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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
第三部 世界終焉編 Episode12 骨の迷宮

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賭けの倍率

~前回のあらすじ~

倒した謎のスケルトンはフーカを狙っているようだ。

 勇者試験初日の朝。

 結局、従業員寮の一階のソファの上で寝たわけだが、ラビスシティーで売り上げ、顧客満足度、従業員の可愛さランキング第一位のフリーマーケットのソファだ。そんじょそこらのベッドより寝心地がいい(と言っても俺が作ったんだけど)。


 そんなわけで、寝起きでコンディション最悪なんてことにはならない。

 むしろ、コンディションが悪いのはフーカのほうかもしれない。


「僕、こんなに寝たの初めて」


 ボクっ子フーカは、朝風呂を浴びて髪を乾かしてから、朝食を食べていた。なんというか、その顔には幸せオーラが満ち溢れている。

 このまま勇者試験なんてどうでもいい、なんて言わなければいいのだが。昨日まではもう少しハングリー精神みたいなものがあったと思うんだが。


「なぁ、フーカ、お前、誰かに狙われているってことはないか?」

「……僕が狙われている? 角狩りの連中には狙われたことはありますけど」

「そうか、変なことを言って悪かったな。店の周りに変な人影を見たからさ。はじめて見る顏だったから、もしかしたらお前かなと思っただけだ。心当たりがないなら別にいい」


 フーカは本当に何も知らないのか、それとも演技の腕がいいのか。

 どっちにしても彼女から情報は得られないだろうな。

 マユの持っている友好の指輪を使って心を読めば、フーカが嘘をついている場合のみ情報収集も可能だが、それは使いたくない。


 俺とフーカは、トースト、サラダ、牛乳の簡単な朝食を終えた。

 現在は朝の七時。既にメイベルたちは開店準備のために出かけているので、俺たちは皿を洗って食器棚にしまった。


「お兄さんお兄さん、会場に行きませんか?」


 フーカはフードを被って角を隠すと、そう言って立ち上がった。


「まだ早いだろ」


 時間まであと三時間もある。会場まではここから歩いて五分もかからない。


「それはそうなのですが、敵情視察は必要かと」

「……敵情視察ねぇ」


 俺と対等に戦える相手がいるとすれば、タラくらいだろう。でも、あいつも敵というわけじゃないし、不測の事態が起きれば共闘することになる。

 でも、まぁ何があるかわからないし、フーカだけ行かせるのも心配だ。


「じゃあ、行くか……」


 俺は手櫛で頭髪を整え、欠伸をしながらフーカとともに寮を出て鍵をかけた。

 ラビスシティーは祭り騒ぎだった。勇者試験を受ける人の一覧はもう出回っているそうで、賭けまで行われているそうだ。

 ちなみに、賭けは全て冒険者ギルドがしきっている。昔は賭けを一切禁止していたのだが、そうすると裏カジノで賭けが行われ、ギャングたちの資金源になったそうだ。なので、現在は冒険者ギルドが一括して仕切ることになったそうだ。

 まるでアメリカの禁酒法とその結末みたいな話だな。


 会場近くの特設掲示板に人だかりができていた。


「お兄さん、倍率出ていますよ……お兄さんの名前も載ってます……」


 俺の位置からはよく見えない。フーカが小さい体を利用して前に行く。 


「ほぉ、ちなみに俺が勇者になれる倍率は何倍だろうな?」

「196倍ですね」


 戻ってきたフーカが告げた。


「……は?」


 196倍? 1.96倍の間違いじゃないか? と思って俺はようやくオッズ一覧が見える位置にまで移動できたので、自分の名前を探す。

 どう見ても小数点は見当たらない。


「大丈夫ですよ。僕がついていますから」

「いや、ちょっと待て……そうだ、タラ。あいつは……あいつはどこにある?」


 おそらく俺の次に勇者になる確率が高いタラを探し、俺は絶句した。

 1.01倍……本命中の本命だった。無名の獣人のはずなのに、ここだけは適正倍率だ。

 いったい、誰だ、このオッズを作ったのは。ふざけてやがる。


 よし、自分に賭けて大金を稼いでやろうかと思ったが、どうやら勇者候補や従者候補は賭けには参加できないらしい。

 八百長対策なのだろう。メイベルに頼んで賭けさせるのは……やめておこう。


「コーマさん! 見つけましたよ! コーマさん!」


 突然、俺を呼ぶ声が。


「振り返ると、金色の髪の見た目は美人剣士、頭脳はおバカの女勇者、白光のクリスティーナがいた」

「なんで急に説明口調なんですか。あと、おバカって言わないでください」


 クリスは怒っていた。怒られる理由は八個くらいしか心当たりがないのだが。


「コーマさん、なんで勝手に勇者試験を受けているんですか」

「むしろ、なんでお前に許可を貰わないといけないんだよ」

「コーマさん、私の従者じゃないですか!」

「そういうセリフは借金を全部返してから言え」


 俺がどなりつけると、クリスは「ふっふっふっ」と笑って言った。

 なんだ、この無駄な自信は。


「コーマさん、私の借金はいくらか御存知ですか?」

「金貨3万枚くらいだっけ?」

「いえ、コーマさんへの借金の大半は業績回復に伴いフレアランドから公的資金の借り入れができるようになったので、コーマさんへの借金はもう金貨1000枚程度なんですよ」

 程度って……それでも10億円の借金か。

「それで、これです!」


 クリスが握っていたのは、賭け札だった。


「コーマさんに金貨6枚賭けました! これが当たればコーマさんへの借金が全部返済できるうえ、お釣りまで入るんですよ!」

「お前、俺に勇者になって欲しいのかなって欲しくないのかどっちなんだよっ!」

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