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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode Extra03 修学旅行

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修学旅行一日目、リーリウム王国(その1)


「楽しくない……修学旅行楽しくない」


 俺はいきなりダウンしていた。

 アークラーンの地下の転移陣から、カリアナへ移動した。

 そこまでは楽しかったのに。


「コーマ様、お水をどうぞ」

「ありがとう、コメット……でも、悪い。今、何も胃の中に入れたくない」


 ひどく揺れる馬車。俺は今、馬車酔いに悩まされていた。

 自分で作った行程なのに、すっかり俺の馬車酔い体質を忘れていた。酔い止めの薬は何種類か作ったのに全然効かない。


「だらしないなぁ、コーチョー先生は」

「うるさい、何もしゃべるな、動くな、息するな。俺は今、僅かの震動が……うぇっぷ」


 自分の声による空気の振動が俺の三半規管を刺激する。いや、この場合は空気の振動ではなく、喉の震動かもしれない。


「校長先生。こういう時は進行方向の空を見ていたほうがいいですよ。下を向いたら余計に気持ち悪くなる」

「悪い、次期校長……それは知ってるんだが……今は顔を上げるのが辛い」

「それは重症ですね……って、次期校長って呼び方やめてください。今までみたいに委員長でいいですから」


 だから俺は言ったんだ。走らせてくれって。

 足で走っても馬車に十分ついていけるからって。なんなら馬車を先導してやるって言ったのに。

 バセロナードめ、学生たるもの集団行動を大事にしなさいなんて言いやがって。

 短い正論ほど反論できない。


「それにしても豪華だなぁ。班ごとに馬車を用意してくれるなんて」

「……金に糸目をつけてないからな。来年からはこんな風にはいかないと思うぞ」


 あぁ、吐きたくなってきた。

 もしも72財宝を集めた時、どんな願い事でも叶えてくれるような奇跡が起きるんだとしたら、俺は馬車酔いしないような鉄の三半規管を望むね。

 アクロバティック飛行にも耐えられるような三半規管を。


   ※※※


 カリアナはリーリウム王国の属国だったという歴史がある。というより、リーリウム王の領土内にカリアナの隠里があり、それが発見されてからカリアナはリーリウム王国の領土になった。国として認められたのはさらに先であり、属国の立場から独立したのはつい最近のことだ。

 いろいろと政治的に厄介なことがあったが、それもなんとか解決した。


 今日はリーリウムの王都で一泊することになった。

 コメットちゃんの肩に支えられ、俺は馬車から降りた。

 気持ち悪い。このまま宿に行ってベッドで寝たい。硬いベッドで横になりたい。


 馬車から降りたマルジュとカリエルナ、他の馬車に乗っていた生徒たちも降りてきて、あたりをみまわしていた。

 完全に観光客気分だな。学習するという意欲はあまり感じられない。

 一人を除き。


「そういえば、アークラーンの国土の七割は草原と平原ですけど、山間部は結構木々が生い茂っているんですよね。町をぱっと見た感じ、木工細工の技術はアークラーンよりもはるかに発達しているようですし、新たな産業を興すきっかけになるかもしれません」


 カリエルナは本当にマジメだな。

 声が漏れているのは、クセだろうか? 


 この考察力はメイベルと気が合うんじゃないだろうか? 年齢も近いし。

 俺がそう思っていたら、近付いてくる


「おぉ、やっぱりコーマじゃねぇか」

「……誰?」


 知らないおっちゃんが声をかけてきた。


「お前、俺のこと忘れたのか。酒屋のマスターだよ」

「いや、悪い。俺、酒飲めないんで。誰かと勘違いしてないか?」

「じゃあ、お前はコーマじゃないのか?」

「……あれ?」


 そう言えば、なんでこの知らないおっちゃんは俺の名前を知ってるんだ?

 そう思っていたら、酒場のマスターの声に誘われて、


「ん? おぉ、コーマだ」

「本当だ、また宴会してくれるのか?」

「ザンギ、ザンギ食わせろ」


 ……はて。

 何故か国中の人が俺のことを知っているような雰囲気だが。

 ここの宿の手配はサクヤに任せたので、この国に来たのは前にリーリエ女王に手紙を届けにきたとき。


「あぁ、そうかそうか、思い出した。そう言えばここで美食大会みたいなのをしたんだった」


 あの時現れたベリアル……の影や、エントとの戦いが印象的すぎてすっかり忘れていた。

 えっと、1000人規模くらいの食事会だったよな。


「悪いが、俺、今日は学校の旅行なんだよ」

「学校? コーマ、お前学校なんて行ってるのかよ」

「うるせぇ、いいだろ。俺、まだ17歳なんだよ。だから酒なんて飲ますんじゃないぞ」


 俺は頭をかきながら、マルジュたちのいるところに戻った。


「コーチョー先生、どこでも同じようなことやってるんだね」

「そう言えば、マルジュと出会ったのも炊き出しをしている時だったな」

「うん、コーチョー先生の豚汁、めっちゃ旨かったよ。また作ってくれよな」

「ん? あぁ、いろいろと作ってやるよ。これからいくコースフィールドには美食の町があるから、そっちで旨い物腹いっぱい食べられるけど」

「え? マジ?」

「お前、しおり読んでないのか?」

「だって、何も知らずに行った方が楽しいじゃん」


 こいつ、ひとりミステリーツアーをやってるのか。


「ところで、コーマ、どこに泊まるんだ? あとで差し入れ持って行ってやるぞ」

「森の憩い亭だよ。一昨日予約した」


 俺が言うと、集まった男たちは急に下を向いて黙った。

 え? なんだ? 何があった?


「コーマ、ちょっと言いにくいんだが――」


 俺は男に手招きで呼び寄せられた。

 そして――耳元で告げられた。


「……森の憩い亭、店主が昨日、夜逃げしたぞ」

「……え?」


 ……マジですか。

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