。彼女は見られているのに気付いていないようだ。
魂の融合って、つまり俺がコメットちゃんやタラにしたのと同じことじゃないのか?
いや、さすがに違うよな。違うと思う。
コメットちゃんには、コボルトであるグーと、人間であるコメットちゃん、ふたりの意識がしっかりとある。だが、魔物化したあの兵には、人間の頃の意識はまるで感じられない。
それはともかく、とにかく魔物化の原理はわかった。
おそらく、リッチの魂を詰め込んだ薬を飲ませ、融合することで魔物化しているんだと思う。




