アイスクリーム症候群
勇者試験二日目も余裕をもって終了した俺は、今日のフリマの警備をクリスに任せることにし、魔王城に帰ることにした。
昨日はユーリのところに行ってから宿を借りて寝ており、一昨日はフリマの一階で寝ているので、三日ぶりの魔王城だ。
会議室には俺とマネット、ルシルがいた。
カリーヌはスライムたちと遊びに行っているらしく、コメットちゃんは張り切って料理をしている。
そういえば、リーとファンシーにも俺がオーナーだってばれてしまったし、いつかコメットちゃんのことも説明しないといけないな。
そして、俺はマネットに事情を説明しておいた。
「ありがとう、コーマ。助かったよ……君がいなかったら大切な友を失うところだったよ」
「気にするな。今度脱皮する時があったら抜け殻を置いてもらうように頼んでおいたからな。俺はお得だよ」
俺がそう言うとマネットがジト目でこっちを見て来たので、俺は苦笑し、首を振った。
「冗談だよ。流石に瀕死の重傷を追っていた奴にそんなことはしないよ」
瀕死じゃなかったら言ってたんだと言わんばかりの顏に何も言えず、俺は隣でかき氷(みぞれ味)を食べているルシルに質問をした。
「それより、凄い氷だったんだよ。マグマの中なのに凍ってるって……ルシル、そういう魔法はあるか?」
「んー、そうね」
ルシルはスプーンを咥えたまま言った。
「コーマ、あなたにかけてる封印も、溶けない氷の一種なのよ?」
「……あ、そういえば」
俺が思い出すのは一年前の光景。
旧魔王城が全て氷の刃へと変わり、俺に突き刺さる。それにより、俺の中のルシファーの力は封印された。
「そこまで高度なものじゃなくても、そうね。氷魔法の中でも高度……レベル7相当の力があれば、マグマでも溶けない氷を生み出すのは可能だし、全盛期の私なら、溶かすことも削ることもできない、コーマのアイテムでも溶かすことができない氷ができたわよ」
ルシルはスプーンでかき氷を掬って、口に運ぶ。一気に口に入れたせいか、頭がいたくなったのだろう。手のひらで頭をこんこんと叩いている。
「コーマ、熱いお茶入れて」
「わかったよ」
俺はレメリカさんに渡したものと同じ魔法瓶を取り出し、お茶を注いだ。
「コーマ、熱いわよ」
舌を少し出してルシルが文句を言ってくる。そんなルシルが小憎たらしいが、それでも少し可愛いと思ってしまうのは惚れたものの弱みだろう。これ以上弱みを見せたくないので口に出しては言わないが。
「ゆっくり飲め。アイスクリーム症候群だって、ゆっくり食べれば起こらないんだから」
「アイスクリーム症候群?」
「その頭痛の名前だよ」
「そういえばそんな名前があったわね。なんでも名前を付けるのね、日本人って。本屋に行くとトイレに行きたくなったりするのとか」
「あぁ、確かあったな。なんて名前かは忘れたけど」
「青木まりこ現象って言うのよ」
さすがはルシル。知識の偏りが凄い。どうでもいい知識だけは純粋な日本人以上かもしれない。
無い胸を張って、知識をひけらかすルシル。
「それで、コーマ、別の魔王と戦うの?」
「あぁ、スカルコレクターって魔王だが、ふたりは知ってるか?」
「私は知らないわ」
「僕も知らないけど、骨を集める魔王がいるって言うのは聞いたことがあるよ。コーマ、気をつけたほうがいいかもしれない」
マネットがそんなことを言った。
「聞いた話だと、そのスカルコレクターは骨に対し、骨の持ち主と同じ力を与えて操ることができるんだろ? そうなったら、例えばかつて滅んだ魔王の骨なんて持ち出されたら……ってね」
「……そうだな、確かにそれは厄介そうだけど、でも普通の魔王なら兎も角、骨の魔王なら、光という弱点があるから、光属性の武器でも作ればいいんじゃないか? 光の剣とか」
「ゴル〇ノヴァね」
「お前の知識の偏りは本当にいろいろと言いたいが……まぁ、ああいう武器だ」
アニメの武器の名前を平然と言うルシルに対し俺は苦笑し、そして、ルシルが熱いといいながらも飲み干した湯呑みにお茶を注いだ。




