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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode13 迷宮事変

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入り込む侵略者たち

 ラビスシティーは異様な光景に包まれていた。

 南の門からリーリウムの軍が、西の門からサイルマル王国の軍が四列になって、ラビスシティーの中央を目指している。

 その数は計2000人。

 小さな子供が軍の列の前に飛び出そうとして、子供のお母さんらしき人に抱えられて、通りの端まで引っ張られている。前回、大陸中の首脳陣が集まったときも似た雰囲気があったけれど、あの時は戒厳令が敷かれ、外出禁止が言い渡されたから、逆にここまで混乱が起きることはなかった。

 そんな混乱の中だから、当然、町の人たちは空を注視することはできないので、誰も気付いていないだろう。

 空にいつも以上に鳥が舞っていることに。

 そして、その鳥が、実は玩具だということに。


……………………………………………………

魔法模型(鳥)【魔道具】 レア:★★★★


鳥の形をした魔法模型。命令した場所を飛ぶ。

稼働時間は3日。魔力の補給か魔石の交換で再度飛び立つ。

……………………………………………………


 かつて、ゴーリキがブラッドソードに操られていたとき、町の中に潜む彼を探すために使った魔法模型だ。足に映像送信器を括りつけている。俺は今、魔王城からその映像を見ていた。

 町の人は緊張しているけれども、当然ながら略奪行為のようなものはない。

 そして、俺はその目当ての人物を探し、そして見つけた。


 リーリウム軍の真ん中のあたりにいるのが、近衛兵のイシズさん。こんな時までメイド服を着ている。

 サイルマル軍の先頭から三十メートルくらいの位置を歩く女性――エリエール。リーリウム王国で見た時と同じ服を着ている。まるで男装の麗人だ。


 そう思っていると、エリエールが空を見上げていた。

 ……確実にこっちに気付いている。


 エリエールの隣にいた男が声をかけたが、エリエールは男を見て、首を振った。

「なんでもない」

 とでも言ったようだ。


 先頭の兵が迷宮の転移陣の中に入っていく。

 そして、兵の大半が迷宮に入っても、11階層に仕掛けられた映像送信器から映し出される画像には、兵たちが降りてくる様子はない。

 全員が迷宮に入りきるまでまっているのだろう。


 そして――それは起きた。

 転移陣の周りに四人の男が並び、何やら術を唱えた。

 と同時に、ラビスシティーの転移陣が機能を封印されたようにその光を失った。


 ゴブカリの時と同じだ。

 ルシルから通信イヤリングで連絡が入る。


『コーマ、転移陣の機能が失われたわ。無茶するわね、迷宮の中に他の冒険者もいるのに』

「それだけ本気ってことだろ。ルシルはいつでも封印を解除できるように、解析をしてくれ」


 俺はそう言うと、嘆息を漏らす。


「15階層の転移陣が使えなくなって困惑している冒険者が多々いるようです。20階層には今のところ誰もいないようですね。13階層はどうしましょう?」

 隣でモニターの管理をしていたメディーナが声をかけた。

 13階層は部屋に入ると、アイテム、戦闘、ミッション、罰ゲームの四種類がランダムで発生し、ミッションに失敗したら11階層に強制転移。罰ゲームの中にも強制転移がある。

「……ミッションは暫く発生させなくていい。その分アイテムの出現率を増やしてやれ。迷惑をかける冒険者達への慰謝料みたいなもんだ。ただし、兵が入ったら一日くらい閉じ込める罠を発動しろ」

「かしこまりました」 


 もっとも、行軍の様子を見る限りだと、統率はとれているようだし、13階層の部屋には入らずにまっすぐ通り抜けていくだろうな。

 そして、いよいよそいつらは現れる。


 映像送信器が捉えていた。

 梯子を兵士たちがひとりひとり、順番に降りてくる様子を。

 梯子を登ろうとする冒険者がいたら、そのたびに順番を譲り、礼儀正しく振る舞っているようだ。


 映像受信器でラビスシティーの様子を見ると、転移陣の周りで、転移陣を利用しようとしている冒険者に兵が対応していた。

 この様子だと、10階層から1階層に帰ろうとする冒険者にも、適切な対応をしているのだろう。


 本当に統率がとれている。

 ただし、なんだろう。

「サイルマル王国の軍の目が、どこか焦点があっていないというか」

「催眠状態にあるようですね。完全に操っているわけではなく、深層心理に働きかけるタイプの催眠です。本人たちも操られている自覚はないはずですよ」


 メディーナが説明をした。彼女は目隠しをしているが、頭の蛇で確認しているのだろう。


「メディーナ、催眠に詳しいのか?」

「はい。メデューサは古来より呪術には詳しいので。恐らく、国王への忠誠等を刷り込まれているのでしょう」

「エリエールが催眠状態にあるかどうかわかるか?」


 もしかしたら、エリエールもベリアルに操られているのではないか?

 そう思ったのだが、


「エリエールさん、というのは、あの縦巻きヘアの女性ですね……パッと見る限り催眠状態にはないようです。エリエールさんだけじゃなく、リーリウム王国の兵も操られてはいませんね」

「そうか……メディーナ。催眠の解除は可能か?」

「解除そのものは可能だと思います。とりあえず、催眠状態にある兵のひとりを連れて来てもらえれば、その催眠を解くための香を作り、流すことで催眠状態を解除できるでしょう。あの様子を見る限り、複雑な催眠ではないでしょうから。ですが、解除できても何も変わりません」

「少なくとも、統率は乱れるんじゃないか?」

「そうですね――特別な状況下にある男女は恋に落ちやすいという話はありますけれど、恋に落ちた後、特別な状況下から脱出できたとき、その恋が冷めるまでにタイムラグがありますし、全員が恋から冷めるわけではない。それと同じ理屈です」

「とてもよくわかる喩えだな」


 忠誠心を催眠によって刷り込まれている兵、その催眠が解けても、一瞬にして忠誠が失われるわけではないということか。

 だとするのなら、完全な催眠状態にあってくれたほうが、処理は楽だった。


 そして、兵たちは動き始めた。

 地下へと続く階段へと向かって、一直線に。

今年も残すところあと5日になりました。

だからといってどうというわけでもないのですけれども。

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