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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
第三部 世界終焉編 Episode12 骨の迷宮

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豚骨スープ

 スカルコレクターの頭蓋骨を貫いたフーカは、そこで急浮上をはじめた。

 空気抵抗により少し傾いた板が飛行機の翼のように揚力を持ったようだ。


「よく飛ぶなぁ」


 もはやあれはスペースシャトルだ。さすがに大気圏どころか、対流圏を突破することもできないだろうけど。

 でもフーカが感じている恐怖は、逆バンジーで感じるそれの比ではないだろう。


 頭蓋骨を貫かれたスカルコレクターは――果たして、フーカを無視し、その腕を俺たちへと伸ばしてきた。

「おいおい、スカルコレクター。敵を見誤ってるんじゃないよ。お前が戦っているのは俺じゃなくてフーカだろうが」

 俺はそう言うと、そのスカルコレクターをじっと見た。

 そして、


「アニメのセリフで申し訳ないが、それでもこれを言わないといけないな」


 俺は拳を前に突き立てて言った。


「お前はもう死んでいる」


 その台詞が合図となった……わけではもちろんないし、秘孔をついたわけでもないが、スカルコレクターの頭が砕けた。

 だから俺は言った。お前の敵は最後までフーカだったと。


 もしもフーカの行動に対し最後まで警戒していたのなら、気付くことができたかもしれない。彼女が、スカルコレクターの頭蓋骨の中に何を置いたのかを気付けば、その十秒の間にそれを取り出すことはできたかもしれない。

 まぁ、取り出したら取り出したで、そこを轟雷の杖で撃ち抜いて誘爆を引き起こしたんだけど。


 そう、フーカが残してきたアイテムは、エレキボムだ。

 昔、フリード・ガエンが一角鯨の口の中でエレキボムを爆発させたことがあったが、あれは口の中だったから、まだ威力はマシだったのかもしれない。

 少なくとも、核のすぐ近くでの爆発。


 それは――スカルコレクターを殺すには十分だった。


『コーマ、スカルコレクターの死を確認したわ。これから骨の迷宮の崩壊が始まる。結構派手に壊れてるから私も避難するから、この様子だと、勇者試験に参加してる人も避難してると思うわよ。でも完全崩壊までは暫く時間がかかるわ。コーマはどうするの?』

「そうだな、俺も一度そっちに転移してから脱出するよ――迷宮に入ったところを見られてるからな。死亡報告されるのも困る」


 でも、その前に勝利の立役者を迎えないとな。


 と、俺は遥か先の空から、パラシュートを使って落下してくるフーカを見るのだった。


   ※※※


 結論から言えば、勇者試験六日目は無効となった。

 それが、骨の迷宮の崩壊という予想だにしなかった事態に直面した冒険者ギルドの結論だった。もちろん、ユーリに対しては詳しく説明した。

 

 そして、俺は勇者試験を不合格にはならなかった。

 意外にも、時間破りに関して俺のフォローをしたのはレメリカさんだったそうだ。なんでも、骨の迷宮の際に行動不能になった勇者候補がふたりいて、それをレメリカさんが助けながら脱出した。ギルド職員に助けられたら勇者候補は失格になるのだが、ふたりの不合格は、六日目の勇者試験無効の結論とともに取り消された。

 俺の順番抜かしての迷宮への突入は崩壊前なのだが、ふたりの不合格を取り消すのに俺だけ不合格のままなのは問題だと言ってくれたそうだ。


 そして、勇者試験六日目のやり直し。


「あぁ……悪いが通してもらっていいか?」

「……うもぅ!」


 勇ましく跳び出したミノタウロスに対し、俺は遠慮がちにそう言うと、ミノタウロスは最上級の敬礼とともに通してくれた。


 勇者試験六日目は、ルシル迷宮で行われていた。

 非常にやりにくい。


 ルシル迷宮は勇者の間では有名となっている迷宮だ。

 スライムが非常に強い迷宮ということで。


 ユーリからの打診で、勇者試験六日目をここで行うことになった。

 ただし、本気で迎撃はせず、11階層をミノタウロス、12階層から14階層をマネットの作ったゴーレム、15階層をスライムたちが守ることになった。


「……なんか、ズルをしているみたいだな」

「そうですね」


 タラとふたりで迷宮を潜っていく。

 当然、俺とタラは階段の場所も知っているからロスもない。


「でも、これなら俺も晴れて勇者だな」


 そう思いながら、ゆっくりと歩く。

 実は今のところ一番後ろを歩いている状態だが、これなら十分に間に合う。


 ちなみに、フーカは今日は休ませている。

 昨日の戦いの疲労が残っていると言って休ませている。


 ここで俺を不合格にする要素があるとすれば、ルシル料理くらいだが、そんなオチはもうない。

 魔王討伐記念にルシルが料理を作りたいと言ったが、ルシル料理は、勇者試験の合格祝いに食べさせてもらうことにした。


 そのはずなのに。

 前方から何重にも悲鳴と鳴き声が響き渡り、目の前に見たことのない豚が現れた。


……………………………………………………

豚骨スープ【料理】 レア:★


豚の骨を煮込んで作ったスープ。

骨髄から出る旨みスープが溢れ出ている。

……………………………………………………


 自分の事を豚骨スープだと言うその豚――総勢30頭。

 俺は通信イヤリングを手に取る。


「……ルシル、何か言うことはあるか?」

『明日の料理の下ごしらえをしようと、スカルコレクターの崩壊した館の中から豚の骨を持ってきてラーメン用のスープを煮込んでいたんだけど、逃げ出しちゃったの。ほら、下ごしらえ中の料理が逃げ出すなんてはじめてのことだから、何かの間違いじゃないかと思ったんだけど』

「スカルコレクターの持っていた骨を煮込むなとか、スープが逃げ出したという新種の言葉に関しては言いたいことはあるが、事情はわかった」


 俺は通信イヤリングを切り、


「タラ、二手に別れてこの場を乗り切るぞ! 俺たちの戦いはここからが本番だ!」

「わかりました。主よ、ご武運を!」


 そして、俺に最大の難関が立ちふさがった。


   ※※※


 翌日。俺は朦朧とする意識の中、勇者試験の大問題の処理に奔走させれられてしまったユーリには小言を言われ、事情を知らないはずのレメリカさんからは舌打ちされ、そして、その年唯一勇者となったタラの名前はラビスシティー中に広まったのだった。

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