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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode13 迷宮事変

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迷宮解放の提案

 フリーマーケットに、とりあえずプラチナ以下の鉱石や宝石で作った装備や装飾品を卸して、金貨300枚(約3億円相当)を貰って、こんなに貰っても仕方ないんだけどなと思いながら、それをアイテムバッグにしまった。俺とメイベルの長い話し合いで、フリーマーケットの販売価格の三割の値段で商品を卸すことに決まった。そして、三割は慈善団体に寄付し、約二割は税金として処理され、残りの約二割が店の利益となるそうだ。

 メイベルと商売の話を終わってから、久しぶりにクルトの修行の成果でも見ようかと思ったら、冒険者ギルドの職員が、ユーリから呼び出しがあると教えてくれたので、俺は冒険者ギルドに向かった。


「遊びに来たぞ、ユーリ」

「遊びにって、一応私は君の所属する組織のトップに位置する人間なのだが」


 ルルはあいかわらず無表情だが、ユーリは眉をピクピクさせている。本当に、どっちが人形かわからないな。


「俺はお前の部下になった覚えはないぞ。勝手にお前が言ってるだけだろ」

「何を言う、君はギルドメンバーで、私はギルドマスターだ。忘れたのか?」

「あぁ……そっちか」


 確かに魔王としてはどっちが上かは決めていないが、冒険者ギルドという組織でユーリはトップに君臨している。


「でも、ギルドというのは名目上互助組織なんだろ? 組織を纏める人間に従わなければいけない道理はないだろ」

「屁理屈もそこまで行くと清々しいな――それで、どうだった? ブンドの奴は。酒を持って行ったら話を聞いてくれただろ」

「あぁ、効果てきめんだった。これは礼だ」

「……これは?」

「オリハルコン製のレイピアだ」


 細剣だが、これもまたエクスカリバーという名前だ。本当にオリハルコン製の剣は全てエクスカリバーらしい。


「オリハルコン製――なるほど、君に彼を紹介したのは間違いではなかったようだな」

「もっと驚くと思ったんだが、むしろがっかりしていないか?」

「……あぁ、そうだな。正直に言うと、ルルが君の持ってくるお菓子の大ファンで――」

「……ルルってお前だろ。ていうかお前を操ってるのはルルだろうが」

「…………」


 ユーリが罰の悪そうな顔をする。

 俺は立ち上がり、ソファに座っているルルの前に小袋を置いた。


「新しく作った金平糖だ。まぁ食ってくれ。自信作だ」


 すると、さっきまで無表情だったルルが目を輝かせ、礼も言わずに飾り結びを解き、金平糖を一粒結んで口に入れた。


「…………っ! っ!」


 ルルが無言で足をバタバタさせる。


「とても美味しい。礼を言おう」


 そう言ったのはユーリだ。相変わらずルルは喋らないな。


「ただ、数が少ない。もっと持って来てもらえるのだろうか?」

「悪いが、金平糖は作るのに時間がかかるからな。今度は別の菓子を持って来てやるよ」

「宜しく頼む……と、そろそろ本題に入ろうか」

「ん? 用事って、ブンドのことじゃないのか?」

「いや、あれはついでだ。君の迷宮のことだよ。君の迷宮はこれまで、ゴブリン王の事件の時と勇者試験の時、二度に渡って冒険者が入り、そしてタラくん以外の全員を退けた」


 正確にはフリーマーケットに入り込んだ空き巣を飛ばして冒険させたこともあるのだが、それは言わないでおこう。


「それで、ちょっとまずいことが起きた。勇者や勇者にもっとも近い冒険者を退けるような危険な迷宮を果たして冒険者ギルドが管理できるのか? そう言われてね」

「通り魔騒ぎのときもそんなことがなかったか?」


 確か、それで魔王について調べるために蒼の迷宮に行き、俺はマユと出会ったんだったな。


「それで、俺は何をしたらいいんだ?」

「素直だな」

「まぁ、半分は俺が原因みたいだから、話くらいは聞いてやるよ」


 ユーリは魔王だが、人よりの考えの持ち主だ。ゴブリン王の時は敵対こそしたが、だからといってユーリの考えは理解できる。立場が逆だったら俺も同じことをしたかもしれない。


「君の迷宮に冒険者を入れたいと思う。正確には、君の迷宮の11階層から20階層までを、冒険者に自由に出入りできるようにしてほしい」

「……は? 勇者以外は11階層以下には潜れないんだろ?」

「その通りだ。だが、冒険者たちからも不満の声が上がっていてね。勇者という限られた人間が富を独占していると思われたらしい。それで、君の迷宮に冒険者を入れる許可を出したいと思っている」

「……つまり、俺の迷宮に冒険者を入れ、強い魔物をけしかけて冒険者を追い払って、11階層より下は危ないから入れないというギルド側の意見を押し付けたいのか?」

「それだと、君の迷宮は危ないという疑念は払拭されない」

「なら、弱い魔物を集めて無害をアピールしたらいいのか?」

「それだと、冒険者たちがさらに図に乗り、他の迷宮の解放を要求してくるだろう。ある程度、そうだな、B級クラスの冒険者なら20階層までは辿りつけるような、そうだな、19階層にミノタウロスが出現するくらいに調整してもらいたい」


 ユーリが付きつけてきた条件は


・19階層くらいにミノタウロスが出現するようにしてほしい。

・15階層に休憩ポイントを作って欲しい。

・20階層にボス部屋を作って、21階層より下には入れないようにしてほしい。

・迷宮の中にある程度アイテムなどを配置してもらいたい。


 という四つだ。


「どうだろうか? 迷宮の成長を考えると悪い話ではないと思う。もしもよければ、私の迷宮の魔物を貸し出すが」

「……いや、魔物の貸し出しは要らない。軒先を貸して母屋を取られるようなことがあったら困るからな。とりあえず、この話はうちの幹部全員で話し合わせてもらってもいいか?」

「いいだろう。ただし、期日はあまり与えられない。できることなら、一カ月後には迷宮の解放を私は望んでいる。あまり長い時間をかけられないのでな」


 一カ月か……えらい急だな。

 まぁ、俺たちならなんとかなるだろう。


「アイテムのレベルはどのくらいにしたらいい? アルティメットポーションとか配置した方がいいか?」

「ダメだ! そうだな、19階層の宝箱に、稀に銀貨50枚相当のアイテムが入っていれば十分だ」

「そんなものでいいのか……わかったよ」


 ちょっと厄介なことになりそうだ。


「あ……そうだ。ユーリ、仕事の合間でいいから、ちょっと調べて欲しいことがあるんだが」

「なんだ?」

「クリスのバカがどこに行ったのか調べておいてくれないか? 最近連絡が取れなくてな」


 決して心配しているわけではないが、このままだと借金の取り立てもできない。

 あいつが借金を踏み倒して逃げるとは思えないけれど、一応は調べておいてもらいたい。

 大切なことなので二度言うが、決して心配しているわけではない。


「勇者の個人情報を調べるのは――」


 ユーリは少し渋って来たので、俺は嘆息をついて報酬の提案をした。


「今度旨い菓子を山盛りに持ってきてやるよ」

「今度君が来る時までに調べておこう」


 うん、ユーリって、いや、ルルって思った通り単純だな。

 でも組織のトップが賄賂に弱いって、ダメじゃないか? 

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