修学旅行はじめました
すみません、本編のネタ補充のためにしばらく番外編っぽいのです。
スウィートポテト学園の執務室。
俺はひたすら書類に判子を押していた。自動判子押し機が欲しいところだが、たまに、「これはちょっと」と思う項目があったので保留印を押す。基本的に俺は却下印は押さない。今保留をしたのは、アークラーン軍の軍事訓練参加の許可だった。
この学園は西大陸全ての国から子供たちが集まってくるため、ひとつの国の軍事訓練への参加はどうかと思って保留したのだが、きっちりとした理由があるのなら許可をすることもありうる。
一応、サクヤも保留する可能性が高い書類は分けてくれているが、全部目を通すのは一苦労だ。
「…………なぁ、なんで俺の判子が必要なんだ?」
「貴様が校長だからだ」
「なんで俺が校長なんだ?」
「貴様が学校を作ったからだろう」
「学校を作ったのなら俺は理事長じゃないのか?」
「貴様が政治的に利用されたら困るから『俺が理事長兼校長ってことでよろしく』と笑いながら言っただろう」
俺が言ったのか? 言ったんだろうな。なんでそんなこと言ってしまったんだろうな。
面倒なことこの上ない。
……働くって大変だなぁ。
「サクヤ、俺、まだ17歳なんだよな」
「そうらしいな」
「俺、実は一年前まで学生だったんだよ」
「そうだったのか?」
そうだったのだ。
高校一年生だった。夏休みを利用して琵琶湖で釣りをしているところでルシルに召喚された。
本来なら72財宝を集め終えたら元の時間に戻ることができる話だったのだが、鈴子を元の世界に戻したことにより、地球も時間は流れている。
あれから二カ月。学校はもう始まっているだろう。退学になるのも時間の問題に違いない。
いや、鈴子がきっちり手紙を届けてくれて、両親がそれを信じてくれていたら、両親から高校に退学届を出している可能性もあるな。
行きたかったな、修学旅行。たしか、俺たちの修学旅行の行き先は沖縄だったはずだ。行きたかったな、沖縄。パイナップル食べたかったな。
「……そう言えば、スウィートポテト学園の修学旅行先はどこなんだ?」
「シュウガクリョコウとはなんだ?」
「何っ!?」
この世界には、もしかして修学旅行の概念はないのか?
「いいか、修学旅行というのは、教職員の引率の元、生徒と教員が同じ宿に泊まり、その地方にある施設などを見学し学を修める旅行のことだ。基本的に旅行先は遠くのどこか。観光地などがメインとなる。期間は三日から五日程度だ」
「……カリアナの視察訓練のようなものか? 敵地の中で一週間潜伏し、見つかれば死あるのみという」
「違うよっ! そんな怖いもんじゃないっ! そうだ! 修学旅行をしようっ! といっても今から生徒やその両親に費用を出させるわけにはいかないし……まぁなんとかなるか。じゃあ、サクヤ、後は任せた。ちょっと修学旅行の行き先を見つけてくるからっ!」
「おい、待てコーマっ!」
俺はそう言うと、校長室を去った。
サクヤの怒鳴り声が聞こえたが無視して走り出した。
※※※
修学旅行の行先として候補にあがったのは五か所だった。
とりあえず期間を一週間とした。
観光地として有名なのは、アースチャイルドの温泉街だろうからここは外せない。あと、ウィンドポーンの養豚王の豚牧場も今は人気になっているそうだ。豚肉料理がいろいろと作られ、それを目当てに来る人も増え、今では小さいながらも村ができているそうだ。
あと、転移陣を使うことを前提とし、リーリウム王国、コースフィールド、カリアナの三カ所も入れた。
一番遠いのはコースフィールドだろうな。転移陣を使ってカリアナまでは数時間で移動できるが、そこからリーリウム王国に移動して一泊。さらにコースフィールドに移動し、キャンプを楽しむ。そして、シメー島で二日間の観光。その後は朝から一気にリーリウム王国に戻り、カリアナから転移陣を使って学校に戻る。
一番楽なのはカリアナだ。カリアナ独自の文化を味わうことができ、学ぶという点ではいいだろう。
宿や施設等の交渉などは全て済ませた。
あとは生徒でクラスごとに行き先を決めて修学旅行を決行するだけのはずなのに。
「……書類が……書類が」
「貴様が修学旅行なんて提案するからだ。栞の作製、保護者への説明、会計管理。一体いくつ仕事を用意すれば気が済むんだ、貴様は」
「だって、行きたかったんだもん、修学旅行」
「……『もん』って、貴様はそういう人間ではないだろう。そもそも、生徒のための修学旅行じゃなかったのか?」
「いやいや、修学旅行は先生にとっても楽しみな行事だって。ちなみにサクヤはどこに行きたい?」
「私はアースチャイルドでゆっくり温泉に浸かりたいよ」
「いいな、それ。じゃあ、サクヤは初等第二クラスの引率で頼むわ。あそこは全員落ち着いているから楽だと思うぞ。俺はマルジュたちのクラスの引率をするから」
「あそこはバセロナード先生がいるだろう」
「じゃあ、生徒としてついていく!」
「貴様は……はぁ、好きにしろ」
サクヤはもう何も言わなくなった。
よし、一番の難敵だったサクヤが落ちた!
これで修学旅行を楽しめるぞ!




