解呪ポーションの生産ライン(前編)
~前回のあらすじ~
海水浴を楽しんだ。
亀の甲羅の上にある海賊の村といっても、普通の村と変わりない。畑で野菜を育てる人達が居て、初めて会う子供たちが手を振ってきたので、俺とメアリさんは手を振り返した。
のどかな村だな。
風土病が流行っているとは思えない。
そう思った。
それが間違いであることはわかっているはずなのに。
それが間違いなら、わざわざ危険を冒してまで薬を取りに行く必要はないだろうに。
メアリに案内された場所は、病床だった。
彼女がいると言っていた一番大きな家。
そこは全体が病床になっていた。
50人は寝ている。
全員が寝込み……顔に青い斑点が浮かび上がっており、匂いが……臭い。
糞尿の匂いが部屋に立ち込めている。
こみあげてくる物を感じ、嘔吐しそうになる。
「まぁ……これがこの島の現状さ」
そう言って、メアリは眠っていたお爺さんの寝ている体勢を変えてあげる。
寝返りをうつことさえ自分でできない状態だと言った。
「なぁ、さっき薬を手に入れたんだろ? なんで使わないんだよ」
「さっきの薬の本数見ただろ。全員分には足りないのさ。ここにいる人は皆、薬を買う金もなくここに逃げのびてきた連中なんでね」
「……ただの呪い抑止薬だろ?」
「は? 呪い抑止薬? 何言ってるんだい?」
ん? こいつら、本当にあの薬が何かわかっていないのか?
俺はアイテムバッグから眼鏡を取り出す。
「なんだい? その変な眼鏡は……」
「……あぁ、やっぱり変だよな、これはさすがに」
眼鏡のレンズの部分が渦を巻いている、ぐるぐるメガネだ。
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診察眼鏡【魔道具】 レア:★★★★
対象の状態異常、病状、HP、MPの残量を確認できる眼鏡。
これさえあれば、誤診に悩まされる心配もなくなります。
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便利な眼鏡だ。ダサイけど。
ちなみに、俺の現状は【HPは780/780 MPは108/108】
普通の人のHPが100前後なので、俺のHPは異常に高いことになる。
力の神薬を飲んだ効果だろう。
それで、俺はお爺さんの様子を見る。
【HP3/62 MP4/4 亀呪】
亀の呪い?
なんで……そんなものが。
「あんたならこの病状もなんとかなるんじゃないか? と思って呼んだんだが」
「薬がない」
アルティメットポーションを全て出せば全員助けられるかもしれないが、それはしない。
この呪いが風土病だというのなら、クリスやルシル、コメットちゃんにタラたちも同じ病気になるかもしれない。
四人のために薬は置いておきたい。
正直、四人の中では一番優先順位の低いクリスであっても、彼女一人とここにいる50人の命なら、俺はクリスの命を選ぶ。
「原因がわからない。亀の呪いってなんだ?」
亀といったら、この島のことか?
死体の上に村を作ったから怒ったのか?
「……亀の呪いだって?」
「ああ、こいつらの病状はそう診断された」
俺が言うと、メアリは何か考え込み、
「……ありがとうね、あんたに来てもらって正解だったよ」
「メアリ、お前、何か心当たりがあるのかっ!?」
俺が訊ねるが、メアリは何も言わずに歩き去った。
そして、俺はもう一度部屋を見回す。
何人かの人が看護しているが、全員長くは持たない。
俺以外に助けられる人間がいない、というのはおこがましいだろう。
もしかしたら、突然、それこそ勇者が現れて呪いを切り裂いてくれるかもしれない。
でも、俺は魔王だ。
魔王なら魔王らしく、アイテムマスターならアイテムマスターらしくやってやろうじゃないか。
さっきも考えたが、アルティメットポーションを配るのは無しだ。
そもそも、ここでアルティメットポーションを配っても、呪いの元凶が残る限り、病気が再発しないとも限らない。
ならば、俺ができること。
そんなの、解呪ポーションの量産に決まってる。
材料は、きれいな水、薬草、解呪草。
これらを量産しないといけない。
きれいな水はこの島の頂から湧き出ているという。
そこから蒸留水を作り、薬草と一緒にポーションを作成。
解呪草と一緒に合わせることで解呪ポーションができあがる。
となれば、まずは薬草と解呪草の大量生産に取り掛からないとな。
それと、俺以外にも解呪ポーションを作る人間を用意しないといけない。
問題が山積みだ。チクショウ。
でも、やると決めたからにはやってやる。
俺は病床を出て行くと、海の家に戻り、休憩して料理の準備をしているコメットちゃんに、「ちょっと用事ができた」と言って、休憩室の転移陣から、転移石を使って地上へと戻った。
地上も現在は昼のようで、少し安心した。迷宮の中だと時間がわからないからな。
一瞬で地上に戻った俺は名前は聞いていたが俺自身は一度も入ったことのない店へと入っていく。
「いらっしゃいませ。おや、これはコーマ様、いつもありがとうございます」
「こんにちは、セバシさん」
ここは、メイベルやコメットちゃん達がかつていた奴隷商の店だ。
ソファが用意されており、案内される
「今日はどのような御用でしょうか?」
「奴隷を買いたい。直接見て選びたい」
「男女はどちらでも?」
「かまわない」
「わかりました」
そして、俺は眼鏡を着用する。
セバシは俺が眼鏡をかけても表情一つ変えなかった。さすがは商売人。クリスも少しは見習ってほしい。
「では、こちらへどうぞ。ちょうど今は皆勉強中ですので。少し遠いですが、こちらへどうぞ」
店の外に案内されて、俺はついていく。
「勉強もしてるんですか?」
「ええ。奴隷でも文字が書ける者と書けない者、計算できる者とできない者では価格が大きく異なります。そのため、当館では奴隷には基礎教育から経営学、建築学、戦闘術などを学ばせるのです」
「戦闘術までか」
まぁ、強くなったからといって、隷属の首輪がある限り裏切ることはないだろうな。
「ちなみに、ヴリーヴァは経営学の講師をしていました」
「ああ、メイベルならそうだろうな」
そして、五分ほど歩き、店の外から大きな建物へと案内された。
「どうぞお入りください」
「あぁ、勉強の邪魔をするのもなんだし、できれば教室の後ろから見たいんだが」
「勉強の邪魔など、皆様、コーマ様のような主人に仕えることを夢見て頑張っているんです」
どうやら、うちの店の待遇の良さはある程度は知れ渡ってしまっているようだ。
まぁ、隠しているわけではないが、そうなると余計に裏からみたいな。
今日雇う奴隷は、うちの店で働くってわけじゃないし。
後ろから見るだけにするように再度頼むと、セバシは快く受け入れてくれた。
そして、後ろから俺は奴隷達のスキルを確認する。
ほとんどのものはスキルを持っていない。
最初に案内されたのは基礎教育の教室だった。
ただ、中には「料理」や「鑑定」といったよくあるスキルから、「邪槍」「身体強化」などという戦闘系のスキル、「スリ」「口八丁」といったちょっと危ないスキルまである。
だが、目的のスキルがなかなかみつからない。
「次は経営学の教室へ参りましょう」
「えぇ、お願いします」
と歩いていこうとして、掃除をしている12歳くらいの帽子をかぶった男の子に目がいった。
そのスキルは【錬金術レベル1】。
いた! 目的の人物が。
「セバシさん、あの子は?」
「先日入ってきたばかりの犯罪奴隷のクルトです」
「犯罪奴隷?」
「はい、親を殺した罪で奴隷落ちしました」
「……親を」
さすがにそんな危ない子は買うことが躊躇われるな。
「いえ、クルトは悪くないんです。クルトは父から虐待を受けていまして、ある日、それが嫌で父を跳ね除けたところ、頭を柱に打ちつけたのです。本来は親殺しは死刑なのですが、奴隷落ちに減刑されました」
今は、掃除や料理などの基本的なことから学ばせている最中だという。
掃除も、環境によって仕方がかわるらしいからな。正しい掃除というものは、毎日の積み重ねで身に付くものではなく、専門的に研究したり学んだりしてこそ身に付くものらしい。
「……いい子なのか?」
「ええ、よく働いてくれています」
とりあえず、キープだな。
そして、俺はセバシに案内され、次の教室へと向かった。
長かったので、一話として用意していたものを前編後編の二つに分けました。
なので中途半端なところでひいています。
け、決してタイトル二つ考えるのが面倒になったとかじゃ……ないとはいえないけど。後編は今晩更新。
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おかげさまで本日の日間ランキングは25位でした。最近は50位以下が続いていたのでうれしいです。
まぁ、ここまでくると、夢のベスト10以内は無理かもしれませんが、今もこつこつポイントが増えているので、これはこれで楽しいかな? と思っています。




