【特別企画】クリスマスパーティー【後編】
いやぁ、まさか七面鳥が七羽の鳥が合体した姿で分裂して襲ってくるとは思わなかった。
でもまぁ、七面鳥全員倒して、鳥肉をGETした。
ここにはオチもなにもない。鑑定したところ、普通に高級で美味しい鳥肉らしい。
とりあえず、パーティーで使うのは一羽で十分だから、残りの六羽はゴブリンやスライムたちにあげよう。ミノタウロス? あいつらはダメだ。あんないかつい成りでも草食動物だからな。
ついでに、砂漠にあるヘビイチゴも採取した。
これでケーキを作る予定だ。
そして、魔王城に戻った俺は――その魔王城の変貌ぶりに驚いた。
まず、迷宮の明かりが全部消えていた。
え? 迷宮の明かりって消すこと可能なの?
そして、魔王城の周りは雪で覆われていた。ホワイトクリスマスだ。
そういえば、ルシルって、雪魔法を使えたんだったっけ? 一度も使ったことがないからすっかり忘れていた。
ていうか、寒すぎるだろ。氷点下何度だよ。とりあえず、耐寒ポーションを飲むか。タラにも飲ませる。
「コーマ……このパーティーの発案はお前がやったのか……」
そう言って近づいて来たのはマネットだった。
「マネット、これは一体?」
「ルシルが急に迷宮の200階層に雪を降らせたんだ」
「……そうみたいだな。まぁ、たまにはいいんじゃないか?」
「いいわけないだろ。コーマ、忘れてるかもしれないけど、僕は元々溶岩の迷宮にいたんだよ。だから、熱への耐性の機能は持っているけど、氷の耐性はないんだよ」
……あぁ、それは悪いことをした。
とりあえず、マネットには耐寒ポーションを飲ませて我慢してもらうことにした。
ルシルが料理以外のことで張り切ってるんだ。協力してやりたいじゃないか。
そう思って魔王城に向かった時、
《コーマ様、コーマ様、聞こえますか? 聞こえたら助けてください》
今度はマユの声が。どこだ? どこにいる? ていうか、この声、友好の指輪だよな? なんで?
《足下です。コーマ様の足の下に埋まってます》
「え?」
俺は慌てて雪をかく。すると、そこにいたのは、マユだった。いつものようにウォータースライムを頭からかぶっているが……そのウォータースライムが凍っていた。
《お願いします……ウォータースライムが表面から凍って……このまま完全に凍ってしまえば私、窒息してしまいます》
「うわぁぁぁぁ、お湯! お湯!」
アイテムバッグからヤカンに入ったお湯を取り出し、マユにかけた。
あまりの衝撃に、マユの下半身が魚になっている。久しぶりにみたな、人魚の姿。
「コーマ様、すみません……ありがとうございます」
「悪いな、ルシルのせいで。でも、今日だけだから我慢してくれ」
マユにも耐寒ポーションを飲ませる。
って、マユのウォータースライムが凍ってるってことは――
俺は慌ててその気配を探す。
そして、それを見つけた。
完全に凍って動けなくなっているカリーヌを。
「カリーヌぅぅぅぅっ!」
慌てて二杯目のお湯を取り出す。
「ふぁ……もう朝……?」
カリーヌが寝ぼけていた。よかった、無事のようだ。
「お兄ちゃん、聞いて。あのね、カリーヌね、きれいなお花畑を見つけたの」
「臨死体験してるじゃないか! よく無事だったな」
俺はカリーヌに抱き着いた。
ぷにぷにとした感触が俺に伝わってくる。
そして、カリーヌにも耐寒ポーションを飲ませた。
って、あとは誰だ?
ゴブカリはゴブリンの避難のためパーティーには来れないだろうし、メディーナも冒険者の監視をしているはずだ。あそこは暖房施設も一応用意しているから大丈夫だろう。とすれば、心配なのは、コメットちゃんだ。
そう思い、コメットちゃんを探すために魔王城の中に入り――そこで俺が見たのは、大量のトナカイだった。
そのトナカイの中で右往左往しているコメットちゃんがいる。
「コーマ様、ルシル様が大量にトナカイを召喚して――あちこちに粗相を――あぁ、掃除が……お願いです、助けてください!」
「ルシルぅぅぅぅっ! どこだ! ルシルぅぅぅぅっ!」
俺が叫ぶと
「コーマ、こっちよ!」
その声は魔王城の外から聞こえて来た。
そして、俺がそこで見たのは――
サンタコスを着ているルシルだった。彼女はどこからか持ってきたモミの木にクリスマス飾りをつけていた。
雪が被っていて、電飾と一緒に幻想的な雰囲気をだしている。
そして、ルシルの姿は、クリスマス飾りをつけるためか、魔力を僅かに高め、中学生くらいにまで成長している。
「……どう? 綺麗でしょ」
「あぁ、綺麗だ……っと、とっととパーティーをはじめるぞ」
俺はそう言って、雪の大地の上にテーブルと椅子を置いた。なんだろう、好きな女の子のコスプレ姿って、こんなにもドギマギするものだったんだな。そう思いながら、アイテムクリエイトで料理を作って並べた。
そして、全員で集まってパーティーが行われた。
「メリークリスマス!」
の掛け声とともに。
プレゼント交換もなければ、聖歌斉唱もない、本当に料理をたべてみんなで楽しむだけのクリスマスパーティーだったけれども、たまにはこういう平和な食事会も悪くないな。
「ねぇ、コーマ。来年もこんなクリスマス会をしましょうね」
「そうだな、それも悪くはな――」
「「「来年はやめましょう」」」
それも悪くないと思ったけど、マネットもマユもコメットちゃんも当然のように反対したのだった。
「むぅ、じゃあいいわよ。ねぇ、コーマ。クリスマスパーティーの料理はコーマに任せたけど、もうすぐお正月よね。だから、お節料理を……」
「よし、クリスマスだから、みんなにプレゼントを配るぞ!」
「ねぇ、コーマ! プレゼントよりも、今は私のお節料理の話を――」
ルシルの声は俺の耳に届くことはなく、聖なる夜は過ぎていった。
そして、それから月に一度くらいの割合でトナカイ肉が食卓に並ぶようになったのだけれども、その肉がどこから調達されたのか? それはコメットちゃんしか知らない。




