表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode13 迷宮事変

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

581/742

古代遺跡の謎施設


 サイモンさんの後をついて歩くことさらに二時間と四十分。途中で魔物と遭遇して戦ったりもしましたが、サイモンさんは魔物と戦うことも想定していたようで、予定通りの時間(とサイモンさんは言っていますが、私は時計を持っていないので本当かどうかはわかりません)に目的の場所に到着しました。

 捨てられて何百年と経過している石造りの遺跡です。

 天井も床も壁も関係なく、苔がびっしりと生えています。

「あれ?」

 私はナイフで壁に生えた苔の一部を削りました。すると、そこには石の壁があったのですが、少し様子がおかしいです。

 というのも、壁がほんのり輝いていて、それはまるで迷宮の壁です。

「この壁は迷宮のそれとは異なる。が、その技術を用いて作られた。反永久的に光り輝くと言われた壁だったが、苔に囲まれては意味がないな」

 サイモンさんはそう言うと、魔力灯のランプの中に魔石を入れました。

「迷宮の壁の技術で作られた壁ですか?」

「あぁ、この壁ほどの完成度ではないが、クリスも見ただろう。リーリウム王国の地下で」

「……やっぱりあれも迷宮の壁の技術で作られていたんですか?」

 リーリウム王国の地下の壁。私が殴っても罅ひとつ入らなかったその壁。それも、迷宮の壁の技術だと言われたら納得です。

 でも、リーリウム王国にそんな壁を作る技術があったことは知りませんでした。

「ついてこい。中は複雑だ。迷うと出られなくなるぞ」

「はい、わかりました」

 私は小走りで先に進むサイモンさんの後に続きます。

 苔で足下が滑りやすくなっていますが、魔物の気配はありません。

「サイモンさん、この遺跡に転移陣があるんですか?」

「そうだ。この世界に存在する四つの大陸に繋がる転移陣がここに存在する」

「そんな便利なものがあるんですか?」

「あぁ。西大陸への転移陣は、大聖殿へと通じている」

「……え?」

「バベルの塔に通じる転移陣があっただろ。あの隣に鍵のかかった部屋があったのを覚えているか?」

「……はい。鍵がかかっていて、どうやっても開かないし壊せない扉がありました」

「その扉の向こうにも転移陣があり、この遺跡に通じている。闇の神子は西大陸の力と六つの宝玉を使い、バベルの塔を完成させようとした。だが、それだとエネルギーが足りなかった」

 そう言うサイモンさんはひとつの大きな部屋に入ります。

 その部屋は苔が生えておらず、迷宮特有の明かりに満ちていました。サイモンさんは魔力灯のランプを消すと、文字の書かれた壁を手でなぞります。

「俺は昔、お前の親父、そして教皇グラッドストーンと三人でこの遺跡を発見した。当時、俺は教会に所属する神学者だった」

「お父さんと知り合いなんですか?」

「古い付き合いだ。クリス、この文字を読むことはできるか?」

 そう言われて、私は壁に彫られた文字を見ます。が、それは私の知るどの文字でもありません。無言で首を横に振ると、サイモンさんは続けます。

「これはラテン文字と呼ばれる異世界の文字だそうだ。これの解読に長い期間がかかった。だが、幸い時間はあった。俺たちはこの迷宮に保存されていた不老の秘薬を飲んだからな」

「不老の秘薬!? そんなものがあったんですか!?」

「あぁ、三十粒ほどな。クリス、俺はこう見えて、三百歳を越えている。いや、俺だけではない、お前の親父もそうだった。そして、グラッドストーンもな」

 ……え?

 お父さんが三百歳を超えていた?

「グラッドストーンが教皇の地位にまで上り詰めたのも、当時の権力者にその不老の秘薬をちらつかせたからだ」

「あの……サイモンさん、それで、この壁には何が書いているんですか?」

 分からないことが多すぎます。考えるのは全部聞いてからでも遅くない、私はそう思いました。

 すると、サイモンさんは話の腰を折られたことが気に障ったのか、私を睨みつけ、そして壁を見詰めます。

「この世界の成り立ち。この遺跡が造られた目的。そして、この遺跡に封印されていた存在について書かれていた」

 サイモンさんは順番に読んでいきます。


 ひとりの天使が神に反旗を翻し、神の72の財宝を奪い、新たな世界を作った。罪を背負い、浄化されることを待っていた人々の魂とともに。

 その世界の神になろうとした天使だったが、神が遣わした三人の天使によってその身を三つに切り裂かれる。

 その切り裂かれた天使が、それぞれルシファー、ベリアル、サタンという存在になった。

 そして、残った三人の天使のうちひとりはこの世界と元の世界の狭間にその身を自ら封じ、三人に分かれたルシファーたちを逃がさぬ監視係となった。残った天使のうちのひとりは、その身を人間の姿に変え、この世界に生まれた人々の監視を行うことにした。残った天使のうちのひとつは、罪を背負いし人々の魂を浄化するために、この世界とひとつになった。


「この世界の人々は、全員罪人の魂ということなんですか?」

「そうだ。生まれながらに業を背負いし魂らしい。まぁ、どれだけ浄化されたか俺は知らないがな。案外、既に浄化は完了しているのかもしれない」

「(……サイモンさんの魂はちょっとだけ穢れている気がしますけど)」

「何か言ったか?」

「いえ、なんでもありません。続けてください」


 私が促すと、サイモンさんは続けます。


 この遺跡が造られた目的を。サイモンさんが言うには、この遺跡はバベルの塔のようなものなんだそうです。ただし、ベクトルは逆なのだとか。ルシファー、ベリアル、サタンは天使に管理されつつあるこの世界を良しとせず、さらに新たな世界への扉を開こうとした。しかし、72財宝はこの世界に来たときに失われてしまった。そこで世界中のエネルギーを集めて新たな扉を開こうとしたが、それを阻んだのは、人に姿を変えた天使だった。

 天使はこの施設の核を破壊し、二度と使えなくするため、この遺跡にその身を封印した。

 地脈に意識を介入することで、同じことが起こったとしても対処できるようにしたのだろう。


「もしも使われていたら、どうなっていたんですか?」

「少なくとも、俺たちはこうして生きてはいられないだろう。死の世界になっていたはずだ」

「天使様に感謝しないといけませんね……ってあれ? でも西大陸でも、エネルギーを使ってバベルの塔を作ってますよね? なんでバベルの塔はできたんですか?」

「その天使の封印はすでに俺が解いたからだ。それに、天使はバベルの塔を作ることは問題ないと思ったのだろう」

「どうして?」

「そんなこと俺が知るか」


 サイモンさんが一蹴しました。

 まぁ、サイモンさんが全部知っているわけではないのはわかるのですが、でも私はやはり聞くべきことが多くあります。


「サイモンさんが天使様の封印を解いたのなら、その天使様は今、どこで何をしているんですか?」


 私がそう尋ねると、サイモンさんは私の顔を見て、そして歩き出しました


「行くぞ」

「え? どこにですか?」

「お前に見せないといけないものがある」


 サイモンさんはそう言うと、さらに遺跡の奥に向かって歩き始めました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ