【特別企画】クリスマスパーティー【前編】
魔王城の会議室。今日も畳の上で寝そべっていたルシルは、突然奇妙な提案をしてきた。
奇妙な提案は奇妙なものなので、当然却下する。
「クリスマス? クリスマスは俺の世界の神様の生誕を祝う行事だから、俺たち魔王には関係ないぞ」
「ぽこん」
ルシルはそう言って木の棒を振り下ろした。木の棒といっても全力で殴られたら痛い。とてもではないが、ぽこんなんて効果音で済まされる衝撃ではないし、力が上がって最大HPもあがり、痛みに耐えられる体になったとはいえ、痛いのは痛い。
俺を殴ってきたルシルは、俺が世界で一番大事だと思っている対象であり、彼女のためならこの命すら惜しくはないと思っているが、それでも軽く殺意が湧いた。
「……何をする」
「コーマ、今、普通に私のクリスマス料理を食べたくないから、そんなこと言ったでしょ」
……凄い、ルシルがついに読心術を身に付けたようだ。
クリスマスといえば、クリスマスパーティー。クリスマスパーティーといえば、数々の料理。七面鳥やケーキなどが並ぶ。それらをルシルが作ったらどうなるか? 一品だけでなく、人数分の料理を作ったらどうなるか?
世界が滅びるな。
ただでさえ、現在はこの迷宮に人間の軍が攻めてくるかどうかの状態だって言うのに、迷宮を守る前に世界が滅んでしまったら元も子もない。
「別に私が料理を作るつもりはないわよ」
「そうか、よかった。世界は救われたか」
……あれ? 世界って結構簡単に滅んだり救われたりするんだな。
そう思うと、迷宮を救うなんて実はかなり簡単にできる気がしてきた。
なんだ、軍を迎え撃つ準備なんてしなくてもいいんじゃないかな?
「ってあれ? 俺がこの世界に来たのが夏休みで、あれから一年二カ月が経過したわけだから、今はクリスマスじゃないだろ? まだ十月くらいじゃないのか?」
「コーマが、鈴子って人間を日本に送ったのが4カ月半前でしょ。日本の時間が動き始めたのはそれからだから、ちょうど日本では今がちょうどクリスマスシーズンなのよ。明日がイヴなの」
「……そうだっけ?」
「そうなのよ」
そう言われたらそうなのかもしれない。
最近忙しくて、どうも時間の感覚がないな。
でも、ルシルがそう言うのなら、きっとそうなのだろう。
「じゃあ、するか。クリスマスパーティー」
「うん、しましょ! コーマ! とりあえず、料理はコーマに任せるから。ちゃんとチョコレートケーキ作ってよね」
「おいおい、クリスマスっていったらホイップクリームのケーキだろ。白なんだから……って料理以外に準備することとかあるか?」
「あるわよ。部屋の飾りつけとか、プレゼントの用意とか、衣装の用意とか」
「あぁ……そう言えば必要だな」
いつもみたいに料理を食べてバカ騒ぎ程度のイメージしかなかったけれど、考えてみればそういう雰囲気は重要だ。
「よし、わかった。料理は俺に任せろ。あとのことはルシル――本当にお前に任せてもいいのか?」
「当然よ。魔王軍元帥の力を見せてあげるわ。最高のクリスマスパーティーにしましょ!」
ルシルがやる気を出すとろくなことが起きない気がするが、でも料理には関わらないって言ってくれているからな。
それに、明日は聖なる夜だ。
愛する人のことすら信じられなくてどうする。
「あぁ、最高のクリスマスパーティーにしよう!」
俺はそう言って、ルシルの手を握った。
今日、明日、明後日はクリスマスの小話になります。ご了承ください。締め切り厳しす。




