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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode13 迷宮事変

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サイモンの秘密

 リーリウム王国から脱出した後、私たちはコースフィールドではなく、南の大森林に入っていきます。

 エルフの森を含む、大陸最大の広さを誇る森。道なき場所を進めば生きて帰ることはできないと言われています。太陽の位置もわからず鬱蒼とした森は人の方向感覚を狂わせるには十分ですし、強い魔物も現れます。

 ですが、サイモンさんは鉄杖で現れる蝙蝠や大蛇、大蜘蛛や狼などを殴っては蹴散らしていきます。

「サイモンさんてそんなに強かったんですか? いつも私に戦わせていたのに」

「強くないと生きていけない世界だからな。当然だ」

 サイモンさんはそれだけ言って、前に進みます。

 私は既に、もう自分がどの方向に進んでいるかすらわからないのに、サイモンさんはさっさと進んでいきます。

「あの、これからどこに行くんですか?」

「遺跡だ。そこに転移陣があるからそれを使う」

「転移陣? こんな場所にもあるんですか?」

「教会の一部の人間しか知らない転移陣だ。いや、グラッドストーンが死んだ今、知っている人間は俺しかいないか」

 え? グラッドストーンって、もしかして教皇様のことでしょうか?

 なんで教皇様のことをサイモンさんが呼び捨てにしているのか、そして、教皇様とふたりの間に秘密があるのか、私にはわかりません。

「長距離で利用できる転移陣っていうのは、たいていは人間によって壊されてしまっている。どうしてだかわかるか?」

「便利だから壊す必要はないと思うんですけど――どうしてですか?」

「転移陣ほど敵に攻め込まれたときに気付きにくいものはない。特に町の中などにあったら、一瞬で町が敵に占領される恐れがある。最近だと、ダークシルドとアースチャイルドが戦争したとき、賢者の道が破壊されただろ? あれと似たようなものだ」

 サイモンさんは言った。人が恐れるのは魔物でもなければ魔王でもない。同じ人間なのだと。

 最近になって発見されたカリアナとアークラーンを繋ぐ転移陣も、いつ壊されるかわかったものじゃないとも。

「休憩するぞ」

 突然のサイモンさんの宣言に、私たちはそこで休憩することにしました。

 森の真ん中、落ち着く場所ではありませんが、考えてみれば、サイモンさんとの旅はいつもこんな感じでしたね。

 サイモンさんが何の断りもなく、私のアイテムバッグの中から食事を出して食べ始めました。

 私はまだあまりお腹が空いていないのですが、今度の休憩がいつになるのかわからないので、水とパンを取り出して、それを口へと運びます。

 コーマさんの手作りパンはとても美味しいです。

「中々旨いな。コーマが作ったのか?」

「え? あぁ、そうです。コーマさん、料理がとても得意なんですよ」

「そのようだな」

 サイモンさんが料理を褒めるのはとても珍しいことなので、少し意外でした。 

「サイモンさん、どうして私があそこに軟禁されているってわかったんですか?」

「秘密だ」

「また秘密ですか……」

 ……私と一緒に行動する人って、コーマさんといい、どうしてこうも秘密を持ちたがるのでしょうか。

 まぁ、サイモンさんの情報網って広いですからね。

 私は水を飲み――

「誰にも秘密のふたつやみっつはあるだろ」

「そうですか? 私は結構なんでもサイモンさんに話している印象がありますけど」

「コーマが魔王だってことは俺に話したか?」

 そう言われて思わず吹き出してしまいました。

 え? なんでサイモンさんがコーマさんの最大の秘密を知っているんですか?

「驚くことはない。現在、この大陸の国家首脳クラスの人間は全員がそれを知っている。あの操り人形のギルドマスターが魔王だってこともな」

 ……今の言い方だと、ユーリさんを操っているのがルルちゃんだっていうことも知っているようです。

 国家首脳が知っている秘密をサイモンさんが知っている理由は、教えないというよりかは当然のことと認識していいのでしょうね。

「別に驚くことはない。お前がこれまで知った秘密に比べれば、魔王など些事に過ぎん」

「些事って、私、そんな大切なことは知りませんよ」

「バベルの塔、天使、こことは異なる別の世界。そのどれもが、まさに数えるほどの者しか知らない秘密だよ」

「…………サイモンさんは、一体、何を知っているのですか?」

「俺は、知らなければならないところまで知っている」

 サイモンさんは私のアイテムバッグから、勝手にワインの瓶を取り出してそのコルクを指の力で抜きました。

「ワインの代金だ。ひとつだけ、俺の一番の秘密を教えてやろう」

「……本当ですか」

「俺はその昔は、教会の敬虔な信者だったんだよ」

「嘘ですよね?」

 私がそう決めつけて尋ねても、サイモンさんはそれ以上何も答えず、ワインを瓶から直接飲んでいました。

 ただ、一言、

「旨い酒だ。あの酒狂いのドワーフに売りつければよかった」

 と、いつものサイモンさんらしいセリフを言っていました。

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