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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
第三部 世界終焉編 Episode12 骨の迷宮

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スカルコレクターの正体

 フーカがお姉ちゃんと呼ぶ女性。

 にっこりと微笑み、彼女の名前を呼ぶ。

 燃えさかる屋敷の火の粉が飛んできて、彼女の帽子に引火したため、彼女は表情ひとつ変えず、その帽子を脱いだ。

 すると、彼女の頭には鬼族特有の角が生えている。

 だが、もちろん、俺の警戒が解かれるわけがない。タラを刺したのは物理的に見てあいつしかありえないのだから。

 俺はアイテムバッグから鉤付きロープを取り出し、それを放り投げてタラにひっかけ、思いっきり引っ張った。タラの体がくるくると舞い、ルシルの前に落ちた。その時にタラがいつも被っている頭蓋骨が落ちた。

「ルシル、アルティメットポーションは持っているな!?」

「持っているわ。大丈夫、ポーションを飲むだけの体力はあるみたい」

 そうか――と俺は彼女を見た。

「随分と悪趣味じゃないか? スカルコレクター」

「悪趣味? なんの話でしょうか?」

「頭蓋骨に憑りつくことでその人の姿と、そしておそらく力と記憶を得る――それがお前の力じゃないのか?」

 俺の憶測に、背後からフーカの息を飲む音が聞こえた。

 それ以外の予測なんて出るわけがない。

 本物の姉が生きていてハッピーエンドみたいな展開なんてあるわけがない。

「……ふぅ、せっかくフーカに幸せの中で死んでもらおうと思ったのに」

 それが悪趣味だって言うんだよ。

 俺の中の怒りが沸々と沸きあがる。

 だが――俺の怒りが沸騰するよりも先に、彼女の怒りが限界を迎えた。

「……ふざ……けるな」

 怒りの声でフーカが言う。

「お姉ちゃんの姿で、お姉ちゃんの声で、お姉ちゃんの記憶で、僕の名を呼ぶなっ!」

「待て、フーカっ!」

「お姉ちゃんをこれ以上汚すなっ!!」


 俺の制止も聞かず、フーカが飛び出す。

 彼女の顔の血管が浮かび上がり、角が赤く光った。


 フーカのHPが三倍近くに膨れ上がる。ということは、力なども強くなっているのだろう。

 まるで――俺の竜化みたいに。


「ふふふふふ、いいわ、いいわよ、フーカ。もっと、もっと怒りなさい!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 フーカがスカルコレクターに殴り掛かる。彼女の拳がスカルコレクターを殴って押し倒した。

 そして、何度も何度も何度も、スカルコレクターの顏を殴る。


「……痛いよ、フーカ」


 スカルコレクターが泣きそうな顔でそう言った。

 姉の顏でそんなことを言われ、フーカの拳が止まる――がそれも一瞬だけだった。


「あああああああぁぁぁぁぁっ!」


 彼女がこれまでにない大振りの攻撃でスカルコレクターを殴ろうとした、その時だった。

 スカルコレクターの手が伸びた。


 まるで手から先が刀になったように。

 そして、それがフーカの腹を貫いた。


「言い忘れていたわね、フーカ。私は頭蓋骨だけしか盗んでいないから、首から下は自由に変形できるの。こういう風にね――」

「がふっ――許さないっ」


 口から血を吐きながらも、フーカはスカルコレクターを睨みつけた。


「いいわ。私に怒りを向けて、そのまま死になさい。そうすれば、貴方の頭蓋骨は赤く光ったまま残ることになる。この子も仲間たちも失敗したけど、今度こそ最高の状態で保存しないといけないわ――ね」


 スカルコレクターの腕がフーカの意識を奪い去る。

 それでも彼女の角の光は消えない。

 それだけ彼女の怒りが強いということであり、それがスカルコレクターを喜ばせた。


 だが、それもそこまでだ。


 俺の剣がスカルコレクターの腕を切り裂いた。

 そして、解放されたフーカをルシルの前に放り投げる。


「ルシル、患者一人追加だ。ただし、目を覚まさない程度に治療してやってくれ――偽物とはいえ姉が殴られるところを見せたくないだろ」

「……邪魔するのですか?」

「あぁ、スカルコレクター。言っておくが、俺は人間は人間でも、この世界の人間じゃない。異世界の人間って奴なんだけど興味あるか」

「異世界の人間? あははははは」


 すると、俺を睨み付けたスカルコレクターは大笑いして立ち上がった。


「今日はなんて素晴らしい日なんでしょう。鬼族の最高状態の頭蓋骨だけでなく、異世界人の頭蓋骨まで手に入るなんて」

「お前、俺に勝てると思ってるのか?」


 俺は剣を向け、スカルコレクターに言う。


「あなたこそ、私に勝てると思ってるの? 私はスカ――」


 スカルコレクターが名乗りを上げようとした同時に、俺の剣がスカルコレクターの胴体を真っ二つに切り裂いた。

 相手の名乗りをいちいち待っているほど、俺の道徳心は高くない。


「それで私に勝ったつもり?」

「いんや、確かめさせてもらっただけだ。お前の正体――全く、何の因果だよ」


 スカルコレクターの正体を見抜き、俺は悪態をついた。


「よりによってスライムかよ……戦いにくいな」

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