フーカの拳
転移陣を潜ったとき、俺が見たのはなぎ倒される木々と、巨人族の姿だった。
巨人族の弱点はその大きさによる的の大きさ。
ならば――
「雷よっ!」
轟雷の杖を振るった。極大の雷が巨人族の姿のスカルコレクターに降り注ぐ。
これでどうだ!
と思ったが、スカルコレクターが手を伸ばした。
雷がスカルコレクターの手のなかに吸い込まれていくように入り、腕が弾けた。
が――すぐにその手は再生する。
スライムの倒し方は核を潰せばいいだけだが、逆に核を潰せないときついな。
十中八九、核は巨人族の頭蓋骨の中だろう。
「タラならどう戦う?」
「樹を登り、頭に飛び移り、砕くのがよいでしょう」
「あぁ……でも周りの樹が根こそぎ薙ぎ払われてる……とすれば?」
「ならば、空を飛びます」
空を飛ぶ、つまりは一回のジャンプで相手の頭まで行く。
俺やタラの脚力ならそれも可能だが、ただし、欠点もある。
俺もタラも、空中で動きを取ることができない。クリスなら多段ジャンプのスキルがあるのだが、こんな時に限ってあいつはこの戦いに不参加だ。
このままスカルコレクターが西へと進めばラビスシティーにいる人も気付き、クリスも出張ってくるんだろうが、そこまで行けば時間オーバーだ。
でもまぁ、一応通信イヤリングでクリスを呼んでおくか。
ラビスシティーの人間がいる前で、俺は本気で戦えない。
いや、それを言うなら、10メートルはある巨体だ。
もしかしたら、双眼鏡などですでにラビスシティーから監視されているかもしれない。
頭の上に飛び乗れば、俺が戦っているところを見られるかもしれない。
それなら、竜化して戦うか。それなら見られても問題はない。
そう思ったときだった。
「お兄さん、僕に何かできることはありませんか!」
フーカが俺たちの後を追って現れた。
「フーカ、待ってろって言っただろ……」
と言って、俺はフーカを見て考えた。
フーカがここにいたら竜化することもできない。追い返そうと思ったが、ふとあることを閃いた。
「飛ぶよりも飛ばす方がいいか」
「……え?」
「確か、落下傘――は作ったことなかったか」
アイテムバッグから布と紐、リュックサックを取り出し、
「アイテムクリエイト」
と唱えた。
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安全落下装置【雑貨】 レア:★★
空から落下するときに使う道具。
紐を引っ張るとパラシュートが開き、ゆっくり落下することができる
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「え? お兄さん、今の魔法……?」
「気にするな。よし、サイズはあってるな」
俺はフーカにリュックを背負わせ、紐を握らせた。
「いいか? 落下が始まったらこの紐を引っ張るんだ。絶対に忘れるなよ。気も失うな。気絶したら死ぬからな」
「え?」
「お前が手伝いたいって言ったんだ。姉ちゃんの仇討ちをお前にさせてやるって言ってるんだよ」
そして、俺は人として最悪の答えを出す。
「お前を空へと飛ばしてスカルコレクターを倒す」
「え?」
「普通に投げたら回転がかかるからなぁ。板に乗せたほうがいいだろうな」
俺はアイテムバッグから板を取り出して、その上にフーカをうつ伏せに寝かせた。
そして、聖銀の篭手のはめられた腕を前に出させる。
「左手は紐に――届くな。いいか? 落下がはじまったら絶対にこの紐を引っ張るんだぞ。逆にそれまでは引っ張るなよ」
「あの……お兄さん? いったい何を」
「軽く結び付けておくが、この紐を引っ張ったら解けるようにしているからな」
フーカを板に結び付けて固定する。
そして、
「タラ、手伝ってくれ」
俺はタラとともに板を持ち上げた。
そこで、フーカは俺たちが何をしようとしているのか、ようやくわかったようだ。
「あの、これ、僕じゃなくても、そのタラさんでも――」
「いや、俺もタラも下からいろいろとフォローをしなくてはいけないからな。安心しろ、俺の作った聖銀の篭手があれば余裕だからな。それと、頭蓋骨を貫いたら、これを置いて来てくれ」
そして、俺はフーカにそれを託し、タラとともに彼女が乗った板を飛ばした。
スカルコレクターを狙って。
悲鳴を上げないフーカは大したものだと思う。
それでも、当然スカルコレクターはフーカに気付く。
それを叩き落とそうとしたが、
「雷よ!」
俺の雷が、スカルコレクターの手を砕いた。
「お兄さん、このままだと」
「わかってる! タラっ!」
タラもまた同時に動いていた。
「幻夢剣!」
タラが叫ぶと同時に、タラが持っていた剣と同じ、だが大きさだけは数十倍もある剣が現れ、スカルコレクターの足を切り裂いた。
あいつ、いつの間にそんな技を覚えたんだ。
そして、それによりスカルコレクターの頭の位置が修正され――
フーカの拳がスカルコレクターの頭蓋骨を貫いた。




