七本目の剣
「ブンド、どうだ? そろそろできそうか?」
「黙ってろ」
「酒が待ってるぞ」
「わかってる」
「暇だから隣に酒蔵作っといたぞ」
「どれだけ暇なんだ!」
「酒の湧き出る泉も作っておいた」
「おま……ワシを喜び殺すつもりか……だが、黙ってろ!」
ブンドの剣製作から、すでに一カ月と二週間が経過している。
本来なら一週間でできると言われていた剣作りだが、設備不足や合金として使う金属の調達などで完成時期が延長、延長となり、今日は七度目の納期日だ。
俺も、ただ来て帰るのも勿体ないので、毎回地下深くまで穴を掘ってはミスリルやオリハルコン、ヒヒイロカネといった珍しい鉱石を持って帰らせてもらった。そのため、鉱山の下層はもはや枯渇寸前になってしまっている。
その礼に酒蔵や酒の湧き出る泉も置かせてもらった。
それにしても、ブンドには驚いた。
最初、俺が代わりに剣を打った方が早いと思っていた。俺の鍛冶レベルは10だから。
だが、ブンドもまた鍛冶スキルのレベルは10ある。さらに、銘入れ、製錬、精錬、細工等、鍛冶に関するスキルを7つ持っている。
考えてもみれば、アイテムクリエイト無しだと力の神薬を飲み続けた俺の馬鹿力で作ったエクスカリバーを、ブンドもまた作っていた。その作り方は聞いていないが、ブンドの鍛冶の技術に関しては、恐らく俺を凌駕すると思われる。
ドワーフの魔王は、鍛冶の魔王でもあったということだ。
黙っているように言われたので、今度は酒が流れる川でも作ろうかと思った。
その時だった。
「できた! できたぞ、コーマ! これがワシの求めていた七本目の剣――蛇の剣だ!」
そう言って、ブンドはそれを持ってでてきた。
蛇の剣?
なんかダサそうな名前だ……と思ってその剣を見て、俺は絶句した。
なるほど、だから蛇の剣か。
「……ブンド、鑑定をしたところ、すでに名前は存在する」
俺はブンドから剣を受け取ると、鞘から抜いた。
表面はひんやりとしていて、水滴がきらりと光っていた。
「おぉ、そう言えばコーマは鑑定スキルを持っているんだったな。なんという名前の剣なんだ?」
「草薙の剣――そう言う名前だ」
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草薙の剣【魔剣】 レア:72財宝
普段は冷気を纏うが、魔力を帯びれば紅蓮の炎を生み出す。
一振りすれば、一面の草を炎で焼き尽くすと言われる魔剣。
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俺が説明を読み上げると、
「なるほど、草を焼き尽くすから草薙の剣か……」
ブンドは納得したように言ったが、俺はこの剣について考えた。
草薙の剣は、日本書紀に登場する剣だ。詳しい内容は俺も知らなかったのだが、カリアナに残された文献にそれはあった。
俺も知っている日本の神話に登場する怪物――八岐大蛇。スサノオが十拳剣と言う剣でその怪物を倒したとき、尾から現れたと言われる剣だ。
そして、この剣の元の名は、
「天叢雲剣」
呟くように俺は言った。日本の三種の神器のひとつ。天皇にとって武力の象徴だ。確か、今でも熱田神宮に神体として保管されていると聞くが。
「天叢雲剣だと?」
「知っているのか?」
「…………その名は知っている。聞いたことがある。遥か昔の話だ」
「本当か!? いや、待ってくれ」
なんで天叢雲剣――その名をそいつは知っている?
この世界でこの剣は草薙の剣と言う名前のはずだ。草薙の剣と天叢雲剣は全く別の剣ということなのか?
それとも、俺以外の日本人がブンドに話したのか?
「誰から聞いたんだ?」
「魔王だ」
「なんて名前の魔王だ? まだ生きているのか?」
「いや、あいつは死んでしまった」
ブンドはそう言うと、
「酒を貰うぞ――」
と立ち上がって、日本酒が湧き出る泉に顔ごと突っ込んだ。
「魔王ルシファー、奴が話していたよ。もう3000年も昔の話だ。あの最凶最悪、破壊の魔王がな」




