水着だらけの海水浴
~前回のあらすじ~
クリスが海賊退治の依頼を受けた。
さて、何事もなくルシル、コメットちゃん、タラを呼ぶことに成功した。
ルシルが怒っているが、コメットちゃんは顔を赤らめているが、俺の左頬が赤く腫れ上がっているが、何事もなかった。
「これが海の香りですか……不思議な感じですね」
コメットちゃんが鼻をピクつかせて言う。
コボルトとしての嗅覚が残っているのだろうな、ルシルはまだ感じていないらしい。
「迷宮の中だから風が吹かないのが残念だけどな」
そう言って休憩室の扉を開けた。
ルシルを先頭に、コメットちゃん、タラが外に出てきた。
そして――
「……うわぁぁぁぁぁぁ」
広がる海を見て、ルシルが感動に打ち震えていた。
コメットちゃんも同じようだが、タラだけはきょとんとした顔で海を見つめていた。
タラには感動の心はないのか。
「凄い、コーマ、水浸しよ!」
「床上浸水して掃除が大変だと思う主婦のような感想を言うな!」
「あたりがビショビショよ」
「もっと表現がおかしくなった。通り雨に振られて濡れ鼠になったような感想だな」
「コメットちゃんとタラはは濡れ鼠じゃなくて濡れ犬ね」
確かに……人化していなかったら、全身を震わせて水を飛ばす二人の姿が容易に想像できる。
「ところで、泳ぐか? 一応水着は作ったが」
「水着?」
「あぁ、泳ぎに適した服だ」
そう言って、俺は三人分の水着を取り出す。
「えっ、コーマ様、それ、まるで下着みたいですが」
「俺の世界じゃ普通の水着だぞ?」
普通のビキニタイプの水着だ。
流石にTバックタイプだったり、ヒモパンだったりはコメットちゃんには履かせられない。
頼んだら彼女なら絶対に履いてくれる。でも、そんなの無理やり履かせるようなら、俺は魔王じゃなくて小悪党に成り下がる。
うん、頼むときはもっと彼女がノーと言える日本人になってからだ。日本人じゃないけど。
「私のはこれ? いいわね、黒くていいデザイン。コメットちゃんより露出も少ないし」
コメットちゃんの水着を見て、ルシルは安心して従業員室に入っていく。
コメットちゃんもルシルの後についていき、扉が閉められた。
鍵がかかる音が聞こえる。
あ、タラの水着は普通にブリーフタイプの水着な。
俺はトランクスタイプ。
ちなみに、全ての水着は【ランク★】の通常アイテム。
あぶない水着とか魔法のビキニみたいに、戦闘に使える水着はまだ作っていない。
でも、作ってみたいとは思うよな。ビキニアーマーとか。
クリスにはよく似合いそうだ。
「じゃあ、俺達はここで着替えるか」
俺が言うと、タラは頷き、毛皮のズボンに手をかけた。
……タラって、今の姿は美少女のような美少年なんだよな。
いつも上半身裸なので女の子と間違うことはまずないのだが。
それでもこうしてズボンを下ろすと、タラが男だと再認識――
うん、暫くタラのことはタラ兄さんと呼ばないといけない気がしてきた。
一体、そんな大剣、どこに隠し持っていたんだよ。
タラとしてでかいのか、ゴーリキとしてでかいのか、それとも二人ともでかかったのか。
くそっ、大きければいいってもんじゃないぞ。
着替え終わってもルシルたちが出てくる様子はないので、俺は浮き輪を膨らませることにした。
タラに泳げるか? と聞いたら、湖を3日かけて泳いで横断したことがあるということなので、問題ないだろう。
それはタラとしてか? ゴーリキとしてか? と聞きたかったが、まぁ、後者だろうな。
あの人、人間の規格を完全に無視してるから。
ルシルはイメージ的に泳ぐのが苦手そうだ。
コメットちゃんはわからないなぁ。犬かきとかは得意そうだけど。
浮き輪を膨らまし終えたころ、封じられた天岩戸が開いた。
最初に出てきたのはコメットちゃんだった。
うぉ、タラがどこかになにを隠していたように、コメットちゃんも着やせするタイプだったのかな。
出るところがそこそこ出ている。普通にCカップはあるんじゃないだろうか?
くそ、鑑定眼がアイテム限定なのが辛いぜ。
「あ……あの、似合ってますか」
「コメットちゃん! 一周ぐるっとその場でゆっくり回ってくれないか?」
「え? あ、はい」
そういい、コメットちゃんはゆっくりと回っていく。
「ストップゥゥゥっ!」
俺はそこで止めた。
うわ、尻尾の付け根あたりが膨らんで、尻尾が水着から出ている。
うわ、なんだ、俺、尻尾属性なんてあったのか!?
やべぇ、すごくもふもふしたい、あの尻尾。
「あ、あの、コーマ様、やっぱり尻尾の部分、穴開けたほうがよかったですか? コーマ様からいただいたものに穴を空けることができなくて」
「いや、グッジョブだ、コメットちゃん!」
俺が涙を流して親指を立てる。
異世界に召喚されてよかった。
ありがとう、ルシル、召喚してくれて。
「コーマ、なんで泣いてるのよ」
「おう、ルシルも着替え終わったか。いやぁ、ルシルも想像通りよく似合って……ぶふっ……いや、よく似合ってるぞ、るしる……ぶはっ」
やば、思ったよりツボに入った。
だって、ルシルの水着……スクール水着だしな。
しかも、名札付。
【3-2 るしるちゃん】
と白い布に油性マジックで書かれている。
やばい、想像以上に似合っている。
「どうしたの? もしかして私の水着姿に興奮してる?」
ルシルはニヤニヤと笑って俺を見てきた。
あぁ、ある意味お前のその姿で興奮してるんだがな。
言わないよ、せっかく気に入ってくれたんだし。
「じゃ、海に入るか。とはいえ、砂浜はないから、水に入るといきなり底のない状態になる。コメットちゃん、泳ぎの経験は?」
「ありません」
「ルシルは?」
「ないわ」
ない胸を張って自信満々に言った。
浮き輪を用意して正解だな。
「じゃあ、浮き輪を渡すから、それを付けて離さないようにな」
こうして、俺たちはそれから、海で泳いだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。
そして……
「おおい、コーマ!」
「あ、メアリさん! いい物件ありがとうございます」
俺は海の中から手を振ってこたえる。
「気にすんな! そいつらがあんたの仲間か?」
問われたので、俺は三人を紹介、コメットちゃんに関しては「グー」の名前で紹介した。
今後、クリスと会った時にコメットちゃんがいた、とか話されたら困るからな。
「村を案内したいんだ。ついてきてくれないか」
「わかった。じゃあ、タラ、二人をよろしく頼む」
そう言い、俺はタオルで身体を拭くと家の裏手で着替えて、メアリと一緒に村へと向かった。
メアリを見るコメットちゃんの目が少し厳しそうだったのは……気のせいだと思いたい。
本日最後の更新です。
明日からは通常の予約投稿更新に戻ります。
ブックマーク数5000人、評価200人、それぞれ突破しました。
ありがとうございます。
本日から読み始めた皆さまも、初投稿から読み始めた皆さまも、
異世界でアイテムコレクターをこれからもよろしくお願いします。
あと、今回の海水浴の裏話は、いつか閑話で書こうと思います。




