歴史の闇の教員倫理
とりあえず、四人、別々の転移陣に入った。
皆にはチョークを渡した。何の変哲もないチョークで、入る転移陣にはチェックで印をつける。ちなみに、俺とコメットちゃん、タラは白いチョーク。クリスだけは赤色だ。もしも全員調べて何もでてこなかったときは、クリスが入った転移陣を調べ直すためだ。
とりあえず適当に選んで建物に入る。
「中は普通の建物だな」
浮遊感はない。本当に空の上なのだろうか?
窓があったので鍵を外し、窓を開けて外を見てみることにした。
見下ろすと、地上が見える。俺たちが入って来た転移陣が米粒よりも小さいように見えた。今の俺なら、ここから落ちたら死ぬんだろうか? それとも無事なのだろうか?
流石に試す気にはなれない。たぶん、大丈夫だと思うけど。
時間はあまりないが、見落としが一番困るからな。俺は一番端の部屋に入った。
「……教室か」
黒板はないが、椅子とテーブルは多い。
先生が言ったことをメモするのが、この学園の授業の形だったのだろうか?
保存状態はとてもいい。とてもではないが、数百年前の廃墟だとは思えない。
テーブルの中を見ると、一冊の本が出てきた。
教科書のようだ。中を見ると、魔物の内臓の絵などが描かれている。
もしかしたら魔物化因子に関係あるのかと思って見てみたが、ただの生物の教科書のようだ。とりあえずアイテムバッグに入れておく。
他の机の中も見て回ったが、やはり生徒が使う教科書やノート、筆記用具などが時々入っていたが、重要な書類はない。
「……ラブレターか」
白い封筒があったので、中を見てみたのだが、中身は恋文だった。女性から男性に送ったラブレター。渡した後か渡す前のものかはわからないが、この手紙の持ち主は、もうこの世にはいないのだろう。ベリアルの実験材料になったのだから。
やるせない気持ちになりながらも俺は教室を出て、次の部屋へと向かった。
一階は全て教室で、ろくな手掛かりはなかった。
階段を上って二階に行く途中の踊り場で館内見取り図を見つけた。やはり、一階は全て教室で、二階が教職員用の個室。三階が資料室と倉庫になっているらしい。
これはどちらも見て回らないといけないな。
ということで、俺は二階に。だが、部屋には鍵が掛かっていた。ノブがまわらない。仕方がないので、力づくで扉をこじ開けた。
原始的な扉の開け方だと自分でも思いながら、最初の部屋に入る。
「まるでワンルームマンションみたいだな」
部屋の中はベッドと本棚、そして台所にシンクまである。
シンクにあるボタンを押してみると、蛇口から水が出てきた。
凄いな、こんな技術があったなんて。ベッドも低反発の素材が使われている。俺がフリーマーケットの従業員用に作った部屋と比べても遜色がない。
「さて、こういう場合、日記とかがあったら一番いいんだけどな。かゆうまないか? かゆうま」
にわか知識でゲームの有名な言葉を言いながら、日記を探した。
が、あったのは、ゴーレム作成用の資料だった。これはマネット行きだな、とアイテムバッグに入れたら、ふと棚の底がおかしいことに気付く。
「上げ底……もしかして」
と思い、罠が無いかを調べながら、慎重に底を持ち上げる。
すると、そこにあったのは、一冊の女性の姿が写実的に描かれた本――エロ本だった。
エロ本を床にたたきつける。
この部屋の教師はクズだと思って、となりの部屋に行った。
となりの部屋の本棚にはエロ本しかなかった。
ふざけている。教員を神聖視することはないが、教員倫理規定くらいは用意した方がいいと思う。
いや、たまたま、ふたりの教師がむっつりスケベとオープンスケベだけだったのかもしれない。他の教師は実はまともだという可能性もある。
そう思い、隣の部屋を見たら――
裸体の女性の人形が大量に置かれていた。
きっと美術教師の部屋だな。これはデッサン用に違いない、なんて思うことは俺にはできない。ここの教師は全員おかしい。
結局、何も成果が上がらないまま、俺は三階に行った。この調子だと、三階の資料室もエロ本で埋め尽くされているのではないだろうか?
そう思って階段を登ったら、それと目があった。
全身鎧を着ている男――だがHPが見えないから、生物ではない――がこちらを見ていた。どうやら、守護機械の登場のようだ。
「守護機械に守らせるくらいの資料か――もしかして、当たりじゃないか?」
もしも守護機械に守らせているのがエロ本だったとするのなら、俺は迷わずこの建物を破壊しよう。
こんなものを歴史の真実にしてはいけないと心から思った。




