スカルコレクター最後の手段
スカルコレクターの数も少なくなったところで、やはりそれは起こった。
突然、俺たちを囲んでいたスカルコレクターたちが、頭蓋骨を残して崩れ落ち、スライムの形となり一カ所に集まっていく。
スライムのもうひとつの特性、融合による巨大化。
「させるか!」
相手のパワーアップを待つほど俺は心優しい魔王じゃないぞ!
と神雷の杖を手に取り、
「雷よっ!」
と唱えた――が……不発に終わった。
まさかの回数切れ!?
そういえば、最近、魔力を充填してなかった。アイテムバッグの中は時間が止まっているから自動充填ができない。
アイテムバッグから予備の轟雷の杖を取り出すが……すでにスライムの融合は完了してしまっている。
タラの奴は武士道精神の持ち主だから、相手が強くなるところを黙ってみていた。
ひとつになるスライムを見て、俺はふっと笑った。
「お前の真の力見せてもらうぞ。俺はその壁をさらに乗り越えていく!」
「お兄さん、不意打ちしようとしてからのその台詞は少しカッコ悪いですよ」
「うるさい、ルシルみたいなツッコミを入れるな」
『自称アイテムマスターが、アイテムの管理をきっちりできていないことのほうが問題よ』
「仕方ないだろ。次元だって、『弾切れか』ってよく言ってるし」
フーカとルシルにツッコミを入れられて参りながらも、俺はそれを見た。
巨大なスライムとなったスカルコレクターの頭の部分に巨大な頭蓋骨。
どう見ても人の骨のようだが、その大きさは十倍、いや、それ以上はある。
「……巨人族」
「巨人族? そんな種族、この世界にいたのか?」
『2000年前に滅んだ種族よ。お父様も昔戦ったことがあるわ……倒しきることができなかったって言ってた。間違いなく最強種の一種よ』
「滅んだ理由は?」
『環境の変化で女性の巨人族が生まれなかったそうよ。それで子孫を残せずに死に絶えたそうね。ちなみに、巨人族の平均寿命は500年で、子供は最高で四人しか産むことができず、平均はふたり。それでも2000年前まで絶えずにいたのは天敵がいなかったからよね。それだけ強い種族ってことよ。弱点は的の大きさね。遠くからでも狙い放題』
「もうひとつ、大きな弱点があるぞ」
褐色肌、焦げ茶色の髪の男の巨人族が……つっかえていた。迷宮が狭すぎて。
つまり、巨人族の弱点は狭い場所では戦えないってことか。
これなら、動けない相手を轟雷の杖で狙い撃ちで終わりじゃないか?
そう思った時、スカルコレクターが笑った。
手が伸び――その先には。
「タラ、行かせるなっ!」
俺の命令によりタラが前に行くが、その前に、スカルコレクターの手が叩きつけられた。
と同時に、スカルコレクターの姿が消えた。
転移したのだ。あの森の中に。
転移陣は光っていた。つまりは屋敷は壊れたにも関わらず、転移陣は使えるということだ。
俺対スカルコレクターの最終章か。
「よし、転移陣を壊して、スカルコレクターは無視して勇者試験でも受けるか」
なんか面倒になった。
「え、お兄さん、僕のお姉ちゃんの仇討ちは!?」
「仇討ちって、俺が頼まれたのはお前の姉の行方を調べるだけで、復讐は未定だっただろ」
それに、スカルコレクターを殺したらこの迷宮もつぶれるそうだし、それならもう放置でいいんじゃないか?
巨人族は目立つから、そのうち誰かが倒してくれるだろ。
いつもは誰かを守るために仕方なく戦っていたけど、今回はその必要もないし。
『あ、コーマ。言い忘れてたけど、スカルコレクターのいる森って、ラビスシティーのすぐ東の森の中よ。巨人の足だと歩いて一時間くらい』
「それを早く言え! 行くぞ、タラ! フーカは留守番!」
そう言うと、俺はフーカを結んでいた紐をエントキラーで切って下ろすとタラとともに転移陣の中に入って行った。




