話は飯を食べてから
~前回のあらすじ~
勇者試験初日を突破した。
帰りものんびり上がったので、一番乗りというわけではないが、それでも余裕をもって勇者試験初日を突破した。
地上に戻った時はすでに夕方になっていたが、今も14階層では戦いが続いているだろう。
そう思うと贅沢な気持ちになれた。
「お兄さん、本当に食事をご馳走になっていんですか?」
「従者の飯は勇者が奢るもんだろ?」
どこかの勇者は従者に飯を奢ってもらっていたが。
本来ならすぐにフリーマーケットの寮に戻って休むところだけど、ちょっとだけ厄介な敵もいることだしな。
俺たちの本当に戦いはここからだ、というべきか。
以前、スーとシー、クリスと三人で食事をするために行ったレストランを目指す。周囲に店はなく、湖のほとりにある。
周辺に民家は無く、人通りも少ない。
絶好の襲われポイントといったところか。
「お客様のお出ましか」
「……魔物? 町の中に?」
フーカもその気配に気付いたようだな。
振り返ると、そこにいたのは五人の騎士だった。
……こいつらを見るのは一年振りだな。いや、もちろん本人かどうかはわからないが。
「鬼の娘、よこせ」
「その娘、よこせ」
「渡せ、鬼の娘」
「我が主のために」
「ついてこい、鬼の娘」
五人の鎧を纏った騎士。
「痩せたんじゃないか? ダイエットのしすぎじゃないか?」
俺は苦笑しながらもそれを見た。
昨日と同様スケルトン。ただし、着ている鎧は見覚えがあった。
風の騎士団。去年、勇者試験合格筆頭とまで言われた騎士たちがいた。ゴーリキによって殺され、その遺体はサイルマル王国に搬送されたはずである。
もちろん、同じ鎧を着ているだけという可能性もあるが。
でも、本人だろうなという直感があった。
五人の戦いっぷりは、たった一度、ミノタウロス相手に戦っているところを遠くから見ただけだが、そのフォーメーションは覚えている。
こいつらと同じような形で敵を囲んでいた。
「……フーカは下がってろ。流石にお前だと分が悪い」
「あの、お兄さん、相手の狙いは僕じゃ――」
「質問して答えてくれるような奴なら苦労しないよ」
俺はそう言うと、魔法を唱える。
「明かり!」
光の魔法――本来なら文字通り明かりにしかならないはずだが、不死生物に対してはそうではない。
「ぐあぁぁぁぁっ!」
光の球を喰らったひとりが煙となって消え失せた。そう、不死生物に対しては効果は抜群だ。
まぁ、風の騎士団は強いだろうが、一年間成長を続けた俺の敵じゃないな。
ドラゴ〇ボールで、魔人〇ウを倒したあとにブ〇ー将軍が出て来ても苦戦するわけがないのと同じ理屈だ。
勇者試験初日の俺だったら敵わなかっただろうが。
「せいやぁぁぁぁっ!」
下がっているように言ったはずなのに、フーカが戦っていた。
彼らが使うレイピアがフーカの頬に傷を作るが、それだけだった。骨は殴られて吹き飛ぶ。
「あぁ、もう怪我をして……一気に終わらせるか」
そう言うと、俺はアイテムバッグから神雷の杖を取り出し、
「雷よ! 雷よ! 雷よ!」
と三連族で雷を放つ。
一瞬にして敵は全滅した。
誰がリーダーのジークフリードだったのかわからないまま。
「フーカ大丈夫か?」
頬に傷を作っただけだから大丈夫だろう。そう思ったが、違った。
フーカが突然倒れ、苦しみ出したのだ。
「ぐ……がぁぁぁぁぁ」
手を伸ばし、土を掴む。
【HP248/262 MP12/12 死呪】
死の呪い? ヤバそうな呪いだ。
徐々にフーカの容態が落ち着いてくる。
「剣から呪いをかけた。死にたくなかったら鬼の娘を連れて骨の迷宮に来い。今すぐに。さもないと、鬼の娘の命は蝕まれ、一週間で死ぬ。スカルコレクター様がお待ちだ」
そう言って、フーカが殴った一体の騎士のスケルトンは崩れ落ち、魔石と骨を残す。
そして残された俺は彼女を見た。
「……大丈夫です……だいぶ慣れました……」
「あ、そうか。じゃあ行くか」
「いえ、お兄さんを巻き込むことはできません。やはりスカルコレクターは……くっ、私ひとりで行きます。幸い勇者試験中ですから……」
「いや、俺は飯を食いに行こうって言っただけだよ」
そう言って俺はフーカの体にエリクシールを一滴垂らした。
エリクシールはフーカの頬に落ち、彼女の肌にしみこんでいく。
傷が一瞬のうちに塞がり、
【HP262/262 MP12/12】
危ない状態異常も消え失せた。
「……え?」
「はい、解呪終了。相手から誘ってきたんだ。今夜襲われることはないだろ」
「え? あの……何をしたんですか?」
「レストランに予約してるから、飯を食うんだよ」
「……あの、そういうことでは?」
「知ってるか? ここの湖、かなりブラックバスが繁殖しているらしくて、最近ブラックバス料理が流行ってるんだよ。どんな調理をしてるんだろうな?」
「いえ、あの……僕の話を聞いてますか? あの、なんで僕の呪いは?」
「飯でも食いながら……いや、重い話になりそうだから、飯を食べ終わってから聞いてやるよ」
そもそも、スカルコレクターの名前が出てきた時点で、もう厄介事でしかないだろ。
ユーリから貰った名簿の中に、その魔王の名前があったのだから。




