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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode13 迷宮事変

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謎の大穴

 謎の迷宮。転移陣は元に戻る様子はありません。

 ここがどこかもわかりません。


「仕方ありません。とりあえず、歩きましょう」


 誰に言うでもなく、自分を鼓舞するために私は呟きました。

 シンプルな迷宮ですし、魔物の気配もありません。それに、迷宮だというのなら、十中八九、ラビスシティーにある迷宮でしょうから、上へ、上へと登っていけばきっとラビスシティーに出るはずです。もしもラビスシティーの迷宮じゃないのなら……その時はその時です。


 どっちにせよ、地上に出ましょう。

 そう思って歩いたのですが――私が見つけたのは深い穴でした。


「凄い……どこまで続いているんだろ」


 とても大きく、ユグドラシルが一本そのまま入るくらいです。さらにそれが深いんです。底が見えない深い穴。迷宮の穴なので穴の中も当然光っているのですが。


「そういえば、ルシルちゃんにこの世界を見せてもらったことがありましたよね」


 世界は球の姿をしている。普通に考えたら横にいる人は落ちちゃうんじゃないか? なんて思うんですけど、なんでも引力だとか重力だとかそういう力のおかげで落ちないそうです。

 だとすれば、この穴は星の向こう側にまで通じているんじゃないでしょうか?


 もしもそうなら、新たな移動手段として使われることになるでしょうね。


 私はアイテムバッグから、コーマさんが前に作ってくれた串団子を取り出します。

 そして、そのうちのふたつを食べ、ひとつを手に取り――団子に開いた穴を覗きこみます。

 まぁ、小さな穴なんで、コーマさんが作った望遠鏡みたいにはいかないんですけど、でも確かに穴の向こう側は見えます。


「まぁ、そんなわけないですよね」


 私は「あはは」と笑って、残りの一個の団子を食べようとし――目が合いました。


「え?」


 そこにいたのは、一匹のスライムです。

 コーマさんのところのスライムと違い、とても弱そうで、気配も希薄だったのでこんなに近付いてきても気付きませんでした。


「もしかして、これが欲しいんですか?」


 私がそう尋ねたら、スライムはぷにぷにと震えます。

 あ、このパターンはあれですよね。

 前に、コーマさんがアンちゃんに話してあげていた物語がありました。


 確か、王都の人々がオーガに群れに苦しめられているという話を聞き、桃から生まれたヒーローの剣士がオーガ島にオーガ退治をする話でした。

 なんで王都で暴れているオーガ退治に、オーガ島に行く必要があるのかはわかりませんが、確か、その時、桃から生まれたヒーローは、フェンリル、キングコング、コカトリスを仲間にしたそうです。剣士なのにモンスターテイマーなんですよね。

 それはともかく、その時、魔物を仲間にするために使ったのが、キビダンゴという御団子だそうです。


「このお団子が欲しいんですか? 私と一緒に迷宮から出るというのならあげますよ」


 私が尋ねたら、スライムはぷにぷにと震えました。

 これはきっと「わかりました」ということでしょうね。

 ということで、私は最後の団子をスライムに渡しました。

 スライムの中に取り込まれる団子。


「ふふふ、これで私もモンスターテイマーの仲間入りですね」


 ふと、友達のエルフの女の子と、その従魔の可愛いドラゴンの顏が思い浮かびました。彼女みたいな立派なモンスターテイマーにはなれそうにありませんが、それでも今度会った時はモンスターテイマーとしてのお話をしてもいいですね。

 あ、この子の名前を何にしましょうか? コーマさんのお話にちなんで、モモちゃんにしましょうかね?

 そう思ったら、スライムは団子を体の中にいれたまま、穴の中に飛び込んでしまいました。


「モモちゃぁん!」


 ……モモちゃん、全く私の言っている言葉を理解していなかったようです。

 でも、本当に何の迷いもなく、穴に入りましたね。


 モモちゃんの無事を祈って、登り階段を探すために歩きました。

 それから何時間が経過したでしょうか?

 30階くらい上がりました。

 そこで、不思議な場所を見つけたのです。


 階段の上が平らな石で塞がっています。

 迷宮の天井ではない、普通の石です。


「これは壊さないといけないようですね」


 一応、この階層は見て回りましたが、他に階段なんてありません。

 どうやら、これを叩き割って進むしかないようですね。

 迷宮の壁じゃないのなら、私の拳で叩き割れます。


「よし、じゃあ行きますね」


 拳に力を込めて、私はそれを振り上げました。

 すると――音を立てて天井にひびがはいり、


「……あれ?」


 水滴が頬を撫で――


「もしかして……」


 罅が広がっていき、その罅から水が溢れてきます。

 大量の水が落ちてきました。


  ~コーマside~


 はぁ……どうしたものか。

 このまま放っておけば魔物化する兵が1000人。俺とルシル、ゴブカリと接触しても魔物化する。

 とりあえず、俺が今できることは、配下の魔物たちに兵たちをある程度牽制させながら、迷宮の奥へと誘導することだ。


 魔物化したときに彼等が浅い階層にいたら、普通に迷宮攻略に来ている冒険者たちまで巻き込まれる。下手に迷宮から町の中に逃げ出せば大変な目にあう。


 ……覚悟をきめないといけないな。


 一番確実な方法は、魔物化する可能性のある兵1000人を、魔物化する前に皆殺しにすることだ。

 俺は直接手を出せないため、スライムたちに任せることになるだろう。

 一度魔物化すれば、それを退治するために俺が竜化して出向かなければいけない。そうすれば他のサイルマル王国の兵まで魔物化してしまい、リーリウム王国の兵にまで被害が出る。

 でも、ここでスライムたちが兵を虐殺すれば、この迷宮は危険だと認知され、冒険者ギルドの管理下から外される可能性がある。そうなったら、これまで冒険者ギルドが――ユーリが守り続けた町や迷宮の在り方が変わってしまう。


 今はメディーナとルシルが魔物化因子の除去方法を見つけることに頼るしかないのだが、待てば待つほど制限時間はなくなる。

 早くしてくれ。


 そう思った時だ。

 通信イヤリングが震えた。ルシルからだ。


「ルシル、どうした!? 魔物化因子の除去方法がわかったのか?」

『まだよ。それどころじゃない。マネットが設置したセンサーに反応があったわ。畑のほうに侵入者よ』

「……わかった。ルシル、竜化第一段階まで頼む」


 俺がそう言うと、俺の中の破壊衝動が膨れ上がる。 

 焦りのせいか、破壊衝動がなかなか抑えきれていない。

 制御率は90%らしい。最近99%をキープしていたのに。

 相手を殺すかどうかで悩んでいるせいだろう。その悩みが、破壊衝動へと誘おうとしている。


 どうやってここまでやってきたかはわからないが、侵入者はただものじゃないだろう。

 もしかしたら、魔物化しているサイルマル王国の兵かもしれない。


 そう思って、俺は一瞬で畑にいったのだが、そこで俺が見たのは――


「なんで……お前がそんなところにいるんだ?」


 水汲み場があった(何故か今は完全に干上がっている)場所で、濡れネズミとなっているクリスであった。

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