コレクターの掟
「タラ、フーカをこっちに! 俺が背負って戦う」
「わかりました」
タラがフーカを丁寧に放り投げる。
俺は彼女を受け取り、紐で背中に結び付けた。彼女の大きな胸が俺の背中の上で押し潰される。
だが、クリスの胸を直に見たことがある俺。この程度で動揺するわけが――
冒険者らしき男が振り下ろした剣が俺の髪を掠めた。
「あっぶねぇ」
「主、油断めされるな」
「あぁ、わかってる。こいつら、普通の人間よりは、はるかに強い」
俺はそう言って、力の妙薬を飲んだ。
そこに、一匹の大きな金色のドラゴンが前に出た。
それもまた、スカルコレクターだ。
「あなたにはお礼を言わないといけませんね」
「……礼を言われるようなことなんてした覚えはないぞ」
「私は自分がスライムであることを心から軽蔑していました。ですから、この分裂の技も最後の手段だったんですよ。一体は私の本体が死んだ時の保険でしたが、このように複数の体で戦うことになるとは思っていませんでした。ですが、あなたが教えてくれた。私は最弱種じゃないと。私は、私たちは極めれば最強種にもなりうると」
「言いたいことはそれだけか?」
「あとひとつ、私が汚したコレクターの魂というのを教えてもらいたいですね」
……あぁ、そのことか。
「わかった、教えてやるよ。ただし、戦いながらなっ!」
俺はそう言うと、アイテムバッグから留め具を引いてエレキボムを放り投げた。
と同時にエントキラーを取り出して走り、真正面にいたドラゴンの頭蓋骨を叩き割った。
「タラ、弱点は頭と核だ! 頭蓋骨を潰してスライム状態にしてから核を潰せ」
俺がそう叫び終わると同時に、エレキボムが破裂し、爆音が響き渡った。
俺はエントキラーで真っ二つに割れたドラゴンの頭蓋骨の横にいたスカルコレクターその2の核を叩き潰す。真っ赤なスライムの粘液があたりに飛び散った。エントキラーにもべとりと付く。
そして、俺は残りのスカルコレクターを見て宣言した。
「コレクターの掟その一!」
そう言って、冒険者の姿をしたスカルコレクターに向かった。
「ゴミは極力出さない! ガチャガチャではカプセルは所定の回収箱に入れること。お菓子のおまけの場合、お菓子を捨てるなんて論外!」
俺はそう言って、エントキラーを横にし、まるで蠅叩きみたいに冒険者の頭蓋骨をスライムごと叩き潰す。
「ガチャガチャって何かわからないよ!」
犬の魔物の姿をしたスカルコレクターニ十体が同時に俺に襲い掛かった。
が、俺は上に大きくジャンプし、エントキラーを左手に持ち、アイテムバッグから神雷の杖を取り出した。
「コレクターの掟その二! 雷よっ!」
その二といいながら、神雷の杖で、真下に一カ所にまとまったスカルコレクターを一掃し、俺は着地しながら続けた。
「コレクターはコレ友に対しては、必要以上に自慢しない!」
もちろん、見せびらかしたい気持ちはわかるし、見せびらかすなとは言わない。
でも、必要以上に自慢される気持ちになってみろ。
お前にわかるか? その時の悔しさが。
「『え? まだ手に入れてないの? 俺なんて最初に引いたのがこのカードだったから価値わからんわ』とか言われた人の気持ちがお前にわかるかっ! わかんないだろ!」
『コーマは私にいつもパーカ人形について熱く語ってくるけどそれはいいの?』
通信イヤリングがまだ繋がっていたらしい。
ルシルがそんなツッコミを入れてきた。
「それはいいんだよ。お前はコレ友じゃないからな。ノンケに対する布教もまた立派なコレクターの務めだ。もちろん、本気でイヤがってる相手にそんなことしないけど、ルシルは聞いてくれるじゃないか」
『まぁ、暇だし』
うん、そういうところもルシルの好きなところのひとつだな。
おっと、話がそれてしまった。
まだ三割も減っていないな。タラもさっきの汚名を返上するためにか、いつも以上に張り切っている。
俺もそろそろペースを上げていかないといけない。
「コレクターの掟その三!」
「……ん……え? お兄さん!? ここは」
「って、フーカ、目が覚めたのか。悪いが辛抱しろ、今スカルコレクター軍団と戦ってるところだからな、しばらくそこでじっとしていろ」
「スカルコレクター軍団ってどういうことですか!?」
「後で説明してるからじっとしていろ。お前の姉ちゃんの骨は取り戻してやったからな」
「お姉ちゃんの……」
フーカの声から読み取れる感情は複雑そうだ。
姉の骨がここにあるということは、それは姉の死を受け入れなければいけないということだからな。
「あの、僕も戦わせてもらえませんか?」
「ダメだ。こいつらは俺やタラからしたら雑魚だが、一番弱いやつでもお前と対等。いや、お前より強い。だからそこで見ていろ」
そして俺はエントキラーを構えて言った。
「従者の復讐は勇者がしてやるよ!」
俺はそう言って、飛びあがり、
「コレクターの掟その四!」
『その三よ』
「……その三!」
通信イヤリングからの訂正に対し、俺は素直に応じた。
そして、敵の中心に飛び込み、エントキラーを振り回しながら言った。
「コレクター作業で他人を悲しませるべからず!」
お前は自分の蒐集欲のために多くの人を苦しめた。これより、コレクター代表としてお前を断罪する。
『でもコーマ、前にパーカ人形を買い占めて子供を泣かせたって言ってなかった?』
「……あの後、ダブってる人形いっぱいあげたからノーカウントだよっ!」
通信イヤリングからの辛辣なツッコミに、俺は叫びながら釈明した。




