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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
第三部 世界終焉編 Episode12 骨の迷宮

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お茶のプレゼント

~前回のあらすじ~

猿が階段を守っていた。


 人の死という思わず目をそむけたくなるような光景を見て、可哀そうだとか、ああはなりたくないという感情はあっても、日本の頃あったはずの感情はなくなっていた。

 たとえば、他人の死を見ることによる恐怖だ。

 他人の死を見れば、次は自分の番ではないか? 次に殺されるのは自分ではないかという恐怖心がない。もちろん、自分は絶対に死なないという慢心によるものではない。もちろん、あの礫の直撃を受けても死ぬことはないし、全部避けきれる。


 猿たちは隊列を成し、迫りくる勇者候補、従者候補の中でも近づく者と、そして遠距離攻撃をしようとする奴らを優先的に攻撃をした。戦い慣れている。

 勇者候補、従者候補たちは、予めこの猿たちの情報を聞いていたのだろう。

 金属製のバリケードを組み立てていた。大きな盾を持って猿の中へと突撃する冒険者もいて、そういう奴は猿の本陣近くまで行くことができたのだが、そこまで行くと持っていた槍で攻撃する前に横から礫で攻撃された。


 もちろん、勇者候補、従者候補も負けてはいない。バリケードの中に隠れて、詠唱を唱え、魔法を放つ魔術師もいた。

 何匹もの猿も倒れていく。

 それでも、相手の数も多い。階段の下にも何匹も猿がいるのだろう。ここを突破するのに、一体どれだけの時間がかかるか。


 猿たちは俺に氷の礫を投げてきたが、俺はそれを受け止めた。


 ただの氷ではない、魔力の氷。とても重く、そして速い礫だ。

 だが、力の神薬で力を強化し、反応の神薬により動体視力を上げた俺には捕れない礫じゃない。


 そして、俺はその礫を、俺に対して氷を投げてきた相手に投げ返す。

 俺の投げた礫は、猿の右大腿部に直撃し、足の付け根を破壊した。猿はそのまま倒れ、魔石と大きなキノコに代わる。


「行くぞ、フーカ。もう()()()は大丈夫だ。俺の後ろをついてこい」


 そして、俺はフーカとともに、氷の礫が飛ぶ戦場の中を歩いて行く。


「おい、危ないぞ!」


 誰かが叫んだ。こんなとこに気を使ってくれるとは、良いやつだな。そういう奴にはぜひとも立派な勇者になって欲しい。


「大丈夫だ、ここの猿はかしこいからな。俺たちは手を出したらいけない存在だって気付いてくれたようだ」


 実際、猿たちは全員、俺から目を逸らす。くまなく周囲に気を配る猿たちが、俺たちをわざと無視する。警戒はしているが無視をする。俺と一緒にいるフーカも一緒に。

 そうして、俺たちはあれから氷の礫を受けることなく、15階層への階段にたどり着いた。


「あの、お兄さん。猿たちは倒さなくていいんですか?」

「いいんだよ。あいつらが落とすのって、これだけだし」


 と、俺は猿が落としたマイタケのようなキノコをフーカに見せた。


……………………………………………………

サルノコシカケ(麻痺毒)【素材】 レア:★


猿も思わず座ってしまうという大きなキノコ。

毒キノコなので、処理をしていない状態で食べてはいけない。

…………………………………………………… 

 一応、サルノコシカケにも複数の種類があり、毒のないものもあるが、血毒や猛毒、致死毒といった危ない毒もあるので、鑑定スキル無しの人間は絶対に食べてはいけない。

 ちなみに、これは麻痺毒薬の材料になる。


「お兄さん、他の冒険者と一緒になって猿たちを倒さなくていいんですか?」

「……普段なら手伝ってやるのもいいんだが、これはテストだからな。邪魔したらいけないよ。いいか? フーカ。迷宮の中でどんな魔物と敵対してもいいが、冒険者ギルドに敵対するような行動は避けるんだぞ」


 一度、ゴブカリを巡って冒険者ギルドと勇者たちと敵対した魔王とは思えない台詞を俺は言った。

 あの時は勇者たち、そしてそれを纏めるユーリ相手に苦戦した。それでも結果的には俺が勝ったと言っていいだろう。

 でも、それはただの勝利ではなく、どちらかといえば不戦勝だ。

 あの中にもし彼女がいたら、戦況は大きく変わっただろう。


 十五階層にたどり着いて俺が見たのは、


「ようやく来ましたか。では、こちらにサインをしてください」


 いつも通り冷徹な眼差しを俺に向けるレメリカさんがそこにいた。


「え? あれ? あの受付のお姉さん、私たちが迷宮に入るときはまだ外にいましたよね?」

「先回りしたんだろ――そりゃ猿たちもレメリカさんに礫を投げるなんて無謀なことはしないさ」


 信じられない話だけどな。

 もしかしたらベリアルよりも強いんじゃないだろうか?


「はやくサインをしてください」

「はい! すみません」


 レメリカさんに注意され、俺は名簿にチェックを入れる。

 こういうチェックって、普通はギルド職員がするんじゃないだろうか? と思いながらもペンでチェックをしようとし――インクが凍って使えないことに気付いて、火を起こしてインクを溶かしてからサインした。


「それでは、失礼します。あの、温かいお茶、ポットの中に入っているので飲んでください」


 俺はそう言って、魔法瓶をレメリカさんに渡す。こんなもの渡したら、「あなたからいただいたものを飲むとドブ水をすする犬の気持ちがよくわかりそうです」みたいなことを言われるのではないかと思ったが、ここで何も差し入れもしないともっと怖い気がした。


「それでは、失礼します」

「……ありがとうございます」

「…………!?」

「なにか?」

「いえ、何でもありません」


 レメリカさんに御礼を言われたことに一瞬驚いてしまったが、俺は彼女に頭を下げて引き返していった。階段を上る途中で振り返ると、レメリカさんが、少し微笑んでいた気がしたが、すぐに後ろを向いてしまったためその表情は読み取れなかった。


 ……嫌われているわけ……ではないのかな?

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