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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode Extra03 修学旅行

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たい焼きに対抗する飴細工

 芸術料理コンテストの決勝戦が開始した。観客席はほぼ満席といったところか。後ろの方に僅かな空席があり、立ち見客まではいないから、満員御礼ではない。

 それでも昨日の今日でこれだけ人が集まったのは、料理と芸術との組み合わせという新たな試みだけではなく、ルシルと食の達人(イーティングマスター)Sの存在が大きいだろう。

 相変わらず緑色の芋ジャージを着ている、仮面のハーフエルフ。


 素顔は見えないが、美人だとは思う。クールビューティーという感じだ。


 俺は複数の鍋を用意して、砂糖を煮込んでいく。急がなくてはいけないが、熱しすぎたら焦げてしまうため、焦げないギリギリの温度で熱していく。本当はもう少しだけ低温で煮詰めたいのだが、時間をあまりかけられない。

 飴に着色料を混ぜ、赤や白の色を飴細工を作る。そして――


「おおぉぉぉっ――」


 観客席からどよめきが起こった。


 何だ? 何が起こった!?


 ルシルの奴、すでにたい焼きを焼き始めていた。

 そんなバカな――俺がルシルに渡したのは乾燥小豆。乾燥小豆から餡子を作ろうと思えば、圧力鍋を使っても30分、いや、それ以上かかるはずだ。あいつは料理はくそマズイし化け物に変貌させるが、でも料理の手順を間違えるようなことはしない。

 どうして――どうして時間短縮に成功した?


 魔法?


 いや、そんな都合のいい魔法があったとしても、あいつは手に魔力を纏わせることがあっても、あいつは料理に魔法を使わない。

 あいつは決してそんなズルはしない。

 彼女ほど――ルシルほど料理に対して真摯に向き合っている料理人はいないのだから。


「急げ……」


 俺が渡した型は小型版。といっても、一度に四個のたい焼きを作ることができる。

 というのも、この芸術料理コンテストでは審査員の実食用に三つ、そして観客への採点用に1個を作らなければいけないから。


 俺は鋏を取り出し、熱湯よりも熱いその飴を素手で触れた。

 熱い――なんて言っていられない。


 俺は手先と鋏を使い、それを作り上げている。

 観客席からも、そして審査員席からも恐らく俺が何を作っているのかよくわからないだろう。

 その数、約八十。

 それを全て紐に付ければ――


「出来たっ!」


 その声が開場中に響き渡る。

 だが、それは俺の声ではなかった。


 いつの間にかたい焼きを焼き終えたルシルは、しっかりと着色まで済ませていた。

 そして、たい焼きは――


「「「「「空を舞ったぁぁぁぁっ!」」」」」


 誰かが叫んだ。

 そう、たい焼きが空を飛んだのだ。

 空中遊泳をするその姿は、エラ呼吸とかそういう理論をも超越する。泳げたい焼き君も真っ青になるほどの光景だ。


 優雅に空を舞うその姿に、誰もが一瞬心を奪われ――そしてたい焼きのうち一個――いや、もはや一匹と呼んだ方がいいそれは口から黒い液体を客へと向かって噴き出した。


「危ないっ!」


 俺は客の前に跳び、噴き出したそれをアイテムバッグから取り出した鉄の盾で弾き飛ばす。

 弾き飛ばして気付いた。

 ……たい焼きが吐き出したのは――チョコレートだ。

 ルシルの奴、ただのたい焼きではない、あれほど小豆を使うように言ったのに、チョコレートたい焼きを作りやがったのか。いや、本気でコンテストに臨むならルシルの判断は正しい。たしかに小豆は美味しいし、この国の人にとっても物珍しいだろうが、珍しいものと旨い物は違う。この国の人ならチョコレートの方が口に合うのは明らかだ。


「……余計なことに知恵を回しやがって」


 チョコレートの攻撃が止んだので、俺は隙を見て、自分の飴細工を完成させた。

 全ての飴細工には糸がついていて、その先には――俺がこの世界に持ち込んだ秘密道具――釣り竿があった。


「いっけぇぇぇっ!」


 俺はそう言って、釣竿を振り回した。

 空中に飴細工が回転する。。


 すると、空を舞うたい焼きたちが俺の振り回す飴細工を確かに見た。

 チョコレートで黒く染められたその瞳で。

 そして、たい焼きは俺の振り回す釣り竿の先につけられた飴細工へと向かって飛んでいく。


「ちょっと、コーマ、何してるのよっ!」


 ルシルが文句を言って来た。自分の作った料理を俺が翻弄しているのが気に食わないのか、それとも食べ物で遊んでいるように見えることが気に食わないのかは知らないが。


「ルシルは鯛についても知っているらしいからな、その知識を利用させてもらったんだよ。お前の中の鯛の性質を」

「知識ってなによ」

「鯛は何に釣られると思う?」

「何って……はっ」


 ルシルは俺が作っていた赤と白の飴細工を見て何を作っていたのか想像がついたらしい。


「コーマ、まさか飴細工であれを作ったの?」

「あぁ、その通りだ」


 そして、鯛は俺の飴細工を餌だと思い、噛みついた。

 釣れたのだ。


「効果は抜群のようだな、海老の飴細工は」


 これぞ、海老で鯛を釣る大作戦だ!

 俺の本物そっくりの飴細工ルアーで、たい焼きを一荷釣りしてやるぜ!

本気で何を書いているのかわからなくなってきた。

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